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脱法ギャンブルのメイキング(後半)

Youtube : https://youtu.be/NuWp0U5GuVw?si=x3sGOXcKoUYC5-sL
Niconico
: https://www.nicovideo.jp/watch/sm42259261

はじめに

初めまして、実在しない鳩と申します。ジャンルによって様々なハンドルネームがあります。
動画を見てくださった方、リピート頂いてる方、ありがとうございます!
「脱法ギャンブル」についてのメイキングを記していきたいと思います。

後半にあたる今回は、制作の過程や映像ソフトについてです。
(前半noteはこちら
https://note.com/hato_nothing/n/n925fc8422c60 )
専門的な分野にあたる内容もありますので、読みたいところだけ読んでもらえればと思います。


1.制作準備

使用ソフト・機器

  • Adobe AfterEffects2023: アニメーション作成・合成

  • DaVinci Resolve : 最終合成・レンダリング(Adobe Premiere Proを持っていないので代用・レンダリングも速い)

  • MediBangPaint : イラスト作成

  • WACOMの板タブ

  • TourBox Elite(左手ツール)

仕様書

今回は自分用の仕様書を作成してから実作業に取り掛かりました。
以前まではアナログのメモ程度しか書いてこなかったのですが、今回はgoogleスプレッドシートで以下のように準備をしました。

元動画のスクショはぼかし入れてます

項目として、パート分け・再生時間・シーン名(数字)・歌詞・元動画のスクショ・キャラ配役・その他補足 に分けて整理しています。

仕様書を作ろうと思ったきっかけは、以前「ナンセンス・ゲーム(ひとしずく×やま△ さん)」のMVをVAVAさんと共同制作した際、VAVAさんが用意なさった「制作wiki」が便利だったので自分でも取り入れてみました。
複数人で作る案件での共有や制作方針を一致させるには勿論のこと、一人での制作でも割と必要だなぁと改めて感じました。

https://youtu.be/zcGZ04ULm_8?si=OB2I8QsLaAG7w51K

以下、仕様書を作るメリット・デメリットです。

メリット

  • 素材の使いまわしを把握しやすい

  • シーンや素材を通し番号で管理できる(ファイル名が短く済む)

  • 作業量を正確に把握できる

  • キャラやアイデアの変更をした際に情報を整理しやすい

  • 実作業を段取りよく進められる

  • 事前に考えておくと楽な事(psdファイルやAEコンポジットの構成等)を最初に済ませておく事で、実作業中に悩む時間が減る。

デメリット

  • 仕様書の制作自体に時間がかかる

  • 使い慣れたツール(エクセルやgoogleドキュメント等)がない場合は負担に感じる(私は事務スキル低いので要領悪かったです)

ただ、個人的にはこの仕様書がなかったら恐らく動画は頓挫してました。
「悩む・選ぶ・決める」という「考える工程」を、実作業中になるべく減らした事でモチベーションを何とか維持できました。
「決められない→手が止まる→作業が捗らない→悩む時間ばかり増える」という負のループがあまり生まれなかったように感じます。
今回はとにかく手を動かさない限り、絶対に終わらない動画だった…

加えて、私は絵を描くことがとにかく大の苦手なので
「1ファイルでも、1枚でも、1レイヤーでも、1本の線でも多く使い回したい!!!!!」という固い意志のもと、仕様書を作成しました。
元々美術の成績がド底辺だった上、絵を上達させようという意欲が欠片もないので「いかに描く枚数を1枚でも多く減らせられるか」という事に心血を注いで作りました。カスです。

とはいえ今回の動画で100枚以上のイラスト(アニメ差分含む)を描いたので、我ながら「よく耐えたな、この拷問に…」という思いです。

なんで手描きMAD作ろうと思ったんですか?

獅子神さんの衣装差分。
ひたすらレイヤーごとにコピペして作成しましたが、「別々に描けるなら正直その方がよっぽど早いだろ」という作業でした。一本でも多く、線を使い回したかった。

スウォッチ

仕様書のついでにスウォッチ(カラーパレット)も作成しましたが、適当すぎたので次回はきちんとしたいと思います。

汚い

ちなみに原作からスポイト吸いはしてません。
色なんにも分から人(わからんちゅ)なので、練習がてら原作カラー絵とにらめっこしながら自分で色を選びました。
色の再現率は低いという説が有力です。


2.アニメーション

ここからは主に映像ソフトAdobe AfterEffetcs(以下AE)の話になります。
かなり初歩的な内容です。
経験の浅い独学勢の知識なので大目に見てください(むしろ何か補足や誤述あればぜひ教えて欲しいです)

psdファイルの構成例

サビのダンス(宇佐美主任)
体のどの部位をアニメーションさせるかによって、パーツ分けの粒度が決まります
サビの宇佐美主任のpsdファイルではこのように分かれています

パーツごとにヌルレイヤーを作成→親子付けし、それぞれのアンカーポイントを変更します。
(psdファイルのレイヤーに直接アニメーションはつけません)
頭部パーツの場合、首の下部を起点にした横振り運動なので、起点にアンカーポイントを移動させます。

↑パーツそれぞれにアンカーポイントを変更し、アニメーションをつけています

物理的に大体合ってるアニメーション

サビのトレーニング(天堂弓彦)
パーツ分けは以下のように。
重り(という名の罪人)はAE上で作ったのでpsdファイルにはありません

重りは上下運動(位置アニメーション)と左右の揺れ(角度のアニメーション)の二種類の組み合わせです。
左右の揺れは、上下運動に対して、時差が起きるのがポイントです。

分かりやすい動画
【After Effects】フォロースルー:追従:アニメーション12の原則(初心者向け)


パペットピン

引き続き上記の天堂弓彦です
パペットピン(以下パぺピン)とは、複数個所にピンを打ち、ピンごとに動かしたり、逆に留めたままにすることで、うにょうにょした変な動きを作ることができる機能です。
紙で作った関節人形をデジタルで動かすようなイメージです。

パぺピンのためにAEを購入しているといっても過言ではない

脱法ギャンブルのキャラアニメの大半がこのパぺピンで作られてます。
注意したいのが、ピンを打ちすぎると動きが複雑になるので、数は3~4箇所がおすすめです。
それ以上打つ必要がある場合は、そもそもパーツのレイヤー分けをより細かくした方がいいかもしれません。

ループアニメーション

ループはAEのエクスプレッションで行っています
(エクスプレッションとは:https://vook.vc/terms/エクスプレッション
このアニメーションは4拍を基準にループしています

ループを設定する際に注意したいことを2つ

  1. アニメーションの最初と最後に必ずキーフレームをうつ

  2. 「一番最初のキーフレーム」と「一番最後のキーフレーム」の値を同じにするとスムーズになる


予備動作の有無

動きの差分を決める際、予備動作や余韻の有無を動かす部位や動き方によって変えます。
今回のように物を引っ張る場合は、止まった状態から急に引くと不自然なので、一度反対方向(上)に動かす予備動作を挟みます。

サビの御手洗君のように首を動かす場合は、人体の動き的には止まった状態から前後に振るのが自然かと思われます。
(躍動感をエグくしたい場合は予備動作を入れます)


音ハメ

上記の予備動作や余韻を含めた尺で、どの音に・どんな動きを・どのタイミングに当てるか意識しながら合成していきます。
キャラアニメ以外もカメラワーク・トランジション(画面の遷移)・エフェクトも音ハメを意識します。

とはいえ今回はトレースなのでひたすら忠実に真似していくだけなのですが、本家MV制作者・りゅうせーさんの音ハメの精度がとても高いので全然再現できませんでした。
りゅうせーさんはご自身でも「執拗なまでの音ハメ」と表現なさる程、音と映像のリンクにかなりこだわっている方です。

りゅうせーさんのメイキング記事が映像系雑誌に掲載されていたので、以下に一部引用します。

『一概には言えないですが、(中略)音ハメが気持ちいい映像というのは、一番目立っている音を積極的に拾っていくこと(後略)』
『映像を作っている側と見ている側は同じ音楽を聴いているので、見ている側が「ほしい!」と思った音を正しく拾って、映像に落とし込むことで気持ちよさが生まれると思います』

VIDEO SALON 2022.12月号「音を可視化して映像を伝えるイラストMVづくりの考え方」P36-37

以上を踏まえると、りゅうせーさんの映像における気持ちよさとは、
単に音のタイミングに動きを合わせるだけには収まらず、「音という見えないもの」を「動き」としていかに視覚的に落とし込むか、という事だと思っています。

今回改めて本家MVを見直した際、

  • 楽曲の中でどの音を拾うか(高音域のメロディか低音域のベース音か)

  • 音楽から感じるリズムに対してどのような緩急のアニメをつけるのか(直線的か曲線的か。キュキュッとした強い緩急か、じんわりとした弱い緩急か。)

  • 音の変化に対して映像はどう対応するか(カメラワークかエフェクトか)

等を感じとりました。

意識してみると今まで気付かなかった事を沢山発見できて面白かったです。
脱法ロックの他に「SNOBBISM」「いらないよ」のMVも好きです


りゅうせーさん制作映像リスト


音と映像は敢えて2フレームずらせ

今回の動画を作り終えた後に見つけた、有益な知見です。

『アニメーション制作の現場では、動画と音の同期に関して「動画は音より2フレーム前にすると仕上がりが良い」という「動画先行の原則」が語られてきた。』

論文 映像と音の同期―「動画先行の原則」の根拠と応用

桑原 圭裕

推測ツイート

『視神経と聴覚で、脳処理から知覚までの時間が違うと言われています。
視神経の方が処理に時間がかかるので、映像を先行入力して、音の知覚と脳内でタイミングが合うようにします。』

検証ツイート

音ハメを意識する際、精度を上げるために音声波形を見て合わせても、大体しっくりこない理由が分かりました。
(ちなみにAEで音声波形を表示するショートカットキーはLを2回連続で押す)

他人の成果物や発見を掲載していくだけのnoteと化している説が有力ですか?

おわりに

他にも記すことがもっと沢山あったはずなのですが、時間が経ちすぎて忘れてしまいました。
忘れっぽい人間なので、振り返りやメイキングを残そうとしていた筈なのに…
何かあれば追記します。

ここまで読んで頂きありがとうございました!
新しい動画もジャンケットバンクで作れたらいいなと思います
おそらく静止画MADを含む動画になる予定です


完成時期がいつになるか、賭けません?