農業ビジネスの特徴(後編)#環境分析
今回は農業ビジネスの特徴の後半です。残り③~⑤までを解説します。
③保存期間が短く、在庫が持てない。廃棄リスクもある
製造業では、製造時にすぐに売れなくても在庫扱いとして保存しタイミングに合わせて売ることは可能です。
ですが農作物の場合、一部を除き商品としての期間が1週間以下で短く時間経過の劣化が激しいです。また廃棄する場合においても処理するためのコストもあります。
それらを回避するために長持ちする農作物の加工品が選択肢にあります。
ただ、高い初期投資や販売戦略が必要なため、なかなか取り組むのが難しいところでもあります。また農業ビジネスにおいては、生産と同時にすぐに売り切れる仕組みが求められます。
④生活必需品のため商品の単価が低い(希少性の高いものや果物以外)
農作物は、誰にとっても必要なもので生活必需品に当たります。そのため人を選ばず、誰にでも買ってもらうことが可能です。必死に営業をかけなくても、一定の数が消費されていきます。
しかし、それは一定の量を超えてしまった場合、明確な違いがない限り価格競争が発生してしまいます。
逆に言えば、全体的に不作であればある程、高く売れるということでもありますが、全体的に農作物は、海外から輸入して調整することが多く、値段が上がるにしても、ある程度の限界があります(補足:コロナショック後は、世界全体が食糧危機になる可能性があるため国内農作物の需要は高まるかも)。
つまり、農業ビジネスは薄利多売になりがちなビジネスモデルといえます(希少性の高いものや果物以外)。
対応策としては、利益が少ない分、生産量を増やしコストを削減し徹底した効率化があります。この場合は、農地の大規模化、農作業の機械化、労働作業の集約化などが考えられますが、都市農業では、いろんな制約があります。
それ以外にも、農作物の販売価格を下げないために、売る場所や売り方、見せ方などを検討する必要があります。この点についてはマーケティングの分野で話をしていきます。
⑤繁忙期と閑散期の差が大きく、安定した雇用が難しい
農業は季節に応じて生産をするため、忙しい時期とそうでない時期の差が激しくなります。
春野菜、夏野菜、秋野菜、冬野菜とそれぞれのピークがあり、その間の期間を端境期(はざかいき)と呼んでいて野菜の量がガクッと減ります。特に冬の2月はビニールハウス栽培以外かなり収穫量が減ります。
そういった背景から、農家が忙しい時期には人はたくさん必要ですが、そうでない時期は農家本人さえもやることが、かなり減ります。ちなみに生産施設が稼働せず、労働力が空費されている時間のこと「アイドルタイム」といいます。事業ではこのアイドルタイムをいかに減らすかが求められます。
その昔、農家さんの呼び名として百姓という名称がありました。百姓は農業の仕事を以外も行っていたことからその呼び名になったようです(諸説あり)。当時の百姓は、冬の時期は別の仕事を行いながら生計を立てていました。いまでいう兼業農家に似ていますね。
つまり農業はある一定期間労働力が少なくなる時があるため、継続的して人を雇用することが難しいという特性があります。
農家のほとんどが家族経営なのは雇用関係を結ばず、融通が利くからですね。
もしくは、アルバイトの期間限定の雇用やボランティアの方の協力も選択肢の一つです。
また、「農の雇用事業」による補助金がありますが、あくまでも期間限定なので、事業モデルにはなり得ないことを前提として動く必要があります。
もし安定した正社員の雇用をしたいならば生産量が増える時期をがんばって、生産の少ない月の分の利益も穴埋めをするか、農業生産以外の加工や販売などに力を入れる必要があります。
もし法人として雇って事業を行うならばかなりの経営力が必要となります。
以上です!
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