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【正月日記】イノシシの背中にしがみつく/救急外来を受診す。

 2024年の初夢は1月2日の昼間に見た。腐ったパイナップルを探し求めて地面を掘り返す巨大イノシシの背中に、必死にしがみつき続ける悪夢であった。寝る直前にYouTubeで「想像よりも巨大な生物」というような題のまとめ動画を観たことと、そのちょっと前に腐りかけのパイナップルを食べたことが夢の元だと思う。パイナップルはクリスマスのちょっと前にスーパーの安売りで買ったがずっと食べるのを忘れていて、意識が朦朧とする中、栄養のある食材を求めて戸棚を物色していたら出てきたものだった。包丁を入れてみると黄色いはずの果肉部分の頭と尻と皮の周辺が茶色く変色し腐りかけていたが、中の部分は大丈夫そうだったので食べた。鼻が詰まっていて腐っているかどうかは分からなかった。

 元日の朝から体調を崩した。友人とおでんを食べ酒を飲み、楽しく年を越した矢先であった。体温計の電池が切れており熱は測れなかったが、熱っぽい感じがあった。他の症状としては頭痛、寒気、喉の痛み、止めどない鼻水などである。1月2日の夕方までただの風邪であってほしいと願い、解熱剤を飲みながら耐えていたが、一向に体調は好転せず、同居人に電池を買ってきてもらい熱を測ったところなんと39.4℃。これは流石にインフルかコロナである。

 1月3日朝、救急外来の待合室は、順番を待つぐったりとした急病患者たちで溢れていた。その病院は小児科と内科が一体化したタイプのクリニックで、その日は三ヶ日の最終日で他の病院は基本休診ということもあり、多くの子どもや大人でごったがえしていた。皆マスクをし辛そうにしている。その光景は西加奈子の『くもをさがす』で描写された、コロナ患者で溢れたカナダの医療機関の待合室を想起させた。カナダと日本の医療体制は全く別物であり、カナダの救急外来は8.9時間以上待つことがざらということだった。僕の訪れたクリニックは、まだ診療開始時間の30分後にも関わらず3時間待ちだった。3時間もなかなかだと思った。

 待合室のベンチになんとか空きを見つけ、座ることが出来た。来る前に解熱剤を飲んできていて比較的意識がはっきりしていたため、西東三鬼の『神戸・続神戸』を読みながら順番を待つことにした。周りからは子どもの泣き声や大人の咳き込む声が聞こえた。僕も鼻水が止まらなかったので、ひっきりなしに鼻をかんだ。東京の生活の何もかもを投げ捨て神戸に移住してきた主人公の心境と、体調を崩し、行き詰まった原稿を放棄して病院で長時間順番を待たなければならない自分の現状がいい具合に重なり、案外幸せな読書をすることが出来た。次第に解熱剤の効果が切れて意識が朦朧としてきて、それほど多くのページを読み進めることはできなかったが。

3時間をちょっと超えたという辺りでやっと名前が呼ばれた。
診察・検査の結果、インフルエンザA型陽性。年明け早々インフルにかかるなんて災難だけど、ど平日のど真ん中でなかっただけまだマシと思うことにする。

昨年はいろいろ失敗も多かったけど、実りの多い年だった。
2024年はたくさんマンガを描いて、たくさん楽しいことをして、さらに実り多い一年にしたい。

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