【シロクマ文芸部8月】②美しいもので心を埋めてやりたい
1カ月の全お題を使って一つの物語を作るチャレンジをしています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。今日はその2回目。
①はこちら👇
「花火」と手を握りながら、あの子に教える。夏の雲に見惚れていた時に出会った子どもだ。花火を見せてやろうと連れて来たら泣き出したのだ。
「おかしゃん…」
と怖がり泣く姿に胸がキリキリと痛む。
「大丈夫だから。これは花火だから」
握っている手から震えと共に恐怖が伝わる。ヒュ〜ドーンと音が聞こえるたびに伝わる恐怖。思わず抱きしめ背中をさする。小さな背中から華奢な骨が感じられ、守りたい気持ちが強まる。愛おしさが溢れる。怖くない美しいもので子どもの心を埋めてやりたいと思う。
「大丈夫だから。花火だから。落ちてこないよ」
何度も言い聞かせていると子どもはようやく泣き止んだ。
「花火、怖くない」
頬に涙の跡を残しながらニッコリ笑う子どもの顔は胸が締め付けられるほど可愛らしかった。
それからしばらくの間、花火を2人で楽しむ。
「ヒュルルドン、落ちて来ない」
そう言って子どもは笑った。
小牧幸助部長、今週も楽しかったです。
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