森保ジャパンへの批判に一言言いたい (一言ではない)

「Mのチームの戦術はカタールに見破られてしまった。」
「Mのチームには戦術がない。」

星新一のショートショートのような文体になっているが、もちろんMは森保一、通称「はじめちゃん」のことである。(金田一少年の事件簿)
前者はアジアカップ決勝での批判、後者は昨今の批判だ。
戦術がある、戦術がない、…CMの吉高由里子ですかと言いたい。

少し補足すると、アジアカップではご存知の通り、いわゆる戦術マニアの方々が森保ジャパンの戦術や決まりごとを細かく分析していた。そしてその戦術はカタールに見破られ、攻守共にコテンパンにやられてしまった。

戦術マニア>プロフェッショナル?笑

これを見ていた僕の頭には、少し過激な発想が浮かんだ。
そもそも戦術マニアたちに把握されるような戦術を、プロが見抜けないわけなくね?
プロフェッショナルはプロフェッショナルなのだ。代表チームを任されるような人たちなのだ。侮ってはいけないと思う。

ここで、「じゃあ森保は戦術マニアに把握できないような戦術を考えればいいだろ。それこそがプロフェッショナル、ケイスケホンダ」と思う人がいるかもしれない。しかしそうなると今度は、各方面から「戦術がない」と批判されるはずだ。なぜなら、誰も見抜けないから。

今の森保ジャパンが、「戦術がない」のか「素人には見抜けない難解な戦術がある」のかはわからない。おそらく前者だろう。しかし…

クラブチームを引き合いに森保ジャパンをディスる人の謎

戦術マニアの方々を見ていて一番違和感を覚えるのが、森保ジャパンを批判する引き合いに、マンチェスターシティやリバプールのようなクラブチームを出していることだ。

はっきり言って、クラブチームと代表チームを比較するのは無理がある。クラブチームと代表チームには、三つの大きな違いがあるためだ。

1、練習期間の差

クラブチームはいつも皆で練習できる。そのため、簡単には見破られない複雑な戦術をインプットできるし、見破られた時のために第二の手、第三の手を考えて植え付けることも容易である。しかし、代表チームが皆で練習できるのはせいぜい1〜2週間だ。その間にインプットできるのは、基本的な戦術に限られる。そして①そのような基本的なものは、アジアカップでカタールにやられたように、簡単に見破られてしまう。

2、選手の層の差

戦術に合わせて必要な選手を獲得できるクラブチームと違い、代表チームはその国にいる人材のみでチームを作らなければならない。そう、いくら素晴らしい戦術を考えたところで、それを遂行でしる選手がいなければどうしようもないのだ。だから自然と、組めるシステムは限られる。②手の内が限られているのだ。

3、真剣勝負の割合の差

クラブチームは、プレシーズンの数試合を除き、毎試合が真剣勝負だ。なので、「手の内を明かすわけにはいかない」なーんて言っていたら降格する。一方で代表チームは、真剣勝負が少ない。大半が親善試合か、楽勝アジア予選だ。そして多くのサッカーファンはザックジャパンの教訓から、「アジア予選や親善試合で手の内を晒してはいけない」ことを学んだだろう。
要するに、クラブチームと代表チームには、手の内を明かして戦う試合数に大きな差があるのだ。言い換えれば、クラブチームはしょっちゅう手の内を明かすが、代表チームは滅多に明かさない。なので、シティやリバプールの試合と昨今の日本代表の試合を引き合いに出して「戦術が〜」と言ったところであまり意味がないのである。そんなに比較したければ、せめて日本代表の真剣勝負(アジア最終予選あたりから)で、やるべきだ。
(あっ、今度開催されるE-1杯は真剣勝負には入りませんよ。控え組中心で挑む大会なのでね。日韓戦だからって熱くなりすぎないようにね。)

むしろ、今のうちから戦術がある方が怖い

太字部分①、②からも分かる通り、代表チームは複雑な戦術をインプットできないし、手の内も少ない。だから僕は、今のうちから素人でもわかるような明確な戦術があったら、逆に危険だと思っている。そんなものは簡単に分析されてしまうし、かといって選択肢が限られているから次の手も少ないし、何よりインプットに時間がかかる。そして、肝心の試合で何もできなくなる。
ザックジャパン「ほんまそれ」

韓国代表との比較

余談だが、韓国代表はパウロ・ベント監督のもと、戦術マニアの方々が喜びそうなサッカーをしている。日本代表に比べて形が明確だし、目的もはっきりしているし、知的だ。日本のような意味のわからないカオスサッカーはしていない。
しかしその韓国代表は、アジア2次予選で絶賛大苦戦中だ。厄介なグループに入っているのは事実だが、それにしても… ソンフンミンというワールドクラスの選手がいるのに… という感じである。
対して日本代表は、クソみたいなサッカーをしながらも順調に全勝街道を突き進んでいる。大黒柱の大迫や、攻守で大きな力を発揮する冨安がいないことを考えれば、よくやっていると思う。

このことからもやはり、側から見て「やりたい事がわかる」チームは、本気でプロフェッショナルに対策されれば簡単に封じ込められてしまうのかなと思うのである。✌︎('ω'✌︎ )

(なお、これを解決するには、カタールのように代表チームをクラブチーム化するのが一番楽である。しかしそれは、代表選手たちを国内の一つのチームに閉じ込めることになり、非常に不健康である。カタールもそのうち上手くいかなくなると思う)

強豪国は戦術が明確だ!という意見について

ロシアW杯のイングランド代表などを引き合いに、「強豪国は戦術がある!」「強豪国はチームの方向性もやりたい事も明確だ」と宣う方々がいる。
しかし僕は「なんだかなぁ」としか感じない。

だって、考えてみてくれよベイビー。
強豪国は個の力が圧倒的だろう?だから極端な話、戦術的に完全に封じられても、なんとか勝てちゃうのさ。これは日本代表がアジア2次予選でやっていることと同じだよぁボブ!(まあ日本はそもそも戦術がないんだけど)
誰がキーマンで、どんな攻撃をしてくるか。それがバレバレでも、強豪国なら心配ない問題ない。W杯のイングランド代表(鬼畜セットプレー)やフランス代表(ムバッペ)のように、個人のパワーで打開できるからだ。

だから、強豪国を引き合いに出して森保ジャパンをディスるのも、違う気がする。日本の個の力はまだまだ世界的に見たら中位レベルだから。

個人的に森保一に言いたいこと

もちろん、僕も森保一に言いたいことはある。まず、鎌田大地をセンターフォワードで起用するのはやめてほしいということ、中島は中央の選手で、南野はサイドの選手だということ、所属クラブでろくに試合に出ておらず、柴崎と違いいくらでも代えが効く遠藤航を、真剣勝負で起用しないでほしいということ、ゴールキーパーは中村航輔にしてほしいということetc…
あと昨日大島を使わなかったのはマジでワロタし、能力には疑問もある。しかし、それにしても昨今の批判的潮流はいかがなものかと思う。

おわりに

何やら戦術マニア界隈に喧嘩を売るような内容になってしまったかもしれないが、僕はかの界隈をリスペクトしているつもりだ。プロでもないのにあんなに戦術に詳しいのは素直に凄いと思うし、よく参考にさせてもらっている。
僕は今回、あくまで客観的に、「戦術マニアに見破られるような戦術に意味はあるのか?そんな戦術なら無い方が良いのではないか?」「戦術マニアはプロフェッショナルよりもサッカーに詳しいのか?森保一を無能だと言ってYouTubeでネタにするほど詳しいのか?」「そもそも比較対象がクラブチームっておかしくないか?」と、疑問を投げかけた次第である。
…だってネット界隈では、素人の意見がやたら力を持つじゃないですか。ヤフコメとかはキモすぎるから見ていないけど、Twitterもなかなかのものよ。「お前は一体何様なんだ」とツッコミたくなるようなツイートでいっぱいよ。

それと一つ、勘違いしてほしくないことがある。僕は別に森保一のファンでもなんでもない。
森保一の代表監督就任が報道されたときは「マジかよやめてくれ」とか書いていた覚えがある。監督として好きな部類に入る人ではない。ただ、ハリルホジッチから欧州のスタンダードを学ぼうと積極的に話しかけたり、試合中に熱心にメモを取っている姿を見れば、彼が生半可な気持ちで責任重大な仕事に臨んでいるとは思えない。昨日のベネズエラ戦には、主力を出さなければ敵わないと知りながら、負担軽減を優先して控え組中心で臨んだ。センターフォワード、セカンドトップ、ディフェンスラインが全員控え組。あれだけ普段と違えば、仮に普段からやりたい事が明確であっても混乱するだろう。

いろいろな意見があるのはわかるし、「田嶋幸三は一連の責任を取って辞任しろ」には大賛成だ。しかし、ネットで共感の風を受けて過剰に膨らんだ森保ディスは異常だと思うし、あのディスの主語たちが森保よりもサッカーに詳しいとは全く思わない。だからこの記事を書いたのである。

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