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ソーシャルリテールストア

こんにちは、コーイチです。
今回は、2021年7月に深圳で、11月に上海にオープンした、「BURBERRY」の新しいグローバルデザインコンセプト「ソーシャルリテールストア」の旗艦店を見ていき、ブランドの顧客体験が今後どうなっていくの考えたいと思います。

1. デジタル戦略

(出典:Win Big Marketing Inc. youtubeより)

 「BURBERRY」は2006年の時点で、「ファッション業界における“デジタル進出”の先駆者となる」と宣言しました。
しかし当初は、デジタル知識に乏しく、ほぼゼロスタートとも言える状況だったようです。
 当時、これから先の未来がデジタルネイティブ世代中心になることを見据えて、新しいものを積極的に取り入れる姿勢を貫きました。
 
 様々なソーシャルメディア(Blog・Twitter・Facebook・Snapchat・Periscope等)を活用し、斬新な戦略を駆使しました。
 『ユーザーに対して開かれたラグジュアリーブランドになる』という目標を掲げ、その目標達成のために必要だと思う事を積極的に導入し活用していきました。
 2010年の春夏コレクションでは、誰でも視聴できるようにファッションショーのライブストリームを実施し、配信中は全世界の視聴者がFacebook上で意見交換をできるようにしました。
 ショーの途中で「アナ・ウィンター(※アメリカ版VOGUEのカリスマ編集長)がいる!」と呟き、ネットユーザーの関心を惹きつけ、話題化させ、有名人を発見して興奮する、という大衆の感覚をうまく利用し「個人的な繋がり」や「親近感」を獲得する事の効果も事前にシナリオ化していました。

 また、eコマースでも新たな手法を取り入れ、ファッションショー終了直後から、披露された新製品の予約注文ができるようにしました。
 予約注文した商品は店頭で商品が並び始めるよりもずっと早く、購入者の手元に届けられます。
 新しいものを「自分だけ一早く手に入れられた!」という、ユーザーにとって「優越感」や「特別感」を感じさせるような、新たな仕掛け、顧客体験を実現しました。

 今となっては普通ですが、その頃に「BURBERRY」のトレンチコートを着用するユーザーであればだれでも参加できる掲載サイト「Art of the Trench」をローンチし、ユーザー同士の交流をいち早く取り入れたりしました。
 単なるファッションスタイルの投稿ではなく、「BURBERRYのトレンチコート」という参加条件を用意したことで「特別感」や、「ラグジュアリー感」も出ています。
 自分のコーディネートをユーザー同士が自由に掲載できることで顧客同士の繋がりが増えた結果、企業と顧客の間に「フレンドリーな関係」を築くことができました。
誰でもウェルカム」という温かい雰囲気は、ソーシャルメディアを駆使したからこそ手に入れられた、これも今までにない新たな価値かもしれません。

 「BURBERRY JAPAN」は、2015年1月にLINE公式アカウントを開設し、2月にはLIVE CAST機能を利用して2015年秋冬コレクションをライブ配信しました。
 また、2015年9月から本格展開するメイクアップコレクションを販売し、LINE以外の企業が、公式アカウントによる集客とLINEのEC機能を連携させて販売する初の試みとなりました。
 更に、米Appleとの提携ではApple Music内に専用のブランドチャンネルを開設し、「BURBERRY」がフィーチャーする英国の若手アーティストや、ランウェイショーで使用した楽曲、チーフ・クリエイティブ・ オフィサーのクリストファー・ベイリーがセレクトしたアイコニックなプレイリストなどが公開されています。

 近年ではその知名度だけでなくデジタル戦略全ての取り組みにおいて、他のブランドには無い目覚ましい躍進を見せています。
 このように、有名ブランドや大手企業であれば躊躇してしまうような、斬新で大胆な作戦を見事に成功させたのは、現代の人々が重視する「つながり」や「ライブ感」を提供し、顧客を惹きつけたことにあると言えます。

2.ソーシャルリテールストア

(出典:Inside Retail Asia youtubeより)

 「BURBERRY」は、2021年7月、ブランド初となるリアルとSNSを融合した「ソーシャルリテールストア」を、中国・深圳市のショッピングモール「深圳湾MIXC」にオープンしました。
 新店舗のコンセプトは「WeChat」を運営する「テンセント」と共同で考案し、「WeChat」のミニプログラムを通して限定のコンテンツやパーソナライズされた購買体験を提供し、オンラインとオフラインのシームレス化に成功しています。

 ミニプログラムでは、店舗や併設しているカフェ兼コミュニティスペース「トーマス・カフェ」の予約、イベントやストアツアーの参加などのサービスを用意しており、顧客は「BURBERRY」とのエンゲージメントを深めていくと「BURBERRYソーシャル通貨」が与えられ、通貨が貯まるとエクスクルーシブな画像やムービーを受け取れるほか、カフェで特別メニューの注文ができるようになります。

 店舗面積は539平方メートルで、チーフクリエイティブオフィサー、リカルド・ティッシによるブランドシンボルをテーマにしたコンセプトが異なる10の部屋で構成されており、2020年秋冬コレクションのランウェイにインスパイアされた鏡張りの部屋では、創業者トーマス・バーバリーのイニシャルをモチーフにしたモノグラムが来店客の身体の動きにあわせて形を変える仕掛けを用意しています。
 店内には3つのフィッティングルームを設置し、プレイリストから好みの曲を再生しながら試着を楽しむこともでき、
トーマス・カフェでは、英国と中国のお茶文化を反映したメニューを提供しており、食器にはブランドの世界観を表す自然やアニマルキングダムの要素を取り入れています。
 定期的にワークショップや展覧会、ライブパフォーマンスなどを開催したり、アプリを活用して、楽しみながらブランドとの交流を深めて、ロイヤル化につなげる店舗体験を提供しています。

 「BURBERRY」は「顧客の体験を変える」ことを新たなコンセプトに、それに基づく新店舗の開設を進めています。

3.環境保護活動

(出典:Avery Ward youtubeより)

 また、「BURBERRY」は、社会貢献や環境保護活動を強化しています。
 2021年6月には、2040年までに「クライメート(気候)ポジティブ」(カーボンネガティブ)なブランドとなることを目標に掲げた計画を発表し、実現に向けてバリューチェーンの見直しを行い、排出量を2030年までに46%削減すること、2040年までにネットゼロとすることを目指しています。
 更に、LGBTQ+の若者たちを支援する英国の慈善団体アルバート・ケネディ・トラストをはじめ、複数の団体に寄付を行うなど、多様性と包括性の実現に向けた努力も継続しています。

 2021年11月には、環境保護活動の一環として生物多様性戦略を発表しました。
 生物多様性はCOP26の主要な話題となっており、期間中に具体的なアクションプランを示すことで国際社会にアピールしました。
 ファッションビジネスにおける生物多様性の基礎評価を実施し、その結果、生態系への影響が大きい要因をレザー、カシミア、ウールと特定し、同社のカーボンフットプリントにおいてもこれらが高い割合を占めていることを明らかにしました。
 その結果を受け、「自然に基づく解決策の原則とガイドライン」を策定し、2020年に設立した「BURBERRY再生基金」を通じて支援するプロジェクトに適用して、自然生態系の保護、回復、再生を目指しています。
 また、非営利団体セイボリー研究所のプログラムを通じて、レザーのサプライチェーンにおける放牧地の再生と、そこに住む人々の生活基準の向上にも取り組むとのことです。

 更に、自社のサプライチェーン以外の再生プロジェクトにも資金を投じており、LEAF連合に加盟しました。
 同連合は、2030年までに熱帯林伐採を削減、終息させる取り組みを加速させるために設立された官民連合体でラグジュアリーブランドとしては同社が最初の加盟となります。
 「BURBERRY」会長であるジェリー・マーフィーは、「気候変動は、将来の環境リスクであるだけでなく、現在世界中の何百万人もの人々に影響を与えている社会経済的な危機でもあり、自然を保護し、回復させ、再生させることは、次の世代のために地球を守るための鍵で、私たちは野心的な意図を持ち、行動を重視したアプローチをしなければならない」と述べています。

4.最後に

(出典:Burberry youtubeより)

 「BURBERRY」は、いち早くデジタル化を進め、オンライン、店舗、モバイルの顧客など、すべてを同等に扱ってきました。
 デジタル戦略によって、「BURBERRY」をラグジュアリー・ファッション分野のトップだけではなく、業界全体のトッププレイヤーとして成長させ、Apple、NikeやGoogleなど、業界を代表する企業と同様に、デジタル知識が豊富なブランド企業として確立してきました。

 デジタルトランスフォーメーションとファッションテクノロジーは、この10年間、ファッション業界の話題の中心となっていますが、ファッションブランドがデジタル化を受け入れ、主要なイベントに活用することがいかに重要であるかを多くの人が実感したのは、Covid-19の大流行が始まってからのことでした。
 テクノロジーは、遠隔地で働くチームや部署間の社内ワークフローを加速・最適化するだけでなく、ブランドが世界中の消費者とつながり、通常通りのビジネスを継続するための手段を提供しており、デジタル化されたツールにより、ブランドはキャンペーンやイベントに関するデータを収集し、メディアやインフルエンサーとのパフォーマンスに関する重要な洞察を得たり、競合他社とのベンチマークを行ったりすることが非常に容易になりました。

 今後は、メタバースでの新しい展開など、デジタルの世界での「新しい顧客体験」に加え、リアルにおいてもデジタルの世界と同じような体験が出来る「新しい顧客体験」が出来るようになり、従来とは違った店舗と顧客の関係が出来てくるのではないかと思います。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。          
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