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多様性について個人でできること

 ダイバーシティ経営といわれているように、事業活動の推進や組織活性化において「多様性の活用」をアプローチとして取り組むようになりました。経済産業省の資料によれば、ダイバーシティ経営とは以下のように定義されているようです。なるほど、何となく経営にとって必要そうな内容ですね。

「多様な人材(注 1)を活かし、その能力(注 2)が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営(注 3)」
(注 1)「多様な人材」とは、性別、年齢、国籍、障がいの有無などだけでなく、キャリアや働き方などの多様性も含みます。
(注 2)「能力」には、多様な人材それぞれの持つ潜在的な能力や特性なども含みます。
(注 3)「イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」とは、組織内の個々の人材がその特性をいかし、いきいきと働くことの出来る環境を整えることによって、「自由な発想」が生まれ、新しい商品やサービスなどの開発につながるような経営のことです。

 多様性ってそもそも分かります?

 この多様性という概念ですが、いったん自分が所属する会社の価値観として設定されると、自分の職場でも多様性の活用を求められるわけです。ところが、なかなか具体的な行動は難しいのではないでしょうか。まず、多様性って、他の価値観と比較すると分かりにくいです。それは、個人の価値観に落とし込めないからと考えます。例えば、自己PRの時に、自分は誰に対しても「誠実」に対応できますとか、顧客対応は「迅速」にこなせますとかは言えるでしょうけど、自分が「多様」な人間ですとは言いにくいでしょう。アーティストであれば「多様な自己表現で~」がポジティブに捉えられそうですけど、会社員個人が「多様性のある何か」を保持することは、会社としてもマストで求めてはいないと思います。

 この個人の価値観へ落とし込めるかは、与えられた価値観に対して個人がどう行動するかをイメージするために重要です。これが出来れば、個人レベルの実際の行動、さらには組織としての行動にもつながるのですが、「多様性」の場合、そのスタートのとっかかりがない訳ですね。

 それでも個人の行動を促すなら、「表立って排除はするな」くらいに言い換えて伝えるのでしょうか。ただ、こんなの今ドキの組織なら、かなり陳腐です。そんなの当たり前。だって、あからさまに排除なんかしてたら、パワハラで通報されるだけなのだから。そもそも「多様であること」に、誰もが信じられる価値があるというのも疑わしい気がします。「多様性を認めれば単純に組織にまとまりがなくなるのでは?」「これまでに多様な人材によってイノベーションや価値創造が推進される?本当か?どうすればいい?」疑問が沸々と。端的に会社にとってコストパフォーマンスがよいイメージがわかないのです。

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それでも多様性は大事

 これまで多様性の分かりにくさ、価値の捉えにくさを指摘してみました。しかし、それでも私は「多様性の実現・活用」は大事なことだと思います。それはこういうことです。現在、五体満足で生活に不自由のない会社員である私は、社会のマジョリティに属していると言えるでしょう。一方で様々な属性や特性をもったマイノリティの方がいらっしゃいます。このマイノリティの方々にとっては、「多様性」とは是非とも社会で当たり前となって欲しい価値観ではないでしょうか。
 
 ここで想像してみます。たまたまマジョリティである私ですが、今後大きな予期しないインシデントによってマイノリティになることもあるのではないか? また、たとえ特段のインシデントがなくても歳を重ねれば何らかの不自由が生じる訳で、それはほぼ確実にマイノリティになるということではないか? だから、そう遠くない未来では(人生の終末期近くでは確実に)多様性を切望する状況が自分にも生じるんだと思います。さらに、自分が大切とする家族、友人も同じ状況になるでしょう。そんなことを想像するに、やはり、今から個人レベルでも行動を起こしておくべきと思うのです。

あまり難しく考えず行こう

 では、この「多様性」に価値を認め、職場でどう行動していくか?冒頭のようにイノベーション、価値創造という目的から考えると、多様性から実現するプロセスがブラックボックス過ぎて難しすぎます。そこで、私の場合はもうボトムから一歩ずつということで、こう考えています。
 
 それは、そもそも、自分はすでに多様な人に支えられて仕事をこなしているんだという事に気づくことです。そう、「多様性」ってもうすでにあるんですよね。そうして、その人たちの多様な価値観について対話して認め合うことです。価値観を理解までする必要はないと思います。無理に合わせようとすると自然でなくストレスになります。「他人なんだから分かりあえることなんて中々難しいよね」くらいの割り切りでいいと思います。ただ、このようにお互いの価値観について、一歩進んでコミュニケーションをとり、お互いの価値観はそのまま認めるという態度を貫ければ、ポジションを認め合ったと言う意味で自己肯定感を高められると思います。そして、自己肯定感があるから積極的に発言できる、大胆に行動できる、果敢にチャレンジできるのです。これらはイノベーションを実現するための、必要なマインドセットですよね。
 
 また、新人、異動者など組織にすぐには馴染めない方にとっても、このような組織文化を作り上げていれば、早期にインクルージョンすることが可能でしょう。そして、インクルージョンした人と自己肯定感をベースに新たなアイデアを交わしましょう。ここからイノベーションが始まると思うと、多少ワクワクもします。
 
 まぁ、結局コミュニケーションコストは相当かかるわけで、少し尻込みしそうですが、組織にとってはともかく、きっと個人の人生にとっては有意義になると信じてみようと思っている所です。

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