006:脱ぐ 短歌 呪われて駱駝になった王様のいびきみたいな上着は脱いで 川柳 白無垢を着せられてすぐ脱がされる
004:木曜 短歌 木曜がごみの日なのはニッケルが金属なのと同じ仕組みね 川柳 木曜日だけ現れて餅をつく
003:さよなら 短歌 プリントを剥がしたあとが線状になっているからさよならなんだ 川柳 さよならも言わずに 言うね 瓶の底
002:輪 短歌 輪になって踊らなければ カマドウマ 呼吸をやめるしかないでしょう 川柳 年輪を重ねて四国まで行こう
023:詩 短歌 詩ってよく鼻血を出すし、それなのにあたまがいいし、なんかいいよね 川柳 ビフテキを流す詩的な判断で
007:ふと 短歌 市役所はペーパーウェイトに、区役所はメダルにしよう ふと思い立つ 川柳 灰のレースをふと見てしまう
005:音 短歌 音もなく近づいてきてメルヘンの続きは二度と書かないという 川柳 初音ミクから菊池寛まで
001:月 短歌 月の塗装のお金が足りなかったせい 真ん中らへん薄くなってる 川柳 飲み干したあとは月からいなくなれ
022:素 短歌 トロフィーを返さなかったのは素敵 だけど落ち度もいっぱいあった 川柳 味の素 水面に降っていい気持ち
010:浮く 短歌 わたしもう昼光色の幽霊ね 髪の先から浮いてきちゃった 川柳 トルマリンあなたもきっと浮かばれる
008:足りる 短歌 満ち足りた生活だけど満ち足りた宮廷画家はいない まぶしい? 川柳 足りないわプラハのお城一つでは
021:窓 短歌 眼裏にキュクロープスの禿頭がうつりこむほど窓を磨いて 川柳 薔薇窓が遠くにあってさわれない
018:泣く 短歌 泣くところ見てる 話は明け方にすると丸ごと土のうになるね 川柳 泣くほどのことではないよ後鳥羽院
016:紅 短歌 半券が喉の奥まで溜まったら紅白歌合戦をするのよ 川柳 口紅の色を想像してごらん
015:葉 短歌 ナマケモノから渡されるプリントに落書きをするなら針葉樹 川柳 葉もの野菜に切りつけられる
014:段ボ-ル 短歌 段ボールでできた肉から食べなさい 世界はいつか塔になるから 川柳 段ボール敷いて悪寒に備えよう
020:害 短歌 実害があったあとでは遅いからはだかで渡される飾り雛 川柳 害虫をのぼらせている長い髪
019:蒟蒻 短歌 「父親を弑するように蒟蒻を手綱のかたちにせねばならぬ」と 川柳 側溝に蒟蒻畑つまらせる
017:雲 短歌 雲泥の差、タッチの差だよわたしたちあんなに急いで波及したのに 川柳 雲の上の人から順におりてくる
参加させていただきます。ふだんは川柳を書いています、暮田真名といいます。よろしくお願いします。 http://www.sweetswan.com/daiei-2003/