【ショートショート】ホテル屋サカキの命令違反「裸眼」
裸眼干渉。死者が生者を裸眼で見ると、見られたほうの生者は命を失う。
俗にいう『死者に呼ばれる』とはこの現象のことを指すのだと、そう教えてくれたのは兄だった。
生者の世界と死者の世界。二つの世界の境界が曖昧になった享霊元年以後、死者の世界における生者への裸眼干渉は固く禁じられていた。
「桃香」
兄が名前を呼び、火照った私の頬を優しく撫でる。
「夕飯なにがいい?」
奔流に晒されて末端を削られたのだろう。外で待っていた兄は、指先を第一関節まで消失していた。
私は「しらた