旗竿に関する益体もない話②(カーボン)

新年のご挨拶と前置き(というか言い訳)

明けましておめでとうございます。遅筆ですみません。旗やのオッサンです。
昨年筆が止まってしまった旗竿に関する話をさせていだだきます。

今回はカーボン(炭素繊維)竿のお話です。
といっても私、こちらをメインで使っていないため個人の主観、間違った情報が入るかもしれませんので、その際は実際に使用なさっているみなさんの補足をお願いします(他力本願)

カーボン竿は専用のものもあるようですが少なくとも私はみたことがありません。
見た限りでは「釣竿」や「たも網」の竿を転用し、縦2m程度の小型の化学繊維(テトロンポンジ製)の大旗とセットで用いられることが多いようです。

長所・軽量で取り回しが良い、反応が非常に敏感である

カーボン竿の長所は「軽さ」と「反応の敏感さ」「取り回しの良さ」です。
種類によりますが、私がメインで使用している竿でいうと、グラスファイバー竿(6m)の重量が約2kg前後であるのに対して、カーボン竿(5m)は約0.7kg程度しかありません。
直径もグラスファイバー竿が50㎜前後あるのに対し、カーボン竿は30~35mmと細くて握りやすく、しっかりと手でグリップすることができます。
また、竿が軽く細いため旗を初めて持つ初心者でも非常に扱いやすい竿です実際、私の所有する旗(テトロンポンジ製・縦2m×横3m)に使用しているカーボン竿は下は未就学児童から女性、成人男性、どなたでも問題なく持って振り回すことができます。縮めたときのサイズも非常にコンパクト(5mでも40~50cm)に収まるため収納や運搬時の取り回しが非常にいいのも助かります。
また、竿に加えた力や旗士の操作に敏感に反応するため、急激な方向転換や激しく振り回すなどのスピーディーでアクロバティックなパフォーマンスに向いています。
このほか、釣竿やたも網竿からの転用品であれば釣具屋さんやホームセンター等で手に入りやすく、種類が豊富で価格も手ごろであることも有利な点といえるかもしれません。

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カーボン竿を収納した状態(人の身長かそれ以上の長さになるグラスファイバーに比べるとかなりコンパクトです)

短所・場合によっては折れやすい

炭素繊維自体はレーシングカーのシャシーや航空機の機体に用いられることもある非常に強靭な素材です。しかし、これを旗竿に用いると時に「とても折れやすい」という状況がまま発生します(この矛盾を上手に説明できず長く筆が止まってました)複数の旗士さんにお話を伺い、ご意見をいただきましたが、これはカーボンの含有量と竿の使い方の特徴に原因があるようです。
カーボン竿とはいっても100%純粋なカーボンで作られた竿というのはありません。特に釣り竿等からの転用である場合、価格や用途によってカーボンの含有量がかわります(私の竿はカーボン含有量80%)
カーボンの含有量が多くなるほど竿は硬くなりますが柔軟性を失います。          逆に含有量が少なくなるほど柔軟性がでますが硬さを失います。そしてカーボン竿は激しく振り回す使用法方が多く、常に不規則な方向から強い力をうけます。その力は竿の一点に集中しやすく、負担が竿自体の硬さや柔軟性が許容範囲を越えてしまった場合、竿が耐え切れず折れることにつながる・・ということのようです。

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カーボン竿での演舞の様子。強い力が旗士の持ち手付近にかかって竿が大きくしなっています(これが限界を超えると竿が折れる)

したがってカーボン竿を用いる場合、竿自体のカーボンの含有量や特徴、力のかかり具合(屋外であれば風の有無等)に常に気を配る必要があります。
カーボン竿を使う旗士さんというのは往々にして力強くでアクロバティックの竿の挙動。旗のさばきでお客様を魅了しますが、その一方で、竿にかかる様々な負担や風の状態等を巧みに読み取り、いかに竿へ負担をかけずに旗を操るかを常に考えています(大胆に見えて繊細。決して闇雲に竿を振り回しているわけではないのです)
また、聞いた話によると竿の破損に備えて予備の竿を準備する、時には壊れた複数の竿をか活用して破損個所を修理・交換して一本の竿に仕立て直すなど、堅実で地道な工夫も行うようです。

見た目は似ているが中身は違う

本体色が黒っぽいことと「繊維」つながりということで混同されがちですが、カーボン竿とグラスファイバー竿は「全く異なる素材の竿である」ということは覚えておいたほうが良いでしょう。
違いをまとめると以下のようになります。

グラスファイバー⇒ガラス繊維で竿の直径が太く重みがある。竿自体が堅牢で粘りがあり大型の旗(ポンジ・綿問わず)に向いている。

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グラスファイバーはこうした大型の旗を力強く揚げるのに向いています

カーボンファイバー⇒炭素繊維で竿の直径が細く軽量である。操作性に優れ、小型~中型のポンジ旗に向いています。

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カーボン竿は軽さと反応の敏感さはアクロバティックな演舞に効果的です

このように両者は色形は似ていますが特徴も得意とする分野も異なります。それぞれの特性にあわせた使い方をするの良いでしょう。

・・・と、ここまでが私が語れるカーボンのお話です。
伝聞などによるところが多いので、間違いのご指摘、補足等ございましたらどんどんお寄せいただけると嬉しいです(←すでに他力本願である)
カーボン竿をつかったパフォーマンスはめまぐるしく派手な動きで見る者を魅了してやみません。間近で旗士さんたち自身のアクロバットにお客様から歓声があがることもしばしばです(私も大好き)
その一方で、旗士さんたちには非常に繊細さ堅実さを求められる技術の世界でもあります。そうした旗士さんたちの妙技、その竿捌きにも注目するとより一層演舞を楽しむことができるかもしれませんよ。

※落雷のおそれや感電の危険がある場合、旗竿を無理に使用するのは非常に危険です。中でもカーボンは電気導体であり感電のリスクが高くなります。天候や状況に合わせ、場合によっては使用を中止するなどして安全には常に注意してください。

補記

以下にグラスファイバー竿とカーボン竿が破断した写真を載せます。
破断の状態の違いからも両者の性質の違いがうかがえます。
どちらが良い、どちらが優れているという話ではなく、破損した時も両者は異なる性質を見せるということの一例として見ていただければ幸いです。

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グラスファイバー竿。綺麗に折れて竿が分断される。

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カーボン竿。内部の構造がつながって竿が分断されていない。

私の経験上、グラスファイバー竿が破断する際は「パーン」という乾いた感じの、大きな音を伴い、カーボン竿は「グシャリ」と鈍くつぶれたような音を伴います。
常にそうとは限りませんが、こうしたことからも両者の素材としての相違点をうかがうことができると思います。

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