統計資料からみる日本の農業②「農業の企業経営化」#環境分析
今回は、前回の「統計資料からみる日本の農業」の続きになります。
まだ見ていない方は、ご覧になることをおススメします。
日本の農業は、これから衰退していくのか
「日本の農業は衰退している」とよく言われていますが、本当でしょうか。このことについても、統計資料に出ています。
まず下のグラフをご覧ください。平成29年の農業総産出額は9兆3千億円で、平成27年から3年連続で微増となっています。また別の資料ですが、農業所得も3年連続で上がっています。理由の一つとして、日本の農作物の輸出が増えていることが挙げられます。お米以外は、生産量は下がっておらず、むしろ上がってきていることが見てとれます。
数字でみると農業自体が衰退しているわけではないようです。
しかし、日本の人口は減り、農地も農家さんもどんどん減っていることは、皆さん知っている通りです。では、何がおこっているのでしょうか。
まず農地についてですが、地方の耕作放棄地が問題になっていることがニュースによく取れ上げられますが、すべて放棄されるわけではなく、農地バンクなどを通して、農地の集積・集約化が行われています。
つまり農家一人あたりの耕作面積が大きくなり、効率化され生産量が上がっています。
日本の農業はすごい早さで企業経営化、大規模化し始めている
次に農業の経営体が変化していることが資料を見ると分かります。
左の棒グラフを見ると、予想どおり農家自体が減少していますが、右の棒グラフを見ると組織経営体が増え、そのうちの法人の農業経営が過去6年の間に8,100社も急増していることが分かります(割合でいうと50%増)。
実は、日本の農業の業界は、大きく再編成していることが分かってきます。こういった農業経営体の規模を見ると家族経営の規模では到底及ばないほどの売上を出しています。またJAが弱体化し、有名大企業が農業の業界に参画し始めました。ソフトバンク、TOYOTA、三菱商事、NTTグループなどが参入し、スマート農業により生産技術から販路、流通、管理、保存方法などが改善されています。農作物の量も質も味も大幅に日々向上しており、農業は衰退どころか大きな変革期に来ているといえます。大企業が参入して失敗した事例も多くありますが、いろんな経験を経て、収益を出す企業も増えてきました。
またTPPや日米FTP、種子法廃止や種苗法の改正の流れもあり、海外メーカーの日本参入の流れもあります(この点については別でお話します)。
では一体、この業界変動が都市農業とどういった影響を与えるのでしょうか。
それは間違いなく、東京での競争が激化するということです。
日本の農作物のほとんどは、大消費地の東京をはじめとした都心部に来るわけですから、そういった大きな企業経営の農作物と都市農業の野菜が比較されてしまいます。都市農業のアドバンテージとしては、近いことによる鮮度や安心、安全があげられますが、技術向上によりその差も埋められつつあり、単純な野菜の質や値段では勝負することは難しくなっていきます。都市農業だからこそできるもので勝負しなければ埋もれてしまいます。
明確な差別化や戦略、それに伴う行動を重ねながら都市農業が進化する必要があると思っています。その意識があるかないかだけで、農家としての行動が変わっていくと思います。いろんな農家さんとお話をしていて、その危機感を感じている人とそうでない人では、行動が大きく違うことがよく分かります。すぐに結果がでるわけではないですが、いずれ大きな差になっていくと感じます。
偉そうで本当に申し訳ありません。ただ、客観的な数字を見れば見るほど今までの一般的なやり方では限界が既に見えています。都市農業は、今大きな分岐点に立っているのだと思います。もちろん、都市農業は戦略によっては大きな可能性を秘めているとも強く思っています。
今回は、以上です!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?