10年たった友へ
あれから10年、と1週間。連絡が1週間遅れて申し訳ない。
早いもんだね、10年だよ。
今日と同じように、少し蒸し暑くて晴れた日だった。亡くなったのは本当らしい、というOさんからの電話を受けて、一緒に働いていた後輩と手分けして、関係者に電話をしまくった。
みんな、絶対に一回めはボクの伝えている話を信じなかった。「ウソでしょ?」「またまたー、そんな冗談言っちゃって〜」。あの時の、ひとりひとりの反応がいまも忘れられない。あれこそが、君の「人となり」を現したものだったんだなあと思う。
青山葬儀場。
これが本当に、おれの友達の葬儀なのか? と思えるような、立派な、本当に立派な、ものすごい数の人に囲まれた葬儀に出ても、全くリアリティが湧かないし、悲しくもなかった。さいごのお別れのとき、長い長い列に並んで、やっと順番がまわってきたとき、きみの奥さんが言ったんだよ。
「はしもとくん、●●にさわってあげてね」
で、顔を触ったんだ。
本当に冷たかった。とても冷たかった。
その時に、本当にいきなり悲しさが込み上げてきて、涙が出た。自分でもびっくりするとほどたくさんね。
「魂」というものが、肉体の消滅とともに消えてしまうのだとするならば、生きてる間の「魂」というものの存在も怪しいもんだよな、と思う。だから、きっと魂というのは消えなくて、どこかに残るんじゃないかとボクは思っている。魂は、何度も輪廻して、いろんな「生」を生きるんだ、という話を読んだこともあるけれど、はたしてどうなのか。
なんだか、まだきみの気配あるから、どこからか見られてるんじゃないかと思うんだよね。
あれから10年経って、おれは50歳になった。果てしなく、もやもやと広がっていた「未来」というものはすっかり消えて「残り時間」という概念の方が強くなった。そんなかんじがわかるかな? こういう思いは経験してないだろ? だからその点は、おれの勝ち。
……で、最近どうよ?って?
あいかわらず、毎日締め切りに追われて、毎日催促されて、毎日謝っている。「寝れない自慢」を電話しあったあの頃と、残念ながら、全く、何も、変わっていないw
偉くもなってないし部下もいない。徹夜すると3日ぐらいは尾をひくし、輪をかけて集中力がなくなった。体力の低下とは毎日対峙しなければならない。目なんか、遠くも近くも全然見えないしなw 運転用に遠近両用の眼鏡を作った。
この歳で、こんなんでいいのか?と思うけれども、でも、いいんじゃないかと思っている。自分のやれることを、やるべきことを、やり続けることが大事。
自分の仕事を死ぬまでやり続けようとしている大先輩たちを間近でみているので、おれもまだまだやれると思う。っていうか、やらねば! 決して年齢や世の中のせいにして、言い訳してはいけない。
あれから4年後に、あのひとと結婚して、いまは奥さんと奥さんの娘と、猫2匹と、小さな庭のある家で暮らしている。おれ1人だけオスだという……w
犬もいいけどネコもかわいい。1匹はおれにだいぶ、なついている。個人事業主になってずっと家で仕事してるから、家事もやる。料理もだいぶ上手くなった。大根を切る音が、だいぶ「お母さん」っぽくなってきたし、煮物もできる。なかなかだろ?
ということで、また。
忘れたころに連絡する。