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世界最大の球体

こんにちは、コーイチです。
 アメリカラスベガスに建設され「世界最大の球体」として注目を集める「MSG SPHERE(マディソン・スクウェア・ガーデン・スフィア)」が、今年の9月末頃に開業する予定となっています。
 今回は、この「MSG SPHERE」の内容を見ていき、このような未来的で莫大なコストの建物が日本にもできるのか、考えたいと思います。


1.斬新なアリーナ

(出典:ABC News youtubeより)

 カジノの街から、エンターテインメントの街へと変貌を遂げ、今やコンベンションの街としても活況を呈するアメリカ ラスベガス。
 コロナ禍からもいち早く回復を見せ、2019年に4200万人超の訪問者がもらたした369億ドル(約5兆円)の「年間訪問者消費額」は、昨年、訪問者数こそ3880万人であったものの「過去最高」の449億ドル(6.1兆円)を記録しました。
 また、 今年11月には新たに招致したF1レースの開催を控え、来年2月にもNFLスーパーボウルが2020年に新設されたアレジアント・スタジアムで開催が予定されています。

 こうしたエンターテインメントへの期待の高まりの中、斬新なアリーナの建設が進んでいます。
 ラスベガスへの進出を目論む、ニューヨークの「MSG(マディソン・スクエア・ガーデン社)」が作っている「MSG SPHERE」です。
 その名の通り、「球体」 の2万人収容の大型アリーナとなっており、今年9月末頃のオープニングに向け、現在は、工事と演目の準備が最終段階に入っています。

 億万長者であるジェイムズ・ドラン氏が経営する「MSG」は、2018年9月ラスベガスで、「MSG SPHERE」の起工式を行いました。
 ドラン氏は、当初、「MSG Ventures(ベネチア)社」のCEOデイヴィッド・ディブル氏に「ライブ・エンターテインメント・ビジネスを生まれ変わらせよう」、「テクノロジーも自分たちでイチから開発しよう。テクノロジー主導型のデザインにするんだ』と言ったということです。
 また、ドラン氏とディブル氏は『Rolling Stone』誌に、「ゴーグルなしでVR体験ができたら最高じゃないか。それがSPHEREなんだ」と語っています。 

2.MSG SPHEREの特徴

(出典:The B1M youtubeより)

 「MSG SPHERE」の広さは1万4864㎡で、1万7600人の収容が可能なアリーナです。
 その最大の特徴は、内側と外側を最新の高精細LEDパネルが覆い尽くしており、外側のLEDは約5.4万㎡で「世界最大」、内側は約1.5万㎡でハイビジョンテレビの100倍以上もの「世界最高の解像度」が謳われています。  
 これらの設備により会場の外からもコンサートが楽しめる一方で、最大の魅力は内側のディスプレイでライブ・エンターテインメントに囲まれて没入できることとなります。

 観客を包み込むような映像に加え、15万7千のウルトラ・ダイレクショナル・スピーカー(超指向性スピーカー)とビーム・フォーミング技術によって、個々の席ごとに計算された最高の音質と音量が届けられるようです。
 演目によっては特定エリアを外国語席として提供することも可能になるかと思われます。
 また、インフラサウンド・ハプティック(触覚・超低周波音)と言われる、「音を深みのある振動として体感できるシステム」も配備されており、さらに観客席には冷気や熱気、風やアロマを顔に吹き付けるオプション設備もあるようで、4Dシアター的な楽しみ方もできそうです。

 建物は、LEDの重量に耐えるため、球形の屋根には長さ200フィート(約61m)、重さ100トンのトラスを32本使用し、その平衡を保つことで支柱を使わずに支える構造となっています。
 内部空間も高さ360フィート(約110m)x 幅516フィート(約157m)と広大で、多層式・扇型を採用した17500の固定席と2500の折り畳み式席が設置されています。
 舞台正面のフロアには席を置かず、立ち見にすることで更に観客を増やしたり、逆に舞台を引き出すことで、ダイナミックな演出をすることが可能なレイアウトとしています。
 また、アリーナ内壁のLEDスクリーンと舞台を一体化させた、イマーシブな(没入型の)演出を売りとするデザインとなっています。

(出典:blooloop youtubeより)

3.膨大なコスト

(出典:Prosper List youtubeより)

 「MSG SPHERE」の建設費は、コロナ禍や建設の難しさにより、コスト総額は23億ドル(約3220億円)に膨れ上がると見積もられています。
 これはラスベガスでも史上最高額の会場となり、「MSG」が投資を回収できる保証はありません。
 しかし、全世界を見渡しても、唯一無二の空間であるのは確かで、eスポーツ大会や総合格闘技の試合のほか、様々な用途に活用されると期待が高まっています。

 コンサートやイベントのブッキングが無い時間帯には、4D技術を駆使したイマーシブ(没入型)コンテンツ『ポストカード・フロム・アース(地球からの絵葉書)』と題された60分の作品が当面展開されるようです。
 チケットは、一人49ドル(約6700円)からの価格設定ということです。
 「MSG」は「MSG SPHERE」専用の作品を製作するために、ロサンゼルス郊外にスタジオを設置して機材を揃え、既に数本の作品製作に着手しているようです。
 誰も撮ったことの無い大型球形スクリーン用の作品制作は、撮影だけでも相当複雑であることは確実ですし、演出方法についても、舞台に登場する人間の身長に比べ、背後のスクリーンがあまりにも巨大なため、映像と演者の組み合わせ配分が、既存の舞台演出では対応できないなど、今後かなりの試行錯誤が必須であり、その制作費と時間もまた膨大になると予想されています。

 「MSG SPHERE」のこけら落としはアイルランドのロックバンド「U2」で決定し、チケットの販売も4月24日に登録ファン限定先行受付が始まりました。
 「U2」は奇抜で大規模なステージを使った演出で定評があり、現にチケットの売れ行きは好調のようで、公演が追加されましたが、一般販売は行わないと発表されました。

(出典:U2 youtubeより)

4.最後に

(出典:Sphere youtubeより)

 ドラン氏は「MSG SPHERE」の起工式で、報道陣に向かってこう公言しました。
 「いまから3年後に、皆さんはきっとこう言うでしょう。『こんな風になるなんて、思いもしなかった』と。そのぐらいクレイジーで、とんでもないプロジェクトなんです」と。

 日本では、現時点で民間主体でここまでの大プロジェクトはコスト的にも様々な規制的にも難しいと思います。
 ちなみに東京スカイツリーの総工費は、約6400億円、新国立競技場で、約1570億円となっています。

 経済成長が急激に伸び、大阪の統合型リゾート施設(IR)が大成功を収めることが出来れば、将来的にはどこかのIR都市に出来るかもしれませんね。
 
 世界初となる様々な最先端4D技術を注ぎ込み、これまでに存在しなかった新たなエンタメ空間を創造する「MSG SPHERE」
 果たして、「MSG SPHERE」は、数々の課題をクリアして計画通りフルスペックでのオープンを迎え、大好評を得られるのでしょうか。
 また、オリジナルコンテンツの『地球からの絵葉書』はヒットするでしょうか。
 非常に楽しみです。
 尚「MSG」は、この「SPHERE」をロンドン東部ストラトフォードにも建設する計画ということです。

 完成した暁には、是非一度体験してみたいですね。

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