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たくさん撮るから嫌でも当たる


日本骨髄バンクのドナー登録者向けの冊子『骨髄バンクNEWS』の撮影をした。文章も書いている。ドナー登録している方には郵送されると思う。

白血病は血液のがんの一種だ。若い患者さんが多く、競泳の池江璃花子選手が罹患したことで知った方もいるだろう。白血病は若い患者さんが罹患する割合が最も高い。

40年前は未成年の白血病患者の5年生存率は10-20%と低く、ほとんどの子どもが亡くなっていた。

現在は5年生存率がグググっと改善している。AYA世代の慢性骨髄性白血病は5年生存率が90%に改善している。医学の進歩すごすぎるやろ。

5年生存率改善の一役を担っているのが、ドナーと患者の橋渡しをする日本骨髄バンクだ。

ぼくは白血病ではないけど血液がんなので、この撮影はなかなか感慨深いものがある。

がん患者になるとがん患者の友達ができる。ぼくには白血病の友人が3人いた。完治したから過去形というわけではなく、3人ともここ数年のうちに亡くなっている。

きっとドナー登録する人は「誰かの役に立てるなら」と思って登録するのだろう。ぼくも「誰かの役に立てるなら」と思って撮影を引き受けた。

主治医と仕事の話はしないんだけど、この撮影のことは診察室で話した。自分の患者が骨髄バンクの仕事をしてるってちょっとおもしろいよね。

人って誰かの役に立ちたいんですよね。ドナー登録や献血してくれる人も、医療者も患者だってみんな。

『骨髄バンクNEWS』で撮影したのはドナー登録をしている林さんだ。林さんみたいな方が日本に何十万人といるから、白血病患者の命が救われてる。ありがたさしかない。

大学生の林さんは塾講師のバイトをして、推し活をたのしんでいる。林さんがこの日の撮影でいちばん熱をこめて語っていたのが推している男性グループ『ONE N' ONLY』のことだった。

林さんはこういった撮影の経験がはじめてだそうだ。今回はそういう撮影をするときの話。

写真の本でもワークショップでも「たくさん撮りましょう」といっている。

プロ野球のピッチャーは3球あればストライクゾーンに球がはいると思うんだけど、四十肩の素人にはむずかしい。

だけど四十肩でも300球もあれば偶然で1球ぐらいはストライクゾーンにはいるでしょ。それが無理なら500球に増やす。

「たくさん撮る」というのはボールの数が増えるように、チャンスの回数が増えることだ。

写真が苦手な人って苦手意識から撮る枚数が少なくなりがちだけど逆だからね。たくさん撮るんだよ。じゃあ具体的にたくさん撮るってどれくらいという話だ。

普通の人が「若い患者さん」て言葉を聞いたら10代から30代ぐらいまでの若さを想像すると思うけど、医療者は60代ぐらいの患者さんのことまで若いっていう。それくらい普通とプロの認知は違う。

今回の仕事で使用した写真は4枚。4枚に対してこの日の撮影したのは1460枚。

フォルダにはプレビュー用のJPEGがRAWと同数入っているので表示が2920枚になっているけど、使い物になるRAWが1460枚。

写真がすんごい上手い天才で、写真の神様みたいな人は使用カットが4枚だから、撮影枚数も4枚でOKだ。

ぼくは写真業界に入って20年、プロになって10年ちょっとの凡人なのでたくさん撮っている。凡人は数をこなすのよ。四十肩の凡人でも1460球投げれば4球ぐらいストライクゾーンにはいる。

デザイナーさんに1460枚も渡したら迷惑なのでNGカットを除いて、いい感じのストライク写真を100枚ぐらい送る。そこから選んでもらう。

ちなみにすごく大事なことで、間違っても誤解しないでほしいんだけど……

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