フリアイの翼

例えるとしたら、
それは拡張された膜だ
からだの暖かみなど押し潰して
冷たく膨らんだ気泡は、
肉でも骨でもなく
また、血の通った地点にもありえない
開け展かれた翼は、水面から切り離されるべく胸を張り、
湖面または海面、あるいはゴムボートが浮かぶ、
それなりに水が張られた、それなりに膨大な矩形を見据える
輪転
天下に置き去られた魂など
どうぞ好きに持ってゆけばいいだろう
私と、真っ黒なこの翼
抜け落ちゆく羽根さえも
少しづつ拾い集めてゆけば、ね
きっといくらでも見つかる、隔たりを残して落ちている
嫉妬と性愛が渦巻き
腐食の雨が降り頻る前には
何方かを仮宿に定め、
黒い花束に水滴を点すだろう