★都市農業ビジネスモデル⑤ その他のビジネスモデルの考察「マルシェ型」#ビジネスモデルと経営戦略
今まで4つの都市農業ビジネスモデルについて話をしてきました。
5番目のビジネスモデルである複合コミュニティ型については、情報量が多く複雑なため、別の分野の基礎編を話した後で、改めて説明をしていきたいと思います。
今回は、提示した4つのビジネスモデル以外についても考察してみたいと思います。
マルシェ型について
マルシェは、地域であっても、都心の場合でも収益性があまり高くありません。
地域のマルシェや朝市は鮮度が高く質のよいものを求められますが、その価値にみあった高価格で買ってもらえることが少なく、安くて良い「お買得の店」のポジションになり、地元の生産者さんが複数現れると、低価格競争になりがちです。
では、都心でのマルシェへの出店はどうでしょう。国連大学前の「青山ファマーズマーケット」や月島での「太陽のマルシェ」などがそれにあたります。
都心のマルシェの場合、地域のマルシェに比べ高所得者が多いため、市販の野菜価格より高く買ってもらうことはよくあります。
ただ、その分の代償として、出店料が高い、駐車代が高い、移動のコストなどがあります。そして、全国から生産者や販売業者が集まるため、競争も激しい環境にあります。他店との差別化や、継続しコミュニケーションをとることで、ファン獲得などの戦略が必要となります。
また都市部でも地域であっても最も負担が大きいのは人件費。マルシェの場合、スタッフが1名だと休憩などがとれないため、2名以上で参加することが多く、その分の人件費を考えると割り合わないことがほとんどです。
そのため、マルシェだけで収益化することは、オススメはしていません。
では、マルシェはやるべきではないかというと、そうでもありません。実際に畑会でも今後は、都内でのマルシェを月2回(人形町と南青山で)の開催を進めていく計画です。
人形町では既に2回行い、今週には南青山で出店します。
まずマルシェで大事なのは、売れる陳列や巧みなセールストーク、おしゃれな見せ方のような戦術以上に、長期的な視野にたった戦略から考えることが大事になります。
戦略としては、2つの分類があります。それは
1 マルシェの収益性をあげるための戦略
2 マルシェ以外のところでキャッシュポイントを作る戦略
があります。
1 マルシェの収益性をあげるための戦略
この戦略をさらに分解しますと
① 高所得者がより多い場所
② 競争相手がより少ない場所
③ 開催場所の企業と一緒に作り上げているか
などがあると考えます。
① 高所得者が多い場所
最初に話したとおり、安くて良い「お買得の店」にならないためにも、高所得者のいる人達の地域に行くことをオススメします。
都心部は一つの選択肢になると思いますが地域であっても、所得層の高い地域などがあるので、そういった場所での開催を探ることが望ましいと考えます。
ただ、あくまでも質の悪いものも高く売れるわけではなく、本当にいいものを適正な価格で買ってもらえるという前提が大事です。
質や需給のバランスに合わない価格設定であれば、いずれ廃れてしまいます。
② 競争相手がより少ない場所
これも先程、話したとおりたくさんの出店者がいると、低価格競争になりがちなので利益率が上がりません。「人が多く集まる=出店者が多い」で、人がそこまで多くないけれど、出店が少ない小規模のマルシェに出店することが望ましいと思います。
多くても安い価格で、一見さんで買われるよりも、少なくても高い価格で、何度も買ってもらえるほうが、長期的にみれば利益もあがり安定的です。
③ 開催場所の企業と一緒に作り上げているか
野菜の販売に関わっていると、色んな所からマルシェに出てほしいと要望をいただきます。都心でも地域でも、お声をかけていただいています。実際に東京の地産地消の割合は1%以下で潜在的に大きなマルシェのニーズがあります。
多くの候補の中で検討に値するのは、一緒にマルシェを作り上げていけるかどうか。
単純に場所だけを提供してもらい、手数料を支払うだけの関係ではなく、開催初期からの売れないリスクも一緒に痛み分けしながらも、いろんな販売の形を共に模索しているかどうかだと思います。収益が上がってくれば、手数料をあげつつも、他の競争相手の出店者よりも有利な条件を作ることも可能です。
以上の①~③のことを踏まえると、マルシェを始める場合は、収益が見込めそうな地域で、1から始めることをオススメしています。
当然、最初の段階からはうまくいかないことはありますが、長期的にみると安定的な収益性を確保するための最短ルートかと思います。
畑会が行う所も、マイナビ農業さん(人形町)とルミネさん(南青山)とそれぞれ行っていますが、出店料は平均の相場に比べ低く、何度も連携をとりながら独自性のあるマルシェにさせていただいています。
2 マルシェ以外のところでキャッシュポイントを作る戦略
もうひとつの戦略として、マルシェではない別のキャッシュポイントをつくることが考えられます。1の戦略以上に大事なことだと思っています。
つまりマルシェは宣伝としての位置づけにし、損をしない程度に継続的に続けながら、別のところで収益を見込む戦略です。
マーケティング用語では、これを「フロントエンド」「バックエンド」と言います。前者が、客引きのための商品・サービスであり、後者は、自社が最も提供したい商品・サービスで利益率の高いものを指します。
例えば、マルシェをきっかけに定期野菜セット販売や会員制サービスに加入してもらったり、飲食店との契約することにもつながったりします。畑会では、さらに利益率の高い法人や団体のイベント受入などにもつながることもあります。
またマルシェの魅力として、直接消費者と会うことで、消費者の深いニーズを知ることが挙げられます。そのことで、マーケティング力や販売力が身につき、生産計画の改善や加工品の商品開発などにつながることもありえます。
そして、収益以外にもメリットとしては、実績を積み上げることで業界の内のポジショニングを作ることもできます。また地域で出店し続けていくならば、地域社会への信用構築にもつながります。畑会では、実績が増えていくごとに、企業さんや行政からのお声をかけていただくことが多くなりました。
以上がマルシェを行う際の戦略の概要です。
長期的に見れば、様々な価値があるマルシェ。
とはいえ、マルシェの先の着地点をなんとなく想定していても、そこにはたどり着けないので、開始する前からマルシェをやるための目的を決めてから始めることをオススメします。
最後にまとめですが
マルシェは単体の事業として進めず、長期的な視点に立ちながら別のビジネスモデルと組み合わせて戦略的に進めることが大事になってきます。
本日は以上です!
次回は、引き続きその他のビジネスモデルの話で、直売所や委託販売について考察してみます。
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