あなたの一番好きな本は何ですか?

「好きな本は、その人の知性と教養のレベルを知る上での重要な指標になる」
僕は昔、ツイッターでこう書いた覚えがある。

知性と教養が文章や話し方に現れるというのはよく言われていることだが、これは手間と時間がかかる。そこで、もっと手っ取り早い方法はないかと考えたところ、好きな本を尋ねるのが良いのではないかという結論に至った。

そう考えた理由は2つある。

1、人は読んだ本から語彙や表現や文章構成の力を吸収することが多い。

2、どのような本を面白いと思うかで、その人のレベルがわかる。

1はなんとなくわかるのではないだろうか。幼稚園児向けの絵本ばかり読んでいた人が突然、高校生レベルの語彙力、表現力、文章構成力を発揮することはまず無いだろう。特に文章構成力に関しては、他者との会話からだけでは限界がある。

2は少し深く掘り下げる。まず、本を楽しむには
・その本で使われている語彙を知っており
・その本で使われている表現を楽しみ
・その本の論理を理解する
必要があると思う。加えて、その本を一番好きだというには、その本で描かれている人間模様なり時代背景なりを自分のことのように想像し、把握できるだけの、素地としての人生経験が必要ではないかと思う。
このように、本から得るものや、本を楽しむために必要なものが、知性や教養に直結しているからこそ、僕は「好きな本は、その人の知性と教養のレベルを知る上での重要な指標になる」と考えるのだ。

もちろん、本以外にも知識の源泉がある今の時代、上記の1が当てはまらない人も少しはいるかもしれない。だから、僕は今回の持論において断言を避けている。

大学一年生の頃、教授が学生一人一人に好きな本を聞いて回ったことがある。その時の回答はこんな感じ。
学生A「罪と罰」
学生B「檸檬」
学生C「カラマーゾフの兄弟」
学生D「異邦人」
学生E「アルジャーノンに花束を」
学生F「人間失格」
学生G「坂の上の雲」
学生H「金閣寺」

(他は忘れた)

上記のA〜Hの中の1人は僕なのだが、どれかわかるだろうか。
にしても、大学1年生に聞いた時の回答がこれである。僕はそこそこのドヤ顔で答えた覚えがあるが、周りのレベルが思いのほか高く、赤面したのを思い出す。

その時、僕は思った。「ああ、やっぱりハイレベルな人はハイレベルな本を読んでいるんだな」と。
※これを自慢と捉えても結構だが、僕は内実、自慢する気はない。以前から早大卒だということは書いているし、ある程度の学力の持ち主しかクラス内にいないことは自明だろう。そして何より、僕がドヤ顔で回答した本は、このクラスの中ではごく平凡な本としての位置付けだった。その衝撃が大きかったからこそ、何年も前のわずか20分ほどの出来事を、未だに忘れられないのである。もはや、自虐の方が強いかもしれない。


なるほど、一理あるなと思った人は、試しに周囲の人に好きな本を聞いてみるといいかもしれない。その人の知性や教養のおおよそのレベルがわかるだけでなく、他人が一番好きとまで言う本を知ることができる。

※ただしたまに、めちゃくちゃ頭がいいのに「本を読んだことすらない」人がいたりするので、あくまでも参考程度にしてほしい。「一番好きな本? ○○(小学生でも読める話)かなー」と答えた人を、それだけで「ダメだこいつ」と決めつけないように。一つの指標として有用なだけで、好きな本一つでその人の知力を計ることはできない。(もしそれができればIQテストなんて不要になるもんね)

お金に余裕のある方はもし良かったら。本の購入に充てます。