★都市農業ビジネスモデル④「観光農園型」~コロナ禍は、ピンチかチャンスか~ #ビジネスモデルと経営戦略
今回は、都市農業ビジネスモデル4番目「観光農園型」についてお話をしてみます。
この「観光農園型」ですが、コロナ禍によって以前のやり方では通用しなくなってきたのでその点も追加で話をしてみたと思います。
観光農園型に関しては、4つのビジネスモデルの中では、もっとも条件が多く再現性が最も難しいビジネスモデルですが、体験イベントなどにも応用できる要素もあるため知っておいたほうがよいかと思います。
また事例ですが、東京では観光農園はありますが、私が知る限りあまり収益性の高い事例がありませんので、別の地域からの紹介となります。
それは愛知県岡崎市にあります「ブルベリーファームおかざき」さんです。
愛知県名古屋市から少し離れたところにある郊外で、東京の感覚でいえば新宿から八王子ぐらいの距離です。その名の通り、ブルーベリーの観光農園を運営しています。
HPはhttps://blueberryokazaki.com/ 写真はNagoya Startup Newsさんから
5,000㎡に畑があり、40種類、1,300本のブルーベリーを栽培で、年間2000万円の売上をあげる観光農園、また観光農園の営業日が60日間でかなり短くなります。
1年のうちの9か月は週休5日の状態で、効率性、生産性がかなり高い。
ここまでできる戦略としては、主に3つ(『最強の農起業!』より要約)
「無人栽培」「観光農園システム」「IT集客」。
「無人栽培」はブルーベリーが好む酸性の肥料をブレンドした養液を使った水耕栽培を行いで収穫や選定作業を除けば、ほとんど手間がかからず、ほぼ無人栽培できる合理的な栽培方法。人件費を大幅削減し、早く生育し、最高品質のブルーベリーが育つ環境が実現しました。サイズも大きく500円玉ぐらいの実がとれます。そういった点で他のブルーベリーの農園と差別化が可能に。
「観光農園システム」は、消費者に直接直販(体験する)ことが可能になり、市場価格2~3倍の価格に可能に。またブルーベリーは最も時間かかる作業が収穫作業でその作業を観光農園としてお客さんにとってもらうことで、労働力をサービスに転移が可能に。
「IT集客」は、HP、ブログ、SNS、YouTube、メールなどを複合的に継続的に行うこと。
戦略として、労働力がかかる農業を徹底して、効率化させたことにある。
労働力を設備、資材、システムに移行し、投資することで稼ぐことのできる構造につくりあげることができた事例。
詳細は、畔柳茂樹『最強の農起業~ブルーベリー観光農園で失敗しない農業経営』を読んでみてください。
以上のように
観光農園型のメリットして
・単価が高い(体験サービス、料理、加工品などのお土産などのセットで提供)
・収穫、梱包などの人件費が減らすことができる
などの部分があります。
それと同時にデメリット(課題)としては
・初期の設備投資が高い
・観光サービスのノウハウや顧客管理が必要
・住宅から少し離れた農地の確保が必要
・差別化やリピートしてもらう仕組みが必要
などが挙げられます。
事例に挙げた「ブルーベリーおかざき」は顕著な例ですが、もっと規模を小さくしたり、他の事業などと組み合わせたりすることで、運営も可能になってきます。
その点については、5番目のビジネスモデル「複合コミュニティ型」の所でいずれ話をしていきます。
さて、ここからは追記ですが、コロナショック後の観光農園についての話です。
コロナ禍を経てどうなかったといえば、ご存知のとおり密になりやすいということで、訪問客が大幅に減ってしまいました。非常事態宣言時は当然のことですが、解除後に関しても以前のような賑わいは、しばらくは戻ることはないでしょう。
この場合、一日当たりの最大人数が増やせないため、考えられる対策として「単価を上げる」「回転数を増やす」「観光農園以外の事業に分散」などがあります。
「単価を上げる場合」は、会員制やサービスの質をあげること、別のサービス(後述)を追加することなどが考えられます。
「回転数を増やす場合」は、密にならないような時間を区切り、時間ごとの予約制やエリアごとの分割管理などを行うことが考えられます。
畑会でも観光農園ではないですが、体験イベントの開始時間をグループごとでずらす、収穫グループと食事グループなどを分けて進行する計画です。
「観光農園以外の事業に分散」については、加工事業へ移行などがありますが、今回の趣旨とずれるために割愛します。
しかし、このようにコロナ禍において、集客が減ってきたと思う反面、実はある部分ではニーズが増えている観光の形があります。
それは、「アウトドア型の観光」です。
3密を避けられる環境、また自粛による反動によって自然の中、家族単位でゆったりと過ごすニーズが増えています。
例えば、キャンプ、グランピング、空き家の活用などが挙げられます。
その中でBBQ型の食事や宿泊するサービスが提供することができれば、大幅な単価を上げることも可能です。
これを農業との連携を考えるとするならば、「クラインガルテン」のような形が挙げられます。
クラインガルテンとは、住居と畑が併設されている「滞在型市民農園」の仕組みです。
ドイツ発祥の仕組みで、日本ではまだ少ないですが注目がされ始めています。
現実的には、グランピング、空き家の活用については、法的、予算的、地域住民の関係性の観点からすぐに実行できるレベルではないのですが、キャンプのテントのような建物にあたらないものであれば可能性があります。
畑会としても、八王子市の行政にたいして畑の中で立てることができる簡易テントをたてて寝泊まりできる企画を提案しています。
また、前回話をした「体験農園型」であれば、都内に近ければ近いほうが有利ですが、逆に都内に離れていけばいくほどアウトドア型の観光農園型の可能性が高まります。
以上が、観光農園型のビジネスモデルでした。
正直、観光農園型は、最も再現性が難しいビジネスモデルだと思います。
初期投資の資金、住宅から少し離れた土地と駐車場、生産技術、観光としてのサービスなどいくつかの課題があります。逆にいえば、参入障壁が高いため、作り込めば揺るがないポジションを取ることも可能になります。
また、コロナ禍の影響で東京都の人たちが地方への旅行に行くことが空気的に困難な中、東京内での観光需要は大幅に上がってきています。そのニーズをうまくくみ取り、具現化することで、観光型農園は大化けする可能性を秘めています。ピンチがチャンスになります。
また観光ではなくても、体験イベントに特化した畑も可能です。畑会でも、体験イベントを行っており、売上は1回あたり3~25万円で、粗利益率も30~50%程度までなら可能です。自前の畑で行えば、さらに利益率はあがります。体験イベントの需要も、確実に増えています。農業体験イベントについてもまたいずれお話をしたいと思います。
次回は、4つのパターンのビジネスモデルについて話が終わったので、「複合コミュニティ型」以外を除く、その他のビジネスモデルの考察をしていきたいと思います。
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