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降りたことのない駅から(個人ZINEの試作)

降りたことのない駅から

降りたことのない駅から始めよう、と君は言った。

こんな世の中だから、遠くにはいけないけれど、
降りたことのない駅へ行こうよと

降りたことのない駅、うん、悪くないかもね
2駅くらい先の駅を選ぶ

初めて駅前のロータリーを出た時
同じ市内なのに新鮮な風を感じた

僕らははじめての駅前のはじめてマクドナルドで朝マックをした
エッグマフィンセットにコーヒー
いつものメニュー
はじめてが少ない世の中だから、僕らは出会った頃の感覚でたわいもない話をした
そこには知らないはじめての君が見えたし
そこには知らないはじめての自分を発見した

僕は最近読んだ、星野道夫さんのエッセイの話をした
アラスカの情景を浮かべて話した

彼女は静かに聴きながら
自分も読んでみたいと言った

だからこの駅から始めたかったの
だってこの駅から、アラスカまで行けたんだから
アラスカにはマクドナルドはあるのかしら
と君は言う
それは確認してみたいな
と君は言う
googleで検索するのはやめておいて
あるといいねと僕は言う

マクドナルドを出て僕らはスマホをみることもなく、旅人のように
駅から歩く
心地よい風が吹いている

通りにはじめてみる小さな書店がある
本の香りがする
そういえば最近はAmazonばかりで購入していたなと思う

静寂の中で
君は古本の中から星野道夫さんの「旅をする木」を選んだ

降りたことのない駅に降りて、僕らはアラスカに向かっている
そこにはだれも邪魔が入らない
ぼくらだけの場所

そう、こんな世の中だからさ、降りたことのない駅から始めよう
そしてもうはじまってるのさ
いろんな素敵なことが
ありがとう
そう、降りたことのない駅から始めよう


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