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【#シロクマ文芸部】どこじゃ!紅葉鳥!

紅葉鳥を求めて王様は森の奥の奥までやってまいりましたが、ただいま冷や汗をタラリタラリの真っ最中。

😰😰😰

庭を見ながら「紅葉鳥……なんと優雅な」と奥方様が言い、周囲が「ほんにほんに」なぞというものですから、そんなに欲しければ鳥カゴに入れて連れてきてやろうと言ったのが始まりでした。

奥方様は「それは無理ですわ」と笑います。自分がどれほど奥方様を大切に思っているかを疑われていると勘違いした王様は、プンプンしながら供も連れずに城を飛び出しました。

「紅葉鳥ぃ~紅葉鳥はどこじゃあ!」

普段から考えるより体が先に動く王様です。どこにいるかもわからず、やみくもに走り回ります。王様の声があまりにうるさいので村人はうんざりしつつも優しく声をかけます。

「王様、紅葉鳥は村にはおりません」
「ならばどこじゃ?」

王様は小鳥が入る程度の小さなカゴを振り回して聞きました。

「王様、紅葉鳥をご存じないのでは?」

村の賢者が心配になり聞いてみますと、

「知っておる知っておる!場所を知らないだけじゃ!」

と顔を赤くして怒鳴ります。こうなると人の言うことを聞かないのを小さな頃より知っているため、賢者はため息をつきながら、

「森の奥におりますが……」

と答えていると話の途中で王様は猛ダッシュ。

「あ~あ行っちゃったよ」

と子ども達も呆れています。

「紅葉鳥はあの森の王だから失礼がないようにと伝えたかったんだが」

賢者もハァーっと溜息。

「まあ、森の王にお灸をすえてもらうとするか」

城の者や村人が呆れているとも知らずに、森の奥に突き進む王様です。

「紅葉鳥はどこじゃ!大人しく鳥カゴに入れ!」

とうとう森の奥の奥、城下を潤す清き泉のところに達した時、割れ鐘のような声が響き渡りました。

「誰じゃぁ!我が異名を大声で怒鳴り散らす者は!」

大音声と共に現れた大きな鹿に王様はビックリ。冷や汗をタラリタラリとしながら「紅葉鳥をこの鳥カゴに……ゴニョゴニニョ」となったわけ。

「お前は書を読まぬのか」
「はい。書は愛しき奥方が読むだけです」
「お前はこの国の王だろう」
「はい」
「ワシはこの森の王として清き泉を守っている」
「はい」
「わからぬことはそのままにはしない」
「はい」
「お前はわからぬ時はどうしている」
「奥方や家来に解決してもらっています」
「清き泉を分け与えていた城の王が阿保だったとは」

鹿の王は呆れ、清き泉を城下へ流すのを止めようとしました。

王様は勉強もしませんしワガママでもありましたが、家来も城下の人々も自分を大切に思ってくれていることは理解していました。自分を大切に思ってくれる人達が苦しむ姿は見たくありません。

「悪いのは余じゃ!清き泉を止めるのだけはやめてくれ!」

王様が深く反省しているのが伝わったたため、鹿の王は泉をそのままにし立ち去ろうとしました。

「あ……ちょっと……」
「なんじゃぁぁ!」

なかなか帰って来ない王様を心配しながら待っていた奥方様が庭を眺めていると鹿の王に乗った王様がヒョコっと帰ってきました。

「まあ王様!」

驚いている奥方様に王様は、

「心配をかけてすまなかった。友を連れて帰って来た」

とニッコリと笑いました。

それからは王様は知らないことはすぐに質問し誰よりも賢い王として末永く小さな国を治めました。

鹿の王もたまに城に遊びに来るようになりました。

お題が難しくてファンタジーの世界に逃げ込んでしまいました💦

難しい時間を楽しませてくれた小牧幸助部長、今週もありがとうございました。

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