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超短編「異能でいーの?」

2014年。某S省で、日本経済を救う新たな秘策が生まれつつあった。

課長 「で、これが明日リリースする「独創的な人枠」の公募です。(お願い、ノーコメントで見過ごして…)」
局長 「ああこれね。えっと、スマートインテリジェンス・イノベーション▲○$…舌かんじゃうねこれ。」
課長 「す、すみません。」
審議官「そうだよ君ぃー。もっとシンプルに訴えかけないと、ね、局長。」
局長 「そうだなあー。イノベーションかあ…。ちょっと待ってね。」

局長が、机から硯を取り出してきて、書にしたためる。

審議官「異能ベーション…異能とイノベーションをかけているんですね、うまい!」
係長 「ま、まじすか。」
局長 「ん、なんだね?」
係長 「あ、いや、いくらなんでも…痛っ!(課長に足を踏まれる)」
審議官「いいじゃないですか、ねえ課長!?(すごい目力)」
課長 「あの、えーっと…(ハンカチで汗を拭く)」
局長 「そうか?いいかな。ちょっとベタ過ぎたかな?」
審議官「そんな!逆に新鮮ですよ!逆に!新しい世代には逆に新鮮。ね!」
係長 「いやあー、これはヤバいっすよ。」
局長 「ヤバい?(顔が曇る)」
審議官「ヤバいっていうのは若者の中ではすごいってことなんです!だよね君!(すごい目力)」
係長 「あ、いやそっちのヤバいもありすけど、痛っ!(また足を踏まれる)」
課長 「いきましょう…いきましょう、異能ベーション!(やけくそ)」
局長 「そうかあー。じゃあ頑張ってね。で、あとナンだっけ。」
審議官「えーっとですねぇー、…君たちもう終わったでしょ。行っていいよ。」

すごすごと退散する課長一行。

係長  「いいんすか、あれで。」
課長  「いいんだよ。あれで。」
課長補佐「課長〜、局長レク、長かったですね。」
係長  「聞いて下さいよぉー、異能ベーションですよ。」
課長補佐「なにが?」
係長  「名前が。」
課長補佐「異能?」
係長  「ベーション。」
課長補佐「…(絶句)ぇぇ〜、おれの一年の苦労が、ダジャレに…」
課長  「力及ばず、すまん。」
係長  「ま、仕方ないすよね。広報室にリリース文の修正を連絡しときまーす。」
課長補佐「…異能べーしょん…」
課長  「すまん。」
係員(新人女子)「私は好きですけどね〜、異能ベーションって。逆に。私のお父さんとか言ってそう。」
課長補佐「…まじ!?逆にいいかな?」
課長  「なんか良い気がしてきたな。」
係長  「課長すんませーん、広報室長が『本当にこれで大丈夫ですか、課長と話したい』って言ってまーす。」

こうして霞が関の夜はふけていく…(この話はフィクションです)

(参考文献)

https://www.inno.go.jp/

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