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ふたたびの妊婦スイッチが切れた日

【ご注意】
この記事には流産についての記載がありますが、はすじろう個人の感覚による記録であり、医学的にも、心情的にも他の参考には全くなりません。私の思考回路について不快に思われることがあるかもしれません。それでも興味があればお読みください。

「これは残念ながら流産ですね」

5年ぶりの妊娠、8週目の検診では心拍が確認できていたが、前回と比べて生育が順調でないのは気になっていた。10週の検診直前に茶色い出血があり、正直嫌な予感はしていた。
ネットの海を彷徨っていて、どうやら「9週の壁」と呼ばれるものがあると知った。8週目までは心拍を確認できたのに…ということは、そう珍しいことでもないようだ。ツイッターに呟いたら、たくさんのフォロワーさん達が温かい言葉をかけてくれた。似たような経験をした方が多くて驚いた。
珍しいことではない。私が何をしようが医者が何をしようが、避けようがない事だった。

下着についた出血を発見した時、もうすぐ4歳の娘はその場にいた。出先で2人一緒にトイレの個室に入っていた時だったのだ。彼女も私以上に、病院にいく前から不安を感じ取っていたと思う。

娘は、弟妹の誕生をそれはそれは楽しみにしていた。毎日毎日、赤ちゃんのおもちゃを作ると言って折り紙を貼り合わせてみたり、名前を考えてみたり。
診察に行った日、保育園から帰ってきた娘の第一声は「赤ちゃんどうだった?」だった。流産の説明をしたら「イヤイヤ…」と顔を伏せられ、さすがに泣いた。

手術は一瞬だった。
麻酔で眠ってたから体感としては当然なんだけど、時間的にも10分も経っていなかった。あっという間に終わった。

麻酔が切れて意識が戻りはじめ、「終わりましたよー」という言葉が脳に繋がったとき、私の「妊婦スイッチ」はぷつりと切れた。と思う。

妊娠発覚から約1ヶ月の間、思い描いていた「腹の子を含めた4人家族」の未来像が失われてしまったことは悲しいけれど、この子は、この子なりに人生を全うしたのだと、私は納得していた。期間は短かったけど、体は3センチにも満たなかったけど、両親に驚きと安堵を、姉に希望あふれる夢を、親戚たちに新鮮な喜びをもたらしてくれたことだけでも充分立派な人生だったと言えるのではないか。心からそう思えた。

狭いクリニックの中では、出産を控えた女性たちと看護師さんとのやり取り、生まれたての赤子の泣き声が見事に筒抜けであったけど、不思議と、悲しみや惨めさを感じるようなことはなかった。
複雑な思いになるのがむしろ普通だとは思う。これが初めての妊娠だったら気持ちは全く違ったかなとは思う。
でもこのクリニックは「流産手術をする場所」でもあるけど「長女を生んだ懐かしい場所」でもある。
カーテンを挟んだだけの隣からNSTのザーザーゴトゴト音が聞こえて懐かしかったり、手術台も帝王切開に続いて2度目だったので、「嬉しくはないけどお久しぶりね」みたいな気持ちだった。
辛くなったら嫌だなと思っていたので、あらゆる奇跡的条件を満たして出産に臨みゆく患者さんたちを、元患者の先輩の気持ちで応援することができてよかった。

そんなこんなで、妊婦スイッチは切れ、腹の中に子がいる重責から解放された私は、無事に日帰り入院を終えたのだった。術後の経過は良好。
短い期間ではあったけど、形には残らないけど、第二子を授かったことは、これからも家族や友人達の中で語り継いでいければいいなと思う。



※この後は、ゆるめの話題に移行しますよ


手術は診察の2日後でした。
とりあえず仕事は休めるだけ休むことにして、あとはとにかく安静。せっかくなので爆発的ヒット中の「鬼滅の刃」に手をつけることを即決。

元々漫画とか読み出すと没頭して他のことが手につかなくなるタイプなんで、産後は手を出さなくなってたんですよね。長編漫画。時間はある。動いてはいけない理由もある。異世界への没頭も許される。もう今しかないと思って!!
いやー、そして面白くて鬼滅の刃が。これは本当に我ながら良い決断でしたね!!!手術当日、出発直前まで読んでて重要書類持ってくの忘れたりしましたけど!!!!(ひどい)

手術当日は、朝診察、昼手術、夕方診察。それぞれの間はずっと待機。ひたすら待機。
そんな気はしてましたけどね。そう思って、病院用には小説を持って行きました。

横溝正史!これも読破したいんですよ。積読してるのが何冊かあって。おかげさまでだいぶ読み進められました。

なんか人が死ぬ話ばっかり読んでますね?でもそのくらいが現実味なくていいんですよ。ナマナマしいリアルな話の方が辛いからちょうどいい。時代物ってとこも異世界感あっていいんですよね。

そんな経緯で私は、炭次郎を心に、金田一耕助を片手に、手術に臨んだのでありました。
私が色々割り切れているのは、この書籍たちの影響で生死の感覚がぶっ飛んだおかげもあるかと思います。そんなことはないか。

以上、全く参考にならない流産手術レポートでした。お付き合いありがとうございました。

はすじろう


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