【ショートショート】ホテル屋サカキの命令違反「スモーク・ラビリンス」
借金取りに追われ、逃げ込んだ先が河畔に立つ小さなホテルだった。
「どこでもいいんだ。一時的に身を隠せる場所はないかな?」
助けを求める坂木道夫に対し、魚のような顔をしたフロントスタッフは意味深な笑みを浮かべた。
「では、絵本の世界などいかがでしょうか」
「絵本の世界?」
「ご安心ください。大人向けの絵本です。身を隠すには、これが最適かと」
「じゃ……じゃあ、それで」
案内された202号室で指示どおりに炭酸水を飲んでいると、頭上からモーター音が聞こえてきて、次第に視界があ