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★「都市農業で最も大事にしなければならない経営分析の指標」 #会計から見る農業の経営分析

前回から「会計から見る農業の経営分析」についてお話をさせていただいています。
本日のテーマは「都市農業で最も大事にしなければならない経営分析の指標」について話をしていきたいと思います。
あくまで個人的見解で、最も大事な指標は人によって解釈も違うと思います。その理由を私から話ながら、それぞれ各自で考えていただければと思います。
 
私が最も重要だと思う指標は「利益率」です。
利益率は、売上から経費を引いた利益を売上の数字で割って%で示します。
例えば、売上が100円で経費が40円で、利益が60円の場合には、
利益率は、60円÷100円=0.6で、それに100%をかけて、60%になります。
計算式はシンプルなので、慣れさえすれば暗算でもざっくりはわかると思います。
 
ただ、利益といっても会計上はいろんな利益の種類があります。
全て覚えなくてもよいですが、粗利益、営業利益、経常利益、税引き前利益、当期純利益などがあります。これらの利益の違いは、どの経費まで差し引くかによって変わってきます。
最後の当期純利益で言えば、全ての経費を支払い、税金も支払った後に残る利益です。
管理会計(稼ぐ会計)としては、粗利益と営業利益を中心に覚えてもらえれば大丈夫です。
 
○粗利益と営業利益の解説、そして、どっちを増やすのか
それでは、この粗利益と営業利益についてだけ説明します。
粗利益は、売上から原価を引いた利益のことを言います。
計算式は
売上 - 原価 = 粗利益

原価というのは、モノやサービスを売るために必要となる資材や仕入れた金額を指します。
農業で言えば、野菜を作るために必要な種代、資材代、肥料代、袋代などがあります。
ちなみに原価は、人件費は入っていません。
営業利益は、粗利益からさらに人件費や広告宣伝費など(会計用語としては、販売費及び一般管理費や販管費と言います)を差し引いた利益になります。
計算式は
売上 - 原価 - 人件費 - 広告宣伝費など = 営業利益

農業で言えば、人件費は、農業従事者に支払う給料、広告宣伝費は、直売所に出す出店料やネット販売の手数料などが該当するかと思います。
ほとんどの方が、家族経営などの少規模の農家さんが多いと思いますので、人件費=自分の給料になるパターンが多いと思います。
そのため人件費(自分の給料)を減らして営業利益を増やそうと考える農家さんはほとんどいないかと思います。むしろ人件費(自分の給料)をいかに増やすかを考え、営業利益を少なくします。
そのため、経営者として考えるのであれば、まずは営業利益の前の段階の利益である粗利益を上げることが経営にとっても、農業者個人にとってもよいことになります。
今回の利益率の話は、ほとんどが粗利益率についてです。

利益の種類

○なぜ都市農業において利益率が最も大事なのか
その理由は、今まで何度も話をさせていただきましたが
「農地が狭い」という点です。
都市の農業は、地方の農業に比べ10分の1以下の耕作面積の中で行っているため、利益率が低い時点で利益の上限が決まってしまいます。スーパーなどで地方の野菜と同じ価格で販売すれば、土地が狭い都市農業は当然、数量が少ないため地方の農家より収入は構造的に少なくなります。そのため、都市農業で収入をあげるためには、利益率をあげるしか基本的には方法がありません。
勿論、単純に価格を上げれば売れなくなるため、付加価値をつけて価格を高めていく必要があります。
そのことを説明したのが前回のカテゴリーの#ビジネスモデルと経営戦略で述べた4つのビジネスモデルなどになります。このカテゴリーでは、そういったビジネスモデルを会計的な観点から解説していきます。
 
利益率が高めることが重要であることは、誰もがわかっている話なのですが、この利益率をいかにあげるかを考えている農家さんは、あまりいないと感じます。
厳密にいえば、頭でなんとなく理解しているが、具体的にどうすればいいかが分からないというのが実際のところだと思います。もちろん、明確な方法論があるわけではありませんし、その答えは立場やタイミングによっても変化していきます。
ただ、利益率を上げ方やそれぞれのやり方が合っているかを検証することが、会計という数字を通じて可能になります。

○利益率を高めるための管理会計の考え方

利益を上げるには大きく分けて、2つのアプローチがあります。

それは、「売上を上げること」「経費を下げること」です。
売上を上げるためには、単価顧客数購入頻度を上げる必要があります。
経費を下げるためには、原価、販売手数料、人件費、設備費、光熱費などがあり、無駄な経費を見極め、削減する必要があります。
まず、売上の要素である単価、顧客数、購入頻度に関していえば、一番可能性があるのは、単価になります。なぜなら顧客数や購入頻度は都市農業では、生産量が限られているため、限界があるからです。その為、真っ先に考えるのはいかに単価を上げるかを優先的に考えます。単価を上げてから、いかに顧客数や購入頻度を考えることが大事になります。逆に顧客数や購入頻度から考えると安売り思考になってしまいます。
 
次に経費を下げるには、管理会計の考えの方である「分解する」という技を使います。
まず経費の項目毎に分けます。経営体によって名称や分類が違うと思いますので、経営者が分かれば問題ありません。
次にいろんな切り口から分けていきます。月毎などの時間軸、生産品目ごと、事業部ごと、農地ごとなどのいくつかの切り口で分けていきます。分けていくことで、それぞれの経費を比較しながら、異常値や不必要な経費などをあぶり出し、削減することが可能になります。

もちろん、これで全てが解決するわけではなく、分類し経費を削減しすぎることで、売上が下がってしまうリスクがあるので、経費と売上の因果関係をしっかりと認識することも大事です。また経費削減だけに意識を注力しすぎると、投資や戦略にお金をかけることが消極的になってしまいます。
分解してミクロに分析し原因を探るのと同時に、全体像や市場のニーズのマクロの視点からも観察して、経営判断をしていく必要があります。

利益の上げ方
今回は以上です!
利益の説明で長くなったので、ここで一旦終了します。
利益率は本当に大事なところなので、次回も続きをお話します。
次回は、安売りの誘惑に負けないための戦略会計の考えをお伝えします!


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