ねじけ者

全てにちょうどいい駅前
繁忙の昼間は適度に喧騒だった
現状では六人待ちのレストランに行く
軽薄なバインダーに挟んである紙は「名を記せ」という
殿
とだけ書いた
ウエイトレスの訝しんだ表情がおもしろかった
すると意外にも、書き直してくださいと言われた
その反発に反発するべく

今度はそう書いた
ウエイトレスの困った表情がおもしろかった
つうかこの女可愛いなとか思った気がするが気のせいだ
殿は女を馬鹿みたいに抱けそうだが
王は品格を死守しなければならない
王と天皇は違う
ただそれだけのことを外人に伝えることは難しそうだ
目の前に立つ女はいまだ立ち尽くしていたが
やがて名乗りは受理された

社会不適合大陸の中心
虚言癖王国を統べる
天邪鬼国王
あの女よりもずっと綺麗な王妃を迎えて
満ち足りた生活
永遠に続く世界の延長線上
ただ
今こうやって書いていると
なんだか泣けてこなくもないが
今更でしかない
俺は
いつでもはははと哄笑し、利己を極め
邪智暴虐の王となるのだ
メロスなど
勝手に走っていれば良いだろう
そして出てゆけ
俺の國から