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超短編「亡国の某省」

2018年、某省・官房長室。

課長「あのー、官房長から電話がありまして、直ちに部屋に来るようにと」
秘書「はいはい、少しお待ち下さい」
課長「一体なんの案件だろう…」
秘書「あ、どうぞお部屋にお入りください」

官房長「きみ、元気でやってるかい。」
課長「は、はい。」
官房長「色々と忙しいだろ〜。なんとかブランディング事業とかいうやつの審査とか、やってんでしょ」
課長「そうですね、なかなか良い案件が出てこなくて苦戦中です」
官房長「そうかぁー、ところでここ、知ってるよね」
課長「(差し出された名刺を見る)あ、はい、詰まってないので去年落としてまして、しょーこりもなく今年も出してきてますが、なんの工夫もないのでまあ無理ですかねー、何考えてんすかね。こういうのばっかで困りますよ。」
官房長「そうなの?どうにかならないの?」
課長「は?」
官房長「いやー、あの、ゲフンゲフン。ちょっとね、良いじゃないかとか言う人とかも居てだね。」
課長「はぁ...(誰か政治家や官邸あたりに捻じ込まれてるんだろうか。この人、次官候補だし、恩を売っておけばオレの人生も安泰だな)そう言われてみると、なんか、良い提案だった気もしてきました。よく精査させて頂き、後日ご報告いたします。」
官房長「うん、そうだね。無理せず、よく見てよ。うん。ゲフンゲフン。風邪かな。」
課長「働き過ぎですよ。ご自愛ください。」

その晩、ある家庭にて。

息子「おやじー。おれ、ここ受験するから願書のここにサインして。」
パパ「え?ここ受けるの?パパの仕事の関係とかあるからなぁー、まずいよー。まずいなぁー。他にしたら?」
息子「はぁ?いつも家に居ないくせに、こういう時だけ邪魔すんのかよ!たまには父親らしいことしろよ!」
パパ「うん...そだよね...(うーむ、課長呼び出したのマズかったかなぁ〜)」
息子「はやく、サイン。サ・イ・ン!」
パパ「はいはい。ごめんごめん。」

某大学にて。

担当者「文科省の幹部の息子が受験してまいりました。」
偉い人「ほう。で、試験結果は。」
担当者「ギリギリ合格ですね。」
偉い人「それで、君はどうしたら良いと思う。」
担当者「ギリギリ落第にした上で、加点して合格させましょう。」
偉い人「キミも世の中のことが分かってきたようだね。」
担当者「恐縮です」
偉い人「これでしばらく我が大学は安泰だな。よーしキャバクラで祝杯だ」

※この話はフィクションです。

(参考情報)2018年7月4日、東京地検特捜部は、自分の子供を東京医科大学の入学試験で不正に合格させることを見返りとして、文部科学省が行なっている私立大学支援事業の対象校に東京医科大学を選定させたとして、文部科学省科学技術・学術政策局の佐野太局長を受託収賄の疑いで逮捕した。7月6日、入試加点を指示した疑いがある臼井正彦理事長と鈴木衛学長が辞任した。(朝日新聞報道より)


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