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刑務所の壁

八王子市の子安町に解体予定の刑務所がある。刑務所といっても身体や精神を患った受刑者を収容する、病院にあたる医療刑務所だ。2018年昭島市に移転したことで役割を終えた。先日、満期出所した日本赤軍の元最高幹部の重信房子氏もここに収容されがん治療を受けていた。

刑務所が解体される前に一般開放されたので家族で見学にいってきた。妻の祖父はここで刑務官として務めていたこともあり、妻はなんだか感慨深いものがありそうだ。

敷地内はたくさんの植物がある。温室らしきものまである。受刑者がシクラメンを育てて販売していたそうだ。作業療法室では焼き物を作り「子安焼き」と命名していたそうだ。炊事場では全国から健康な受刑者が集められて従事していたそうだ。

塀の高さは4mある。となりの家で干している洗濯物が見える。受刑者が収容されていた4階まで上がると外の景色がよく見える。手術室もあるし院内薬局らしきものもあって病院っぽい。たくさんの医師や看護師が働いていたわけだ。

だけど浴室には「交談禁止」の張り紙があって、刑務官の控室らしき場所には武器庫があってやっぱり刑務所だ。控室のすぐ近くの給湯室の壁に貼られたテプラはなんだか市役所感がある。

「モップ1本」の貼り紙のモップの文字の中が水色で塗られていた。きっと書いたのは看護師さんだろうなぁ。黒で塗りつぶしておけばいいものを、わざわざ手間をかけて文字を書いて色を塗っている。

それがまた水色ってのがいい。空の水色なのかモップを洗う水の水色なのか、はたまた両方の意味なのか。働く自分たちのためなのか、受刑者のためなのかわからないけど、働いていた医療者は患者さんとして受刑者と接していたんだろうな。「モップ1本」の貼り紙がすごく良かったな。


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