はたらくFUND 2022 Impact Report (4)

7.本ファンドにおけるインパクト測定・マネジメント(IMM)の実践

(1)本ファンドのToCの実現に向けた進捗
本年度は、本ファンドのToC実現に向け、新たに3社への投資を実行した。また投資後においては、既存投資先を含む6社に対し各社のIMMをサポートする非財務的な支援を行った。
本ファンドの新規投資先となったカイテク、助太刀、Ubieを含む全投資先は、本ファンドのToCにおいて下図の通りに位置付けられる。
このうちカイテクは人材不足に悩む介護施設の「介護業務」と有資格介護者の「すきま時間」を Web完結でマッチングする、プラットフォーム「カイテク」の開発・運営に取り組んでいる。この活動は、介護施設における働く環境の向上や、有資格介護者の自分らしい働き方の実現に資するだけでなく、長期的には、家族などの介護をしながら働く人がより質の高い介護サービスを安定して利用できるようになることから、本ファンドが目指す「多様な働き方・生き方の創造」の実現に貢献することが期待される。
続いて投資を行った助太刀は、建設技能労働者の人材不足を「事業者間マッチング」と「採用」から解消すべく、建設業界に特化したプラットフォーム事業を提供している。 こうした事業は、職人の自分らしい働き方の実現と、多様な働き方を可能にする文化の醸成、仕組みの充実化につながっており、本ファンドToCの実現に資する可能性が高いと判断した。
最後に、3社目となったUbieは、生活者・患者と医療機関の双方がユーザーとなる症状検索や問診のプラットフォームを運営しながら、「患者と医療者との間のメディカル・ディスタンス」という、 生活者・患者の健康に広く深く関わる課題に取り組んでいる。この事業は、働く世代の心身をより健やかに保つことを促進すると同時に、医療者自身の働き方改革にもつながることが考えられる。

(2)各投資先のIMM進捗報告のフレームワーク
本ファンドでは、以下の様式を用いて、投資先ごとに、IMPの「インパクト5ディメンション」フレームワークを活用し整理した内容をLP投資家向けレポートに掲載している。本一般公開版レポートにおいては、各社情報につき公開可能な範囲にてP.23以降の「(3)各投資先のIMMの進捗報告」の章に記載した。
様式)

(3)各投資先のIMM進捗報告

8.新規投資先からの声

本年度の新規出資先より、本ファンドからの出資を受けた感想を頂いた。

株式会社助太刀 経営陣

■2022年2月増資後に、IMMとして、何を行いましたか?
ご出資頂いた後すぐにESG推進体制を構築し、4月から6月までの3か月間、IMMに関する議論をご一緒いただきました。WEBサイトでのサステナビリティページの公開を目標に、SBI新生銀行サステナビリティ評価室の皆さんにもアドバイスを頂きながら、課題分析、マテリアリティの特定を行うことができました。

■IMMを具体的に実施してみて、どのような感想をもちましたか?
今回のプロセスを通じて、自分たち自身が取り組んでいる大きな社会課題を見つめ直し、その解決方法とESG・サステナビリティ経営の推進を結びつけて言語化することの難しさを改めて感じました。一方で、協力を得ながら思考を整理することで、弊社として目指すべき方向性をクリアにすることができたと考えています。
我々が価値提供できるのは、建設会社と職人さんという2つのステークホルダーであり、それぞれのポジティブインパクトを分けて考えることが重要であるということを認識できたのは、投資検討時から一緒にディスカッションをさせて頂き、事業を深く理解して頂いていたからこそだと思います。
 
■インパクトの可視化や計測、開示、IMMの実践を通じて、よかったと思うこと(メリット)はどのようなことでしょうか?
弊社の事業の社会的価値を言語化できるようになった点です。予定通り9月にサステナビリティページを公開でき、様々なメディアにも取り上げて頂けたことで、社内外に対して当社が目指している「社会的価値の創出」を発信することができました。建設業界向けにサービスを展開するスタートアップが、こうした取り組みを行うこと自体が珍しかったということもあり、業界新聞などのメディアに取り上げていただけたことは一つの大きな収穫でした。
今後は社会全体やステークホルダーに対して継続的に取り組みの進捗を伝える必要性があると思っています。そのためには「インパクトの定量化・可視化」が次のマイルストーンだと思っており、準備を進めています。

カイテク株式会社 代表取締役 武藤高史様

はたらくFUNDからの投資前〜投資実行後において、経営において良かった点は「①ロジックモデル:ロジックモデル作成による社会的なインパクトの深堀と整理」「②同じ志:はたらくFUNDのメンバーは強い社会課題解決マインドを持っている方が多いので、経営の意思決定がしやすい」という二点がございます。
 
①点目について、他の投資家様は財務的なインパクトを中心にお話をするのですが、はたらくFUNDは、それに加え、投資検討のタイミングから、ロジックモデルなどを活用しながら、当社のサービスが創出している社会的インパクトの深堀り・整理にお時間を使っていただけました。第三者からの目線も入れながら、社会的インパクトを一緒に考えていただけるのは、経営者自身の新しい発見につながり、また、それを対外的にどうやって伝えていけばいいのかを作っていける点は、事業成長に大きなメリットがございます。具体的な効果としては、経営リソースである「ヒト・モノ・カネ」において、効果があると思います。例えば、ヒトに関しては、対外に発信していくことでロジックモデルを見て、ハイレイヤーの採用候補者から当社へ問い合わせを頂いたりしました。今後、発信を強化していくことで、更なる効果を上げていけると考えています。
 
また、②点目は、上記のロジックモデルをご一緒に構築をすることで、投資後も投資家と起業家と同じ方向(北極星)を向いて、事業成長をさせていけると感じております。財務的リターンだけを考えた意思決定と、財務的リターンと社会的リターンを踏まえた意思決定では、意思決定の内容が変わってくると思っています。我々のようなソーシャルスタートアップですと、社会課題解決のマインドが非常に大事になります。マインドを含めて日々の活動の積み重ねが事業アウトプットとなり、それが滲み出て顧客には伝わるものだと思っております。その中で、インパクト投資家は同じ方向を向いているため、経営の意思決定がしやすいですし、心強いです。
投資前〜投資実行後もスタンスが変わらないはたらくFUNDに株主になっていただき、心より良かったと思っております。

Ubie 株式会社 共同代表取締役 医師 阿部吉倫様

弊社は生活者・患者、医療機関、製薬企業向けのサービスを展開し、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」というミッション達成に向け邁進しております。
はたらくFUND様からの投資検討プロセスを通じて、あらためて弊社の社会性を認識することが出来、感謝しております。
また投資後様々な側面でサポート頂き、大変心強く思っております。足許では弊社のIR・広報チームとも連携頂き、サステナビリティ経営の可視化を含むIR戦略、ESG対応評価もご支援頂いております。
弊社のミッション、さらにはビジョンを達成すべく引き続き事業の成長に取り組んで参りますが、是非はたらくFUND様と、社会インパクトの整理をリファインして行ければと思っております。


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