はたらくFUND 2020 Impact Report (3)

5.本ファンドにおけるインパクト・メジャメント&マネジメント(IMM)

(1)インパクト・メジャメント&マネジメント(IMM)とは
GIIN (Global Impact Investing Network)による定義は、「ビジネス上の行動や投資が人や地球に与えるプラスとマイナスの両方の影響を特定し検討すること、そして、マイナスの影響を緩和し、プラスの影響を最大化する方法を、自身の目的に照らし合わせながら考え出すプロセス」(仮訳)である。
昨年度のインパクトレポートでは「社会的インパクト評価」及び「社会的インパクト・マネジメント」という用語を使っていた。GSG国内諮問委員会によると、社会的インパクト評価(注10)とは、事業の結果として生じた社会的・環境的な変化(インパクト)を「定量的・定性的に把握し、事業について価値判断を加えること」を指す。また、社会的インパクト・マネジメントとは、「社会的インパクト評価を事業運営プロセスに組み込み、得られた情
報をもとに事業改善や意思決定を行うことでインパクトの向上を目指すマネジメント」と定義されている。
近年、社会的インパクト評価を実施するだけでなく、その評価結果を事業や投資の意思決定に活用し改善するための継続的な実践の重要性が強調される中、「IMM」という用語がインパクト投資家間で定着してきており、本インパクトレポートでも「IMM」の用語を用いることとする(注11)。

(2)本ファンドにおけるインパクト・メジャメント&マネジメント(IMM)の目的
本ファンドは、投資先の事業と本ファンドの活動を通じた社会課題解決及びインパクト投資エコシステム構築への貢献を目的として、IMMを実施している。

・社会課題解決に対して: 投資先に対しては、投資先の事業による社会的インパクトの可視化を行い、事業の成長及び社会的インパクト創出促進を支援することを通じ、社会課題解決に貢献する。また、本ファンドのToCの達成に対しては、投資先の発掘・投資実行・IPO等の実現を通じ、本ファンドのToCである「多様な働き方・生き方の創造」の実現を目指す。

・インパクト投資エコシステムの構築に対して:
新生銀行グループ、SIIF及びみずほ銀行の連携によりインパクト投資活動を推進し、当該活動から得られる情報・経験・知識を、新たなインパクト投資の実証モデルとして、LP投資家及び投資先とシェアすることを通じて、インパクト投資を日本全体に普及・促進する。

(3)投資先に対するインパクト・メジャメント&マネジメント(IMM)のプロセス
本ファンドは、ファンド設立前のファンド設計において策定したToCに基づき、投資先候補の選定から投資期間中のモニタリング、エグジットまでの全投資プロセスを通じて、株主の立場から投資先が目指す社会的インパクトの創出と拡大を支援するため、グローバル及び国内で開発が進んでいる評価ツールや手法を活用し、社会的インパクトの仮説構築と可視化、インパクト視点での事業の検証と経営改善に取り組む投資先をサポートしていく。

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本ファンドが活用している主要なIMMツール・手法としては、以下2点があげられる。

① ロジックモデル
社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(Social Impact Management Initiative。以下、SIMI(注12))によると、ロジックモデルとは「(プログラムのための)利用可能な資源、計画している活動、達成した いと期待する変化や成果の関わりについての考えを体系的に図式化するもの」とされている。本ファンドでは、投資先が目指すインパクトと投資先の事業活動の因果関係を体系的に把握し、インパクトの観点から意思決定とモニタリングおよび経営支援を行うため、ロジックモデルを活用している。

② 「インパクトの5ディメンション」フレームワーク
事業のインパクトを多面的に把握するため、Imapact Management Project(以下、IMP(注13))が策定している事業評価の枠組み。具体的には、インパクトの「5つの次元」として、投資先の事業が①どのようなインパクトを(What)、②どの受益者に対して(Who)、③どの程度の深さ・広さ・時間的長さ(How Much)でもたらすか、④投資先はそのインパクトにどの程度貢献するか(Contribution)、⑤想定するインパクトからどう乖離するリスクがあるか(Risk)を定量的・定性的に把握する。
本ファンドでは、投資先事業のインパクトを仮説検証するため、投資先候補の絞り込みからエグジットにいたるまでの全投資プロセスで利用している。

【5ディメンションフレームワークの概念図】

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(4)本ファンドのToC実現のための社会的インパクト・マネジメントのプロセス
本ファンドは、ファンド活動を通じた課題解決への貢献について、以下のステップによりモニタリングを行う。
ToCの策定: ファンドToCを、SDGsへの貢献の視点も加味し策定・更新
社会課題の構造分析: ファンドが取り組む社会課題の構造を分析し、取り組むべき領域を抽出
投資実行: 社会課題の本質的解決に資する投資先を選定し、経営支援とモニタリングを実行

(5)インパクト投資エコシステムの構築

本ファンドは、投資先・投資家・投資先事業を推進する上での取引先・専門家や行政機関など多様なステークホルダーに積極的にアプローチし、対話と情報提供を行うことにより、日本におけるインパクト投資エコシステム構築に貢献することを目指している。

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注10:「インパクト測定」が「社会的インパクト評価」と呼ばれることもある。
注11:GSG国内諮問委員会 IMMワーキンググループ 第1回会合資料
注12:SIMIは、日本国内における社会的インパクト・マネジメントの普及・啓発を目指す取り組み。ロジックモデル作成に関しても具体的なノウハウを集約し一般公開している。
注13:IMPは、社会的インパクトの評価、マネジメント、報告に関する国際原則の策定を進める取り組み。世界2000以上の団体が参加しグローバルにおける標準化を進めている。

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