お墓参り
いやー、参ったよ。またやられちゃってさ。
て、顔腫らしながら言う。
口の中切れちゃってさあ。
可哀想だなぁと思いつつ、うんうんと話だけ聞く。昨日の夜中に泣きながら電話が来て、今から帰る、てこっちに来た。2〜3ヶ月に一度のペースでこんな事がある。慣れた。
明日の朝、おじいちゃんのお墓参り行くけど一緒に行く?
うん行く。俺お酒買って供えるわ。
高台にある霊園は新しくて、お彼岸なので活気づいていた。
お墓の掃除をして、お花を飾って、さっきコンビニで買ってきたワンカップを出す。やはり墓前にはワンカップであろう。
蓋は開けるのかな?ちょっと他のお墓に偵察に行ってくる、て、ワンカップ持ったまま向こうに行ってしまった。
すぐに戻って来て、みんな蓋を開けずにそのまま供えてるからそれで良いみたい、と。
おじいちゃん元気でね!て言って霊園を後にした。
俺さぁ、お彼岸の朝に普通にお墓参りに行くような家庭で良かったわ、とぽつりと言った。普通が良いよなぁ、彼女は複雑な家庭で育ったみたいだから、だから暴力振るうんだよなきっと、と。
私も普通がなんなのかわかんないけど、普通の家庭っぽくして見せてる作戦は成功してるな、と思った。良かった。いやそれより暴力振るう彼女とはとっとと別れれば良いのに、と思った。
お墓の前で、おじいちゃんに、あの子を守ってあげてください、て心の中でお願いしたから、きっとうまくいくであろう。ワンカップ好きだったしね。
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