30になって。
先日30歳になった。
111という覚えやすい日付の午前11:27を以て、生まれてから30年が経った。
俺、おめでとう。
さて。
20代最後の1年は、その幕が開き切るよりも早くに、未曾有の恐るべき存在によって、台無しにされてしまった。
今更書くまでもないぐらいに世の中が変わった。変わって久しい。そろそろ1年が経とうとしている。
「2020年は色々ありすぎて、何も無かった。」
仲間達と顔を合わせるたびにそのような話をした年末だった。
「リモート忘年会」と称したはいいものの、さて、何を忘れればいいのか。忘れてどうにかなるものなのか。そんな疑問を頭の片隅にとりあえず追いやって、液晶ディスプレイに向かってグラスを合わせた。
定義
「ライブハウスやバンド音楽シーンが真っ先に槍玉に挙げられた」ことを、今にもなってまだ被害者意識を掲げて引きずるわけではないが、
それよりも事実として、我々アーティストにとって、自分たちのアイデンティティを容赦なく揺さぶられ続けた一年だったのだ、2020年は。
大塚明夫が著書『声優魂』で述べていた。声優になる、とは、職業の選択ではなく、生き方の選択なのだと。
それはアーティストにも全く同じことが言えるのであり、つまり我々はアーティストという職についているのではなく、ただアーティストとして生きている。
「今日からあなたはアーティストです。」と言われてアーティストになった人などいない。それは他者に決められるものではない。所属レーベルの規模、有無、活動ペース、知名度、作品の良し悪し。それらによって判断されるものではない。
あくまで自分が自分を定義するのだ。
その定義が、揺らいだ。がくがくと揺さぶられ、脳震盪を起こし、ばたばたと崩れ落ち地に伏せる「アーティスト」を、幾多も見てきた。
地獄
はっきり言ってしまう。
去年、自分は、
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