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首を振ることの重要性

サッカーにおいて、「首を振ること」は本当に重要である。(縦に振るんじゃないよ。横に降るの。つまり、周りを見るってこと。これも別に、イヤイヤの意味じゃないからね。)

イニエスタやピルロなどの頭が良い、視野が広い選手は、頻繁に首を振る。嘘だと思ったらイニエスタに注目してヴィッセル神戸の試合を観てみてほしい。寝違えるんじゃないかってくらい頻繁に首を振るので。

そもそも、サッカーというスポーツは20人(近年はゴールキーパー含む22人)があちらこちらを始終動き回るのだから、周りを見ないと最適な状況判断なんて出来やしない。
なのでむしろ、首をあまり振らない選手はどうやってサッカーをしているのか? と疑問に思っている。
※日本人選手が「判断が遅い」「ボールをもらってから、どうするかを考える」と言われて久しい。近年はそうでもないが、一昔前は日本代表ですらこうだった。これも結局は、常に周りを確認していないから起こるのだろう。

サッカーをやっていた頃、よく「蓮ってなんでノールックであんなに高精度のパス出せるの?」とチームメイトに聞かれた。
当時は「感覚的なものだよ(ドヤッ」と答えていたが、今思えば僕は無意識のうちにかなり首を振り、常に周囲の状況を確認していた。
周囲の状況を常に把握していたからこそ、ノールックで味方にパスを出せたのだろう。
周りから見れば「テキトーにとにかくボールを蹴ってる」ように見えて、実は本人の中に「ここに蹴れば味方に届くはず」という確信があるのだ。(まあ正直、本当になんとなく蹴ったりとか、もはやミスキックでしかないものが、たまたま絶妙な縦パスやスルーパスになったりしたことはある)

ディフェンダーの場合、周りを頻繁に確認していれば、岡崎慎司やファン・ウィジョのような、オフザボール(ボールを持っていない時)の動きが良い選手をフリーにすることも大きく減る。首振りはディフェンダーには必須だ。(これが出来ないディフェンダーは岡崎慎司やファンウィジョからすれば小学生のようなものだ。) 
さらに、ノールックパスも出しやすくなる。(周囲の敵味方の位置情報を事前に把握しているので、パスを出す方向を見る必要がない)

もっとも、「首を振って周囲を確認したとき」と「実際にパスを出すとき」の間の数秒で周囲の位置関係は変わる。それゆえ、最終的には位置関係のズレを想像して修正する力が必要になる。そりゃあ、「周りを確認しさえすればノールックパスが出せる」なら、苦労はない。みんなノールックパスを出しまくりだろう。

何を隠そう、僕はこの想像力に恵まれていた。
「なんだよ、重要なのは位置関係のズレを想像する力で、僕はそれに恵まれてましたって自慢かよ」と思うかもだが、そうではない。
ノールックパスに限らず、頻繁に首を振ることの大切さを書きたいのだ。そもそも頻繁に首を振っていないと、自分に位置関係のズレを想像する力があるかすらわからない。
※ノールックパスは「予測しづらいパス」なので敵にとって脅威ですが、味方にとっても「反応が遅れる」ことがあります。そして何より、成功率がさほど高くない。むやみやたらとノールックパスをするのはやめましょう。イニエスタは無駄にノールックパスをしないでしょう? (ロナウジーニョはしてたけど)。そこらへんの判断力も大事。

さて、首を振ることの大切さがわかっていただけただろうか。

以前スーパーサッカーにイニエスタが出演した際、MCの加藤浩次が「イニエスタさん、どうしてあなたは後ろが見えているかのような動きをできるんですか?」と質問していた。イニエスタはこれといって明確な答えを出さなかったが、僕は「首を振ることで常に周囲の位置関係を把握しており、その後いざ自分がボールを持った時にはどのように位置関係がズレているかを想像できるから」だと思っている。わかりにくい人は下にテキトーな具体例を書いたので読んでみてほしい。

例:
前半15分30秒……イニエスタは首を振って敵味方の位置関係を把握した!
前半15分35秒……イニエスタはボールを受け取った! しかしこの時、周りの位置関係は変わっている。5秒間も敵味方が動かないはずがない。時間停止物のAVじゃないんだから。←

僕は思う。イニエスタは、この5秒で生じた位置関係の変化を、想像できるのではないかと。
言い換えれば、5秒の間に周囲の選手5〜6人がどう動いたかを、頭の中で推測できるのではないかと。
だから一瞬の判断でノールックパスを出せるし、ヒールパス(かかとでボールを蹴るパス)もほとんど成功させるし、後ろから相手選手が迫ってきても「分かっていたかのように」あっさりとかわす。

※月とスッポンくらいの差があるとはいえ、前述の通り、僕も周りの位置関係の変化を想像するのは得意だった。「テキトーに蹴っているようにみえてパスが全部味方に繋がっている」と賞賛されたこともしばしば。
これを極めたのがイニエスタだと思う。

さらにいえば、イニエスタはチームの攻撃の形を作ることも考えている。ただ「ノールックパスをバンバン通すよ!」というわけではないのだ。
周囲の位置関係を正確に把握し、数秒後自分がボールを持った時にそれがどう変化するかを想像・予測する。そしてそれを利用して、味方をも欺くまさかのタイミングでまさかの場所に完璧なパスを通す。
これを、攻撃のアイデアを考えながら行なっているのだ。

それが、タイトルにもある「イニエスタの凄さ」だと思う。

余談(?) 
個人的にこの点で期待しているのが、17歳の久保建英だ。彼はフォワードの選手なのでゲームメイクにはそれほど関わらないが、メッシのように時々そのセンスを見せつけることがある。イニエスタばりの意表をつくパスも出せる。そしてさらに、判断が速い。17歳であれだけ出来るのだから、順調に成長すればイニエスタのようになれるポテンシャルは十分にあると思う。

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