
「有機食品のほうが安全」は本当?子どもの食事と残留農薬について
有機食品について、みなさんはどう思われるでしょうか?
「子どもには安全なものを食べさせたい」
「有機野菜を買いたいけど、高いな...」
「有機食品って本当に安全なの?意味があるの?」
など、さまざまな考えの人がいます。
Twitterでは、有機食品をめぐってバトルを繰り広げる人たちも…
果たして有機食品は安全な食べ物と言えるのでしょうか?
この疑問に答えてくれる、1本の論文をご紹介します。
結論をさきに書くと、
「有機食品を食べると、農薬を摂取する量を減らすことができる」
ということが説明されています。
さっそく、中身をみてみましょう。
※農薬の使用や有機食品のありかたに対し、筆者は中立の立場です。
この記事は有機食品をみなさんにすすめたり、一般の食品が安全でないと主張したりするものではありません。
有機食品は本当に安全なの?という疑問に取り組んだ、アメリカの研究者たち

研究のタイトルは、
「有機食品の摂取は、子どもに対する有機リン系殺虫剤の暴露を有意に低下させる」
というもの。
有機リン系殺虫剤とは、日本でも一般的に使われている農薬のことです。
有機食品を食べることで、体に入ってくる農薬を減らすことができるのでしょうか?
Chensheng Luさんほか、以下のような研究機関に所属する6名の研究者たちが実験を行いました。
米国ジョージア州アトランタ、エモリー大学ローリンズ公衆衛生大学院環境産業衛生学部
ワシントン大学環境および職業健康科学科
国立環境衛生センター
なお、この研究は2003年当時のアメリカの子どもを対象にしています。
現在の日本の状況とは必ずしも一致しない点に注意が必要です。
23人の子どもたちに、普通の食品と有機食品の両方を食べさせて、尿検査を行った

研究方法は以下の通り。
いつも普通の食事をとっている23人の子どもたちを選び、15日間ものあいだ朝と夜に尿を採取
最初の3日間は普通の食事をしてもらった
4日目から8日目までは有機食品を使った食事をしてもらった
9日目から15日目目で普通の食事に戻してもらった
尿の中に含まれる、有機リン系殺虫剤の代謝産物を測定した
はたして、有機食品を食べると農薬の摂取量を減らすことができるのでしょうか?
尿検査の結果、有機食品を食べていた5日間は明らかに農薬の摂取量が少なかったことが判明

上の図が、実験結果です。
縦軸が、子どもの尿から検出された有機リン系殺虫剤の代謝産物(MDA)の量を表しています。
横軸のうち、下の数字は実験開始日からの日数、上の数字は参加した子どもの数を示しています。
有機食品を食べた翌日からの5日間で、子どもの尿に含まれる農薬の代謝産物の量が、明らかに減少していますね。
つまり、子どもはふだんから農薬にさらされていること、その原因は有機食品でない普通の食品を食べたためであることが分かりました。
この程度の農薬摂取が子どもの健康に悪影響を及ぼすかどうかは今のところ分からない
さて、気になるのは農薬が検出された子どもの健康についてです。
残念ながら、この研究は答えを出していません。
さらにデータを集める必要があるとのことです。
繰り返しになりますが、この研究は2003年にワシントン州の公立学校に通う子供たちを対象にしたものであり、今の日本の状況とは必ずしも一致しない点に注意が必要です。
ただ、有機食品がただの「安全神話」というわけではないこと、有機食品を食べることで農薬を体に入れるリスクを減らすことができると分かりましたね。
今後も有機食品や農薬に関する記事をアップしたいと思いますので、参考にしていただけるとうれしいです。
それでは。
参考文献
西尾道徳. "検証有機農業". 農文協. 2019.3.25
Chensheng Lu. "Organic Diets Significantly Lower Children’s Dietary Exposure to Organophosphorus Pesticides". Environmental Health Perspectives. 2005.9.1
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!