都市農業の目的と収益性を両立させるためには #ビジネスモデルと経営戦略
畑会の山田です!
今回から都市農業のビジネスモデルや経営戦略について話をしていきたいと思います。
といいつつ、すごく素朴な疑問から話を進めてみたいと思います。
多くの農家さんの話を聞くうちに、ビジネスモデルを考えるその前に、根本的なところから見直す必要があると思いました。
「そもそも都市農業で稼ぐことを目的としていないのでは」
という疑問があり、その点について言及してみたいと思います。
この問いに答えによって、ビジネスモデルも経営戦略も変わるからです。
今回の話は、人によってはかなり重要な話になります。
みなさんは、「都市農業で稼ぎたいですか?」という問いに対しては、ほとんどの方が「Yes」と答えると思います。
ですが、「都市農業をやる一番の目的は稼ぐことですか?」という問いになると、「Yes」という人は、まずいないと思います。
つまり、ほとんどの方は、都市農業で稼ぎたいけれど、優先順位は一番ではありません。
農業で本当に稼ぎたいのならば、地方の農業へ迷わず行くべきだと思います。
ただ、一番ではないけれど必ず目的の一部として必須なことも確かです。
この問いは都市農業だけが問われることではなく、一般の仕事をしている人たちにとっても同じく大事になります。優先順位の項目の例としては、「家族」「組織(会社)」「健康」「経済」「時間」「趣味」「社会貢献」「快楽」「原則」などがあります。
今回は、その中でも都市農業の特性に応じた優先順位(目的)の項目を紹介します。
その目的を参考しながら、自分自身の価値観を明確にして、その価値観からずれないための自身の都市農業の在り方を探るヒントしていただければと思います。
価値観が明確になっていると、農業経営で選択を迫られたときには、すぐに決断できるようになります。また、いくらぐらい稼げばいいかという目標も明確になりますし、団体や組織で活動するようになる時にも役立つようになります。
目的1:農地を残していくこと
この目的は、農地を持つ地主さんに特有な目的だと思います(ここでは税金対策のためだけに栗林などを植えたままにしているような農家さんは除きます)。ご先祖からいただいた農地を大切に残していくという想いがあります。
この場合、主に2パターン分けます。ひとつは、代々続いた農業を、誇りを持って自分自らが農業を行い、継いで残そうとするパターン(専門型)。
もう一つは、前回でも都市農業ビジネスの特徴でも話した、畑を「公共性」のあるものとして地域の人たちと交流する場として残していくパターン(公共型)があります。
ビジネスとして考えると、専門型は、いい農作物を育てることに集中しすぎて、どうしても職人気質なる傾向があり、公共型は、公共性を重んじるため、地域の人たちに低額もしくは無償で提供することが多く、どちらもビジネスとしての収益性は決して高くありません。
農地を残すという目的において、不動産収入の割合が大きい地主さんは、大きな問題はないのですが(節税対策で、あえて収益を出さない農家さんもいる)、不動産収入が比較的少なく生活が厳しい場合は、目的を達成することが困難になっていきます。そのため、一部の地主さんにとっては少なくとも、ある一定の収益性を担保する必要があります。
目的2:人間らしいライフスタイル
農業に関わるきっかけになるのは、健康的な食事をとれる、自然の中で仕事ができる、自分のペースで仕事を行えるなどのライフスタイルの観点から農業に関わっていく人が多くいます。また直接、お客様と交流できることや仲間と一緒に活動することもライフスタイルの分類に入れます。3.11の地震以降そういった方が増えていますし、私もその頃から農業に関わる活動を始めました。
ただ、当然ながら生業としてやってみると、そのような理想と現実に乖離することが多くあります。朝早くから日没まで働き、雨の日も雪の日も暑い日も働きながら身体を酷使していくリスクもあります。やり方によっては、夜の事務作業や配達などもあり、若い人であれば可能でしょうが、10年、20年と続くと身体の負担は大きくなります。結果、サラリーマン時代のような生活を避けていたつもりがそれ以上の労働を行うことになり、本末転倒になってしまうこともありえます。
目的3:社会課題解決を行う
これは農や食に関する社会的課題を解決したくて農業に関わろうとする人です。社会的課題とは、貧困や飢餓の問題、フードロス、自給率、自然栽培の食、環境破壊、地域経済活性(街おこし)などです。畑会もこの「目的3」の分類に入ります。
社会的課題を解決するための多くは非営利であることが多く、これもまた収益性と離れてしまうことがあり得ます。国の給付金、補助金、民間の寄付などに頼るにしても緊縮財政を推し進める政府では、いずれ縮小しなければなりません。
以上が、都市農業で行う目的の説明になります。
ここで大事になってくるのは、目的達成と収益性の両輪を成り立たせることです。どちらかだけでは、長期的には成立できません。その両輪を成り立たせるためには、「ビジネスモデル」という思考法を知り、それを構築するアプローチが必要になります。
ビジネスモデルは単純な努力量や熱量だけの問題ではなく、構造的な問題解決力が必要となります。
ここでさらに具体的な条件の例を言うならば
・サラリーマンの労働時間(月160時間)以下(目的2)
・長期間にわたり続けられる負荷の少ない労働環境(目的2)
・健康的な食生活、活動ができる(目的2)
・農や食を通じて社会へ影響を与えられる(目的3)
以上のような条件を満たしながらも
「平均年収程度の収入は確保」できるビジネスモデルです。
それが結果として
・農地の残していくことが可能(目的1)
などがあります。
東京アグリビジネス研究会では、上記の3つの目的達成と同時に収益が可能な都市農業のビジネスモデルを模索し実践していきます。
「実際にそんなことできるの?」という疑問も当然、湧くと思います。ですが、理論的(数字的)には可能ですし、一部の農家さんがそれを体現している事例があります。
次回以降は、私が考える都市農業のビジネスモデルについて触れてみたいと思います。
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