はたらくFUND 2020 Impact Report (4)

6. 本ファンドにおけるインパクト・メジャメント&マネジメント(IMM)の進捗

(1)本ファンドのToCの実現に向けた進捗

本年度、本ファンドは1社に投資実行、1社に本格的デュー・ディリジェンスの最終段階までを実施する中で、投資先・投資候補先に対しIMMをサポートする非財務支援を行った。
新規投資先となったエール社は、働く人の多くが直面する働きがいに関する課題と企業価値向上の両立を目指す独自性の高い事業を通じ、企業の人的資本マネジメントに対する中長期的な変革をもたらす可能性がある。
このため、本ファンドが目指す「多様な働き方・生き方の創造」に対し、「個人の自分らしい働き方の実現」や「多様な働き方を醸成する分野や仕組みの醸成」に貢献することが期待される。

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(2)インパクト投資のエコシステム構築への貢献に向けた進捗
本年度、本ファンドは、日本におけるインパクト投資のエコシステム構築への貢献に向け、以下の活動を行った。

① 金融庁とGSG国内諮問委員会共催の「インパクト投資に関する勉強会」への参画
2020年6月より、金融市場関係者や行政関係者などによるインパクト投資に対する理解を深め、日本の金融業界の持続的な発展に資する推進の在り方について議論することを目的に、2か月に1回程度で開催。共同GPであるSIIFが事務局を務め、ジェネラルパートナーが委員として参画している。未上場株式へのインパクト投資をテーマにした第4回勉強会では、投資先2社と共に登壇した。

② GSG国内諮問委員会への参画
GSG国内諮問委員会は、The Global Steering Group for Impact Investment (GSG)の日本における国内諮問委員会として、調査研究・普及啓発・ネットワーキング活動を通じて、インパクト投資市場やエコシステムの拡大を目指す組織である。本ファンドからはこれまでも賛同メンバーとして参画していたが、2020年度よりジェネラルパートナーが委員として参画している。

③ GSG国内諮問委員会IMMワーキンググループ(以下「GSG-IMM WG」)への参画
GSG-IMM WGでは、2020年度の活動として、国内のインパクト投資実務者を集めて、IMMに関するコンセンサス形成、並びにグローバルに展開されているIMMの原則・指針・フレームワークづくりに国内インパクト投資家の意見をインプットすることを目的に、全5回にわたる会合を実施した。このGSG-IMM WGの活動の成果物として、国内インパクト投資家がインパクト投資・IMMを実践するに際してのガイドライン・ガイドブックおよびグローバルへのディスカッションペーパーの作成が進められている。
本ファンドは、日本を代表するインパクト投資家として、その経験や知見、およびネットワークを活かし、GSGIMM WGの活動に参画、インパクト投資家のエコシステム構築に貢献した。

④ 内閣府「社会性評価・認証制度に係る調査・実証事業」への投資先との参画
また、2019年度から内閣府が実施する「社会性評価・認証制度に係る調査・実証事業」に投資先2社が採択され、共同GPおよびGPアドバイザーの計3社が、有識者や事務局として参画している。外部の専門家と共に、インパクト測定モデルを精緻化し、データの収集・評価を進めている。

⑤ 「インパクトIPO(仮称)」の検討開始
本ファンドでは、社会的課題解決に向けたインパクト創出を目指す投資先企業がIPOすることについて、そのあるべき理想の姿を下記のように言語化し、投資先、証券会社等との意見交換や各種セミナー等での啓発を進め、より具体的な内容についての検討を開始した。

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<メディア掲載>
2021年1月までに本ファンドが取り上げられたメディア記事は12件(本ファンド調べ)であり、代表的な記事は以下の通り。

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<イベントの主催>
2020年度、共同GPである新生銀行グループとSIIF及びGPアドバイザーであるみずほ銀行は、インパクト投資に関するイベントを2回主催し、本ファンドについても紹介した。 

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<登壇>
共同GPである新生銀行グループとSIIF及びGPアドバイザーであるみずほ銀行の担当者は、外部の主催者より招聘を受け、28回登壇した。

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7. 投資先の紹介

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8. 新規投資先からの声

本年度の新規出資先であるエール株式会社の代表取締役櫻井将様および取締役篠田真貴子様から、当ファンドからの出資を受けた感想を頂いた。

エール株式会社 代表取締役 櫻井将様より 

今回はたらくFUNDからの出資を受けるにあたり、エールが生み出す社会的なリターンについて多くの議論をさせていただきました。そもそも社会的に良い影響のない事業拡大や経済的拡大は意味がないと思っていますので、当初から議論の内容に違和感は全くありませんでした。

特に、足元の事業とビジョンを繋ぐところは投資検討中からサポートいただきました。事業と初期的なアウトカム、長期的なビジョンについては従前から考えてきましたが、これらをつなぐ中期的なアウトカムの言語化についてできていなかった部分を助けていただきました。自分たちが何者で、どのように社会の役に立つのかということの解像度が上がっていく過程は、非常にワクワクする時間でした。

経営をしていると、売上や利益といった目先の数字を伸ばすことに目が向きがちです。 だからこそ、株主として一定の影響力のあるはたらくFUNDが、「経済性だけではなく、社会性と両立できる方法で事業を伸ばす」という視点から、必要な問いを投げかけてくださることには大変価値があると思っています。「あぁ、そうだそうだ。エールが本当にやりたいことはこういうことだったよな。」と常に原点に立ち返らせてくださるようなサポートをいただけると大変嬉しく思っています。

エール株式会社 取締役 篠田真貴子様より

最初にはたらくFUNDの皆さんから社会的インパクトに関する評価の進め方について伺ったときは、正直なところ少し大変そうだなと思いました。しかし、実際に取り組んでみると、当社が生み出したい社会的な価値や意義について議論できることにある種の解放感がありました。他の投資家の方とは対話を深めることが難しかった論点であり、有難い機会だと感じました。

会社というものは社会的な存在です。インパクト投資を受けているかどうかに関わらず、社会にとって善き存在でなければいつかは持続できなくなると考えています。しかし、私たちのようなベンチャー企業だと、その規模の小ささや資金的な余裕の無さから、自分たち自身が甘えてしまい、社会性を疎かにしてしまいがちです。

一方で、事業や組織にはDNAのようなものがあり、途中から社会的使命をインストールしていくのは非常に難しいというのが私の考えです。会社が長期的に発展することを考えたとき、成長の階段を上り始める段階から社会性というものを、曖昧な概念ではなく、実際に計測し検証できるKPIとして重視するという意思を持って投資をしていただけることは、会社の長期的な発展に大事だと考えます。社会的に意義のある会社として存在し続けられるように、自分たちを鍛えてもらえると考えています。

これからエールのサービスが広がり、個人、企業、社会にとって大事な存在になっていった未来には、例えばマネジメントのあり方や組織と人のあり方が大きく変わり、個性を活かすことこそがマネジメントである、という大きな概念変化が起きると思います。そういった中長期的な変化の一端を私たちが担いたいですし、はたらくFUNDにもその変化を可視化する取り組みをご一緒頂けると有難いです。

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