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★都市農業ビジネスモデル①「野菜セット加工品販売型」#ビジネスモデルと経営戦略

畑会の山田です!
今回から4つの都市農業ビジネスモデルについて話をしていきます。
最初の1つ目は、「野菜セット加工品販売型」です。
 
方法は、その名の通り、野菜セットと加工品を宅配などで販売するモデルです。この最も有名な事例として挙げられるのは、石川県の農家さんである西田栄喜です。
畑会のセミナーにも来ていただき、3時間ほど話してもらいました。

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西田さんは30aという狭い農地であるにも関わらず1200万円の売上600万円の利益という驚異の結果を生み出しています。
労働人口としては、1.5人程度(奥様が加工品担当)。たまにアルバイトや家族が手伝い。
畑は少量多品種で、炭素循環農法で栽培されています。
販売先は地域の消費者は一部で、多くは全国に向けて野菜セットや加工品の販売をしています。沖縄にもお客さんがいるとのことです。

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写真:風来のHPから

販売方法は、HPやFB、ポケットマルシェでの販売です。
野菜セットの金額は、約10種類のBセットの場合2,700円(消費税込、送料別)
Cセットは約12種類で3,240円(消費税込、送料別)。単価で言えば売値の2~3倍。
直売のため手数料はネット上手数料が多少かかるぐらいで、経費の割合も低く、利益率がかなり高くなります。
 
そして、さらにもうひとつ利益が高まる仕組みがあります。
顧客側から見ると野菜セットの場合、セットの金額プラス送料が1,000円前後かかってしまいます。そうなると4,000~5,000円かかってしまい、お得感がありません。そこで消費者側はついでに加工品を買うことで送料分の割合を下げようという心理になります。
加工品は、奥様がレシピを考案して、漬物、キムチ、各種ケーキなどで、最近ではぬか床セット、大豆の味噌づくりセットやハーブ栽培セットなどの自ら作る商品も増えています。加工品の値段は、物にもよりますが400~5,000円程度です。

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写真:風来のHPから

加工所は自宅の車庫を改造して作られました。水回り、二坪冷蔵庫、氷温冷蔵庫、脱気シーラー、PC、プリンターなどがあり100万円程度でできたそうです。しかも農機具などを入れても設備の初期投資は140万円程度で済んだそうです。
 
次に売上の内訳を分析してみたいと思います。ここからは実績をベースにした私の仮説になります。以上のことからセットの顧客の平均単価が3,500~4,500円ぐらいではと予想します。ここでは例えば4,000円とします。
売上が1200万円ということは、4000円で割ると年間のセット個数が3,000個。
月に250セット程度の注文数 週50~60程度。これを何日かに分けて発送します。
毎週発送の固定客が8割程度いれば安定しそうなので、例えば40名ぐらいの固定客ができれば、実現可能な範囲だと思います。箱詰めなどの作業も、セット販売を専業すればなんとかできる作業量だと思います。仮に客単価が5,000円ならば、もう少し楽になります。
 
このモデルは、売上や収益率はかなり高いためかなりメリットがありますが、到達するまでは、もちろん課題や壁があります。
例えば
・安定した固定客(ファン)の確保、情報発信の習慣化
・年間で野菜が尽きない生産計画、生産技術
・無駄を無くした、労働作業の効率化
・ニーズに沿った加工商品の変化など
・野菜が不足した場合の野菜や加工の仕入先の確保

 
などが挙げられると思います。特に安定したお客さんを確保することが最も難しいと思います。その点については、また別の機会に言及してみます。
 
今回の野菜セット加工販売型は、西田さんの事例でしたが、それ以外には農tuberでもある「松本自然農園」さんも同じタイプです。ただ、松本さんの場合は加工品ではなく、情報などの付加価値をつけて単価を高めています(情報そのものも販売しています)。
西田さんほどの売上、利益があがっていなくても、都市農業の平均の農業収入に比べると高く、効率的です。
 
以上が野菜セット加工品販売型の説明になります。
どう思ったか人それぞれだと思いますが、個人的には、東京の農家さんは石川県の西田さんの環境より有利だと思っています。面積は30aとあまり差はないのに関わらず、東京という立地は、富裕層が沢山いること畑に来てもらえ関係性が深められる次の日には届けられて鮮度が高いこと、などのメリットがあります。そう思うとやり方によっては、
西田さんの売上や利益率も超えることは可能ではないかと思っています。
実際に、東京の某農家さんでは野菜セットを4,000円(送料別)で売っている人もいますので、不可能ではないと思います。その点については、実践し結果を出してから、改めて語っていきたいと思います。
 
今回は以上です!
次回は、少品種高回転型について話をします!

写真は、西田さんを講師としてお呼びしたときの集合写真です

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#ビジネスモデルと経営戦略

【自己紹介】
非農家でありながら、東京の八王子で農業系サービス事業を展開。
専門分野は都市農業の経営、都市部での小さな農、コミュニティ農業、農のある生活、キャリア視点から見る農などで幅広く農業を語っています。

【研修事業のご案内】
東京キャリアファーム https://tokyo-c-farm.com/
年間を通じて募集中(おススメは春の時期)
ZOOMによる講座を中心として
東京八王子を中心に現場での農業体験も行っています。


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