見出し画像

波田野州平 短編集 『不在』 三部作

ー 販売は終了いたしました ー

2020年のお盆からお彼岸明けまで(8月13日から9月25日23:59まで)波田野州平の短編集、『不在』三部作をVimeoオンデマンドにて販売します(購入後72時間視聴可能)。こちらからご購入いただけます。https://vimeo.com/ondemand/fuzai

波田野州平さんの作品は、ドキュメンタリーに虚構の語りを重層させてゆく独自のシネ・エッセイを形成している。嘘のようなことがほんとうになる時代にあって、それは「事実」にきわどく接近するための「迂回の作業」であると思っています。(萩野亮 / 映画批評・本屋ロカンタン店主)

作品概要
 『旅のあとの記録』
(2018/日本/16分/フルHD/カラー/16:9/ステレオ)
古道具屋にあった撮影者不明の大量のポジフィルムから、匿名の彼らがたどった旅程を想像し、そこから「写真」について「記録」について思い巡らしたシネ・エッセイ。

画像1

古道具屋で買った写真群が語り手の新たな文脈の下で新たな物語を紡ぎ始める。これも虚構が現実に新たな血肉を与えるという監督の映画手法の一つ。写真はまるでゼーバルトの小説『アウステルリッツ』の中のそれのように不思議な生々しさで主人公の存在を伝えてくる。(寺本郁夫 / 映画批評家)

『影の由来』(英語字幕付)
(2017/日本/27分/フルHD/カラー/16:9/ステレオ)
東京ドキュメンタリー映画祭 2018 短編部門グランプリ
散歩の途中で道を訪ねた老人が突然語り始めた特攻隊時代の思い出。その体験を基に、手記だけを残して戦死した夫に、届かない手紙を書く妻という物語を創作。遺棄された写真や手紙を使い、ある町の記憶を描いた映画詩。

画像2

私は勝手に波田野さんの代表作と思っている。波田野作品の特徴である「水」の表現が全編に満ちており、そのイメージの揺らぎ、実体の掴めなさが、フィクションとノンフィクションの境界を撹乱する物語と響き合う。「何かを見た」という感触だけが残る不思議な時間。(佐々木友輔 / 映像作家)

『内部』
(2014-2019/日本/21分/HD/カラー/16:9/ステレオ)
太平洋戦争末期、長野県松代に建設予定だった日本軍最高統帥機関、大本営。今も残るその地下壕を訪れて現地調査を行い、住民への聞き取りをもとに少女の恋と親子の別離の物語を創作し、2014年まつしろ現代美術フェスティバルにて『群声地』として発表。そこに追加撮影と再編集をし、『内部』と改題して2019年に新作として発表。

画像3

松代大本営という大戦時の国家的狂気の遺構が、それと関わった架空の人物の愛と死の歴史とともに描かれる。テクストの語り(騙り)を鮮烈な風景の映像が語り(騙り)直す。虚構と現実が互いを表現し合うような、目眩く映画体験。声と音の響き合いも肌身を打つような力で迫る。(寺本郁夫 / 映画批評家)

カメラによって凝視された事物のディティールと、奇妙なまでに抽象化された顔の無い者たちの「語り」 、その両極の間に生起して我々の頭に植えつけられる記憶は、リアルであることもフェイクであることも自ら否定しようとする。nowhereな風景を見るための映画。(佐々木友輔 / 映像作家)


『不在』三部作について

たいそうなタイトルをつけたものの、特別に『不在』を意識して映画を作ってきたわけではなかった。振り返ってみると、いなくなった人を追いかけていたり、遺失物から持ち主の面影を探してみたりと、映画の中心に常に『不在』が在った、というのが本当のところだ(不在が在る、というのもおかしいが、言い得て妙にも思う)。

フィールドワークを重ね、その事実から、あったかもしれない過去の時間を想像/創造する。今では決して見ることのできない失われた時間を、なんとか現前させようとあの手この手を打つ。そうこうしていくうちに映画はいびつな形に成っていく。いびつだが、成るように成った自然な形だと自分では思っている。

やはり『不在』というのは後から出てきた言葉で、制作の渦中はあるものを探し求めて彷徨っている。過ぎ去った時間へとたどり着く入り口がどこかにありはしないか、いなくなった人たちのもとへとたどり着く裂け目はありはしないかと。そうやって、死者の時間へと全身を没入させたいと願い、歩きまわっている。

死者の時間とは、過去も今も混濁した無時間のことで、その裂け目の向こうで時間は渦巻き奔流し、刹那と永劫が分かちがたく在り、自己と他者の境界が溶解し、そんな混沌の大海原にぷかぷか身を浮かべている。と思いきや、果たしてその中心はまったき空洞で、何のことはない、失われた時間を現前させようと試みたものの、それはやはり不可能で、自分はただ『不在』のまわりを漂っていただけだったのかと、はたと夢から冷めたように気づく。そして、その熱い残夢のようなものが映画という形で残る。
とでも言うような奇妙な感触を持って、2014年から2019年までに制作した短編三作品、『旅のあとの記録』『影の由来』『内部』を収録しています。

お盆(終戦記念日も)とお彼岸という死者を想う特別な期間に、記憶の中でまどろんでいるような、そんなドリームタイムに身を浸してみてくだされば幸いです。

波田野州平(はたのしゅうへい)
1980年鳥取生まれ、東京在住。主な作品に『TRAIL』(2012)『断層紀』(2013-2018)『影の由来』(2017)がある。
HP : shuheihatano.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?