【シロクマ文芸部11月②】秋は何処へ
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
本日は11月の物語2回目。
1回目はこちら👇
霧の朝が毎日続くので、男は外に出るのが面倒で秋を探しに行く気にもなりません。
「夏は沢山見つけられたのになぁ。最近は春と秋を見つけにくくなった」
そんなことをいいつつ、ゆっくりとコーヒーをすすっていると、コツンと足になにかが当たります。
「そんなこと言ってないでさっさと秋を見つけてください!」
「春の時もそうやって怠けて私達ばかりが探すことになったんですよ!」
コツンの正体はこびとの小さなゲンコでした。文句ばかりで動かない男を黒目がちの目でじっと見つめながらプリプリと怒っています。
「私達なんて秋、こんなに見つけてますよ!」
2人のこびとはぐん、と背伸びをしながら両手を高く上げました。それでも男の膝に届くかどうかといった高さなので、男はしゃがみこんで確認をしなくてはなりません。
「あれ?この前、見たけど紅葉はまだ青々としていたよ」
「雑木林じゃ落ち葉とドングリがワイワイ騒いでいたから簡単に見つけられました!」
こびとの顔が見る間に「ドヤァ~」となったので、かわいらしくなり思わず笑みがこぼれました。全くもう、なに笑っているんですよぅと、すかさず怒るこびと。こりゃもうゆっくりしていられないなと男は重い腰をあげます。
「落ち葉とドングリは間に合っていますからね!」
男の背中に声をかけるこびと。はいはいはいと軽い調子で男は返事をしながら外に出かけましたが、
「さっさと落ち葉とドングリを集めりゃ良かったな」
と文句がポロリとこぼれました。秋といえばやはり、落ち葉とドングリ。先にこびとに見つけられてしまったのが、今になって悔やまれました。それ以外の秋を見つけるのは不可能な気がしてきました。
「秋、秋ねぇ」
本当にもう、季節がハッキリしなくなってから働きにくくて困るよ、また男の口から文句がこぼれ落ちます。秋を探して歩く男の額には汗が浮かんできました。こびとに言われて秋探しに外へ出かけはしたものの、お昼近くにはグングンと気温が上がり夏日となっていたのです。
「秋、どこにいったんだよ……」
(つづく)
今日は歩くと蒸し暑いくらいなのに明日から気温が急激にさがるのだとか。最近はよく注意しておかないと春と秋を見落としてしまいそうです。
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。