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「ウェルビーイングの設計論」の最前線 著者講演を聞いて

ウェルビーイングの設計論」という書籍を以前に購入していて、面白いなあと思いつつ半分までしか読み進めていなかった。そんな時、著者のラファエル・カルヴォ教授が来日され、本書に関する内容を講演されるとの情報が、監訳者のドミニク・チェンさんのtwitterから流れてきた。こりゃ丁度いいということで、本書のエッセンスを感じ取りに聴講してきた。

「ウェルビーイングの設計論」の最前線~『Positive Computing』著者ラファエル・カルヴォ教授を迎えて~

http://www.a-m-u.jp/event/201809_wellbeing.html/

講演は都度に通訳フォローが入るものの、ほとんど英語だったので、正直理解できたかどうかはよく分からない。でも、自分なりに感じたエッセンスとしては、次にあげることになるのかなあと。

『人のwell-being(幸福感・満足感)は「Autonomy 自律性」、「Competence 有能感」、「Relatedness 関連性」、「Compassion 思いやり」、「Meaning 意味」という5つの要素からなる。これら要素を担保しつつ、人の生活行動をより良くするためにはどのようなデザインを創るべきか。』

well-beingの構成要素は、以前読んだ「会社でやる気をだしてはいけない」に書いてあった、well-beingを構成する3つの心理的欲求(自律性、関連性、有能感)と符合する。また、この書籍では心理的欲求を満足させる「自己制御力」の3要素として、「purpose 目的」と「value 価値観」(もう一つはマインドフルネス)を挙げており、上に挙げた「Meaning 意味」とほぼ同義と思われる。このような要素探索はモチベーション、ウェルビーイング、組織開発など各分野で議論されているのだろうけど、どの研究者も同じような結論に落ち着いているのだろうか。ともかく「会社でやる気を~」を読んでいたおかげでスッと頭に入った感じだった。

一方、「Compassion 思いやり」は「Relatedness 関連性」から一歩踏み込んだ感じで少々重いなあと感じた。確かにwell-beingに影響するとは思うのだけれど。パネルディスカッションで青山さんが投げかけていたけれど、人付き合いが苦手な「ボッチ」な人にとっては、さらに重みが増すのではないか。「Compassion 思いやり」や「Relatedness 関連性」をもっとユルい感じでデザインしてみることもターゲットによっては必要だろうと思う。

これから実際にどうデザインしていくかが議論になるわけだが、well-beingの要素だからといってデザイナーが押し付け気味に与えられると上手くいかないそうだ。匙加減が必要なのだろう。もう一人のパネラー坂倉さんが、「中動態で自然に~になる」というような態度がポイントというような話をされていて、なるほどなぁと思わされた。話が飛ぶが、落語とか聞いてても、笑わせようとする演技にあざとさを感じると笑える気にならないもの。それで落語って話の内容や笑いどころは聴衆側も分かっていて完全に受け身でないところが、中動態ぽいなぁとも思った。こんな大衆芸能にwell-beingデザインのヒントがあるのかも。僕の感覚では、落語の楽しいところって表情、テンポ、リズムなんだよなぁ。

このデザイン、自分なりにも考えてみたい。人のwell-beingを心と身体に分けると、上に挙げた要素は「心」へのアプローチなんだよなと。身体のwell-beingというとやはり良質な「運動」と「食事」になるか。これまでの「運動」「食事」関連のプロダクト又はサービスは、それを提供することで自然と「心」のwell-beingも満たすものがロングセラーとして残っているのかも。この視点で分析してみようかな。そして、これまで実現できていない「心」と「身体」のwell-beingの組み合わせを見出していきたい。

とりとめもなく書き綴ってしまったが、講演の中でいくつも気になるキーワードが提示され、その都度枝葉のように連想が広がっていくので、とてもエキサイティングな時間だった。ある意味well-beingを感じたのだが、なにを刺激されたのだろう。キーワードをきっかけとして、自分の思考が自然と広がった訳だから、「Autonomy 自律性」かなあ。

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