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【#シロクマ文芸部】骨皮筋衛門の文化祭

文化祭が狙われている?

思わず鼻で笑ってしまった。普通の公立校の文化祭を誰が狙うんだ?馬鹿げている。

「会長、本当です」
副会長が重々しく訴えるが、聞く気にもならない。

「お前、ミステリー小説の読みすぎだって」

笑いながら僕は生徒会室を出た。

僕は太山デイブ、太山財閥の御曹司だ。名前とは真逆のスラリとした見目麗しい高校2年生だ。

エスカレーター式の私立校にそのまま通うのを嫌い、自分の実力で公立校へと入学した。気さくでイケメンな高校一の人気者。だから生徒会長にも選ばれた。こんな人物そうはいない……いや、いた。

骨皮筋衛門だ。体格は僕と異なりふくよかだが、なぜか女子からの人気が高い……やめろっ!卑屈になるなっ!と考えを消し去ろうとしていると、突然、全身黒づくめの女が目の前に現れた。

「?」妙なファッションではあるが、白い顔が美しい。

「どうされました?」
「ブンカサイのカ……」

わが校の文化祭に来たいのか?僕目当ての女子を制限するために文化祭は入場券がないと入れない。そうか。この女性も僕目当て……フフフ。いいだろう。

「そうですよ。文化祭の管理はこの僕が……」

とここまで言った時、女が真っ赤な口を大きく開け、

「文化祭の「化」を「蚊」にしてくださぁぁぁい!!」

と叫び、襲いかかってきた。手にはなにか細く尖ったものを持っている。

「ぎゃぁぁぁ!」腰を抜かしたその時。

「そうはさせない!」

丸みをおびた影が僕の前に現れた。
「ほ、骨皮?」

骨皮筋衛門だった。

「骨皮っ!その女おかしいぞ!早く110番を」
と叫んだが、その時には筋衛門はヒラリ、と空高く弾んでいた。

「文蚊祭ぃぃ~!」
女は筋衛門に細く長いものを突き出す。

「あ、危ないっ!」

筋衛門はいつも寡黙でどこにいるかわからないのに高校中のヒーロー、生徒会長にも推薦されていた。それなのに、適任だと副会長だった僕と役職を交換した姑息な奴だ。

でも、小さい頃からずっと一緒でピンチの時に必ず現れた。だから、高校では僕が筋衛門を助けるはずだったのに。

「筋衛門っ!」

目をつぶった瞬間、クルリ・プルン・ボスンと妙な音が聞こえた。恐る恐る目を開くと変な女が「蚊ぁぁ……」と目を白くして伸びていた。

「大丈夫か?デイブ?」
「ズ、ズジエモォォン……」
僕は筋衛門に、涙と鼻水だらけの顔を押し付け泣いた。

🦟🦟🦟

筋衛門は警察幹部の父親から「カ」の全てを「蚊」に変えるという妙な団体が高校生を狙っているとの話を聞いていた。

僕の父も警察幹部なのだが、生徒会長になれたのが嬉しく大切な情報を聞き逃していたようだ。く、悔しい……。

筋衛門、小憎らしく愛おしい永遠のライバル。

僕は高校卒業と同時に、母の故郷であるアメリカへ最新の捜査を学ぶために留学した。帰国した時は、お前のピンチを救ってやるからな。

待ってろよ。骨皮筋衛門。

ごめんなさい。

連続つぶやき小説で「カ」を「蚊」にする団体の話を書いたらシロクマ文芸部も妙な団体の話になってしまいました💦

でも、すごいですね!
全ての「カ」を「蚊」にしようと野望を持つ団体は、筋衛門が高校生の時から因縁があったのですね。

この話を書くまで全く気付きませんでした。

小牧幸助部長、今週も妙な話で部活動をしてしまい申し訳ありません。

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