はたらくFUND 2019 Impact Report (3)

5.本ファンドにおける社会的インパクト評価及び社会的インパクト・マネジメント

(1)社会的インパクト評価及び社会的インパクト・マネジメントとは
GSG 国内諮問委員会によると、社会的インパクト評価とは、事業の結果として⽣じた社会的・環境的な変化(インパクト)を「定量的・定性的に把握し、事業について価値判断を加えること」を指す。
また、社会的インパクト・マネジメントとは、「社会的インパクト評価を事業運営プロセスに組み込み、得られた情報をもとに事業改善や意思決定を⾏うことでインパクトの向上を⽬指すマネジメント」と定義されている。

(2)本ファンドにおける社会的インパクト評価および社会的インパクト・マネジメントの⽬的
本ファンドは、投資先の事業と本ファンドの活動を通じた社会課題解決及びインパクト投資エコシステム構築への貢献を⽬的として社会的インパクト評価及び社会的インパクト・マネジメントを⾏っている。
・社会課題解決に対して: 投資先に対しては、投資先の事業による社会的インパクトの可視化を⾏い、事業の成⻑及び社会的インパクト創出促進を⽀援することを通じ、社会課題解決に貢献する。また、本ファンドの ToC の達成に対しては、投資先の発掘・投資実⾏・IPO 等の実現を通じ、本ファンドの ToC である「多様な働き⽅・⽣き⽅の創造」の実現を⽬指す。
・インパクト投資エコシステムの構築に対して:
新⽣銀⾏グループ、SIIF 及びみずほ銀⾏の連携によりインパクト投資活動を推進し、当該活動から得られる情報・経験・知識を、新たなインパクト投資の実証モデルとして、LP 投資家及び投資先とシェアすることを通じて、インパクト投資を⽇本全体に普及・促進する。

(3)投資先に対する社会的インパクト・マネジメントのプロセス
本ファンドは、投資先候補の選定から投資期間中のモニタリング、エグジットまでの全投資プロセスを通じて、株主の⽴場から投資先が⽬指す社会的インパクトの創出と拡⼤を⽀援するため、グローバル及び国内で開発が進んでいる評価ツールや⼿法を活⽤し、社会的インパクトの仮説構築と可視化、インパクト視点での事業の検証と経営改善に取り組む投資先をサポートしていく。

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本ファンドが活⽤している主要な社会的インパクト評価ツール・⼿法としては、以下2点があげられる。

ロジックモデル
社会的インパクト評価イニシアチブ(Social Impact Management Initiative。以下、SIMI(注3))によると、ロジックモデルとは「(プログラムのための)利⽤可能な資源、計画している活動、達成した いと期待する変化や成果の関わりについての考えを体系的に図式化するもの」とされている。本ファンドでは、投資先が⽬指すインパクトと投資先の事業活動の因果関係を体系的に把握し、インパクトの観点から意思決定とモニタリングおよび経営⽀援を⾏うため、ロジックモデルを活⽤している。

「インパクトの5ディメンション」フレームワーク
事業のインパクトを多⾯的に把握するため、Impact Management Project(以下、IMP(注4))が策定している事業評価の枠組み。具体的には、インパクトの「5つの次元」として、投資先の事業が①どのようなインパクトを(What)、②どの受益者に対して(Who)、③どの程度の深さ・広さ・時間的⻑さ(How Much)でもたらすか、④投資先はそのインパクトにどの程度貢献するか(Contribution)、⑤想定するインパクトからどう乖離するリスクがあるか(Risk)を定量的・定性的に把握する。本ファンドでは、投資先事業のインパクトを仮説検証するため、投資先候補の絞り込みからエグジットにいたるまでの全投資プロセスで利⽤している。

【5ディメンションフレームワークの概念図】

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(4)本ファンドの ToC 実現のための社会的インパクト・マネジメントのプロセス
本ファンドは、ファンド活動を通じた課題解決への貢献について、以下のステップによりモニタリングを⾏う。
・ToC の策定: ファンド ToC を、SDGs への貢献の視点も加味し策定・更新
・社会課題の構造分析:ファンドが取り組む社会課題の構造を分析し、取り組むべき領域を抽出
・投資実⾏: 社会課題の本質的解決に資する投資先を選定し、経営⽀援とモニタリングを実⾏

(5)インパクト投資エコシステムの構築
本ファンドは、投資先・投資家・投資先事業を推進する上での取引先・専⾨家や⾏政機関など多様なステークホルダーに積極的にアプローチし、対話と情報提供を⾏うことにより、⽇本におけるインパクト投資エコシステム構築に貢献することを⽬指している。

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6.本ファンドにおける社会的インパクト評価・マネジメントの進捗

(1)本ファンドの ToC の実現に向けた進捗(詳細は 7. 投資先紹介を参照)
本年度において本ファンドは 2 社に出資し、社会的インパクト・マネジメント等の⾮財務⽀援も⾏った。
ライフイズテック社は、ICT スキル及び⾮認知能⼒を有する次世代⼈材育成を通じ、IT 技術を有する⼈材の養成にとどまらず「多様な働き⽅を可能にする⽂化の醸成、仕組みの充実化」の創出に貢献し得る。
ユニファ社は、保育⼠と保育施設の負担を軽減し、保育の質を⾼める ICT ソリューションの提供を通じ、働く親の「⼦育ての負担軽減」と「質の⾼い⼦育てサービスへのアクセス向上」の創出に貢献し得る。

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(2)インパクト投資のエコシステム構築への貢献に向けた進捗
2019 年度において、本ファンドは、⽇本におけるインパクト投資のエコシステム構築への貢献に向けて、以下の活動を⾏った。

・国内外における社会的インパクト評価・マネジメントの共通原則・ツール作りへの参画:
社会的インパクトの評価、マネジメント、報告に関する国際原則の策定を進める「Impact ManagementProject(IMP)」の Advisory Group に、本ファンドの GP アドバイザーである、みずほ銀⾏が⽇本の⾦融機関として初めて加盟した。本ファンドの共同 GP である SIIF は、Strategic Partner として加盟し、国際原則策定プロセスへの参画及び⽇本における IMP の普及促進の役割を担う。
また、2019 年度に政府が実施する「社会性認証制度に係る実証事業」に投資先 2 社が採択され、共同 GPおよび GP アドバイザーの計 3 社が、有識者や事務局として参画した。外部の専⾨家と共に、社会的インパクト評価モデルを精緻化し、データの測定・評価を進めている。

・「ソーシャル IPO(仮称)」のモデル作り:
投資先の主幹事証券会社と協業し、上場の際に対象会社の社会的インパクトに関する⾮財務情報を開⽰する⽅法等の検討を進めている。

・情報発信:
メディア掲載:2019 年度に本ファンドが取り上げられたメディア記事は 22 件(本ファンド調べ)であり、代表的な記事は以下の通り。

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イベントの主催:2019 年度、共同 GP である新⽣銀⾏グループと SIIF 及び GP アドバイザーであるみずほ銀⾏は、インパクト投資に関するイベントを 3 回主催し、本ファンドについても紹介した。
- 2019 年 6 ⽉ 7 ⽇ SIIF 主催「社会的インパクト時代の資本市場のあり⽅」セミナー
- 2019 年 9 ⽉ 6 ⽇ GSG 国内諮問委員会、SIIF 主催「インパクト投資フォーラム」
- 2019 年 11 ⽉ 30 ⽇ ⽇本財団主催「ソーシャルイノベーションフォーラム」における SIIF による特別企画「ファイナンス×イノベーション」セッション

登壇:共同 GP である新⽣銀⾏グループと SIIF 及び GP アドバイザーであるみずほ銀⾏の担当者は、外部の主催者より招聘を受け、17 回登壇した。

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・受賞等: 新⽣企業投資が「東京都⾦融賞 2019-ESG 投資部⾨」を受賞

注3:SIMI は、⽇本国内における社会的インパクト・マネジメントの普及・啓発を⽬指す取り組み。ロジックモデル作成に関しても具体的なノウハウを集約し⼀般公開している。
注4:IMP は、社会的インパクトの評価、マネジメント、報告に関する国際原則の策定を進める取り組み。世界 2000
以上の団体が参加しグローバルにおける標準化を進めている。

はたらくFUND 2019 インパクトレポート(4)はこちら

7. 投資先の紹介


(非公開)

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