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時価総額加重平均をアセットクラスへ拡張したい【全文無料】

個人的なメモ用。いつか改めて整理したい。
(全文無料範囲です。良かったら投げ銭ください)


やりたいこと

時価総額加重平均を株式以外を含めたアセットクラスで拡張したい。

時価総額加重平均 資産価値付けモデル(CAPM)が成り立つと仮定すれば、時価総額加重がベストであると仮定できる。時価総額に基づいてアセットのウエートを決めるため、過去のリターン&リスクに関するデータを使わずに済む。
CAPM 「金融市場の全てのリスク資産の時価総額加重平均ポートフォリオを考えることが効率的なポートフォリオ(接点ポートフォリオ)である」とされる。

課題

異なるアセット同士を時価総額で比較できるルールを作る必要がある。

投資対象の例
ヘッジファンドやプライベートエクイティはあまり機会がないのでグレーアウト

株式のみに限定して言うと、インデックスに連動するパッシブファンドがある。アセットを株式に限定して国や地域、範囲をパラメータ(S&P500、全米、オルカンなど)とした議論はよく見かけるが、アセットクラス方向での拡張はあまり議論されない印象。

試み 

指針:米国という「国」を1つのカゴと見なしてモデル化してみる

国家の資格要件から考えてみる。モンテビデオ条約にて国家は以下の4つの要件をもつ法人格とされている。

  • 永続的住民

  • 明確な領域

  • 政府

  • 他国と関係を取り結ぶ能力

このうち「他国と関係を取り結ぶ能力」は一般的には「政府」が持つ1機能と言えそうであり、実体を伴う要素は「住民」「領域」「政府」と言えそうである。そこで、実体を伴う要素については以下のような資本と紐づけてみる。

国家の資格要件と、それに紐づけできそうなアセット

住民→人的資本⇔株式 住民がいるということは生活を営む上での労働力という資本がある。そこから連想すると、その労働から生じる価値を交換する主体がいて、それを経営する法人格が存在すると言えそう。
領域→不動産⇔コモディティ 領域があるということはそこにある土地が資本となる。そこから連想すると、その土地からとれる資源もあると言えそう。
政府→債券⇔ゴールド 政府があるということは資金を担保する債券があり、その流通で紙幣価値を他国間で調整する能力を持つ。そこから連想すると、国外の紙幣価値を調整する金資本(ゴールド)も存在すると言えそう。

このモデルで考えると、1つの株式会社という法人格に投資するのと同じように、資本主義を成り立ちにおく米国という1つの法人格(国としての仕組み)に投資することができる。上記のモデルのもと、各アセットクラスの時価総額に関する情報を調査した。


株式

既に時価総額加重は存在するので問題なし。米国に限定した場合の代表的な指数はCRSP米国総合指数、投資先としてはVTIが存在する。

時価総額は以下を参考とする。2024年1月時点では約$48.5T


債券

米国国債の既発債に限定して考えることとした。

時価総額は以下を参考とする。2023年11月時点では約$26.3T


不動産

米国REIT業界の時価総額で考えることとした。

時価総額は以下を参考とする。2023年12月時点では約$1.4T


コモディティ

時価総額加重のコモディティインデックスとしては、S&P GSCI商品指数がある。時価総額としては米国の石油天然ガス企業の時価総額を基準に考えることとした。

時価総額は以下を参考とする。2024年1月時点では約$4.0T。(GSCIのエネルギーエクスポージャ比率が約59%、石油天然ガス企業の米国限定での時価総額が約$2.4T)


ゴールド

ゴールドの時価総額と米国中央銀行が外貨準備の一部として保有する金の量で考えることとした。GSCIにも貴金属は含まれるためそれでの不足分を補完する。(正確には、貴金属と工業用金属のエクスポージャ比率分をゴールドと見なし、それに対する不足分とした)

時価総額は以下を参考とする。2023年12月時点では約$3.4T。(ゴールドの時価総額が約$13.8T、米国シェアが約24.5%)


人的資本

米国の個人消費はGDPの約7割を占め、個人消費の動向が経済全体の動向を左右する。また、世界全体のGDPの約17%を占めており、過去においては世界同時不況からの脱却をけん引するなど世界経済に大きな影響を与えてきた。そこで、その購買力を資本と見立てて考えることとした。

個人消費の動向は、小売売上高を通じて、ある程度把握することができる。GDPの個人消費の内訳は、財の消費が1/3程度、サービスの消費が2/3程度。サービスの消費には医療費など景気変動に影響を受けにくい項目が含まれる。

財の消費の中でも全体に占める売上高の割合が最も大きい「自動車及び同部品」部門は、販売店のセールなど景気と直接の関係がない要因による月ごとのブレが大きいこともあり、自動車を除いたコア部分の注目度が高い。

そこで今回は、変動を受けにくい「医療+衣食住」に関連したものに着目することとした。サービス、非耐久財、耐久財の上位2項目の抽出を基本とし、そこから「自動車・同部品」を除いて代わりにサービス消費の「金融サービス、保険」を適用した。
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/economics/intro-usa/20131010_007776.pdf
https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa09-02/pdf/s2-09-1-3-5.pdf

時価総額は以下の27カテゴリーを参考とする。2024年1月時点では約$13.8T。(計上は米国企業に限定し、重複を除く。この値は実質GDP約$20.4Tと個人消費(対GDP比)67.5から算出できる個人消費の概算値(2023年12月時点)と概ね一致する)

【医薬品、医用品等】
https://companiesmarketcap.com/healthcare/largest-healthcare-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/medical-devices/largest-medical-device-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/scientific-and-technical-instruments/largest-scientific-and-technical-instrument-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/pharmaceuticals/largest-pharmaceutical-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/genomics/largest-genomics-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/biotech/largest-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/crispr/largest-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/medical-equipment/largest-companies-by-market-cap/
【医療サービス、保険】
https://companiesmarketcap.com/diagnostics/largest-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/medical-care-facilities/largest-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/telehealth/largest-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/insurance/largest-insurance-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/drugstore/largest-drugstore-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/gene-therapy/largest-gene-therapy-companies-by-market-cap/
【衣食住】
https://companiesmarketcap.com/clothing/largest-clothing-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/footwear/largest-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/food/largest-food-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/beverages/largest-beverage-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/dairy/largest-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/consumer-goods/largest-consumer-goods-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/home-and-kitchen-appliances/largest-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/real-estate/largest-real-estate-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/reit/largest-reits-by-market-cap/
【インフラ】
https://companiesmarketcap.com/electricity/largest-electricity-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/utility-companies/largest-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/telecommunication/largest-telecommunication-companies-by-market-cap/
https://companiesmarketcap.com/infrastructure/largest-infrastructure-companies-by-market-cap/


まとめ

米国に限定して時価総額加重でのアセットアロケーションを検討した。アセットクラスは国家の資格要件からの類推で選定し、時価総額のデータ収集先をピックアップした。2024年1月時点での時価総額は以下のようになった。

アセットクラスの時価総額と時価総額加重での比率
[*1] ゴールドはGSCIの貴金属+工業用金属で不足する分を補う比率として算出
モデル化の全体像

オルタナティブに対する具体的な投資対象としては下記が挙げられる。
・iシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジなし)
・iシェアーズ コモディティインデックス・ファンド
・eMAXIS 米国リートインデックス
債券には「米国国債 米ドル建ストリップス債券」の長期債を投資対象とした。
人的資本として、人々にとって必要不可欠であり不景気のときの守備的産業とされるヘルスケアセクター(XLV)を、しばらくは投資対象とすることにした。

人的資本、債券、オルタナティブに対する具体的な投資対象としては下記が挙げられる。人的資本としては人々にとって必要不可欠であり不景気のときの守備的産業とされるヘルスケアセクター(XLV相当)を投資対象とすることにした。

  • JPMグローバル医療関連株式ファンド

  • iFreeHOLD 米国国債(T-Zero2044)

  • iシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジなし)

  • iシェアーズ コモディティインデックス・ファンド

  • eMAXIS 米国リートインデックス


なお、このポートフォリオをポートフォリオビジュアライザで比較すると以下のようになった。(リンク先)
リターンとしてはVTIのみの場合よりは低下しているが、シャープレシオとソルティノレシオの改善は見られた。また、類似のポートフォリオとしてオールシーズンズ戦略と比較するとリターンとシャープレシオともに改善が見られた。

2006年8月~2023年12月での比較
(GSGの有効データ期間が律速)
比較対象としてVTIとオールシーズンズ戦略を表示
ポートフォリオ比率は上記算出結果にて固定としている

さらに、やや恣意的であるが、長期期間での比較ができるように各アセットの上位比率銘柄のみを抽出して比較すると以下のようになった。(リンク先)
約30年で比較するとリターンとシャープレシオともにVTIのみよりも改善が見られ、Max. Drawdownでも下落率が軽減していることがわかる。定性的ではあるものの、時価総額加重によるポートフォリオは株式に限らず有効である可能性が示唆された。
(なお、厳密に比較するのであれば、時価総額の変動に合わせてポートフォリオ比率も本来は変化させるべきであるが、その点は今後の課題である)

1992年5月~2023年12月での比較
(VTSMXの有効データ期間が律速)
比較対象としてVTIとオールシーズンズ戦略を表示
ポートフォリオ比率は上記算出結果にて固定としている


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