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哲次おっちゃんと亀甲鮨

哲次おっちゃんは私の父親の弟だ。おっちゃんは私が小さい頃から娘のように可愛がってくれた。私が50歳を過ぎ、子どもが巣立ち、自由に1人で出かけることが出来るようになった頃から、おっちゃんと2人で時々食事に行くようになった。

おっちゃんと行く店はいつも亀甲鮨という美味しいお寿司屋さんだ。おっちゃんが亀甲鮨に通い始めたエピソードがある。ある日おっちゃんは山ろくといううどん屋に来たが駐車場がいっぱいだった。そのうどん屋のすぐ近くに亀甲鮨の駐車場があった。おっちゃんは亀甲鮨の暖簾をくぐり大将に「隣のうどん屋に来たが駐車場がいっぱいなので、おたくの駐車場に置かせて貰えないか?」と聞いた。亀甲鮨の大将は笑顔で「どうぞ!」と答えてくれたらしい。

後日、おっちゃんは駐車場のお礼に亀甲鮨に食べに来た。それ以来おっちゃんはずっと亀甲鮨に通っている。

おっちゃんと私はカンターに並んで座り、お寿司を食べながら、たくさん話をした。
子ども時代の話、子育ての話、夫婦の話、仕事の話、いっぱい話をした。おっちゃん
は優しく、賢く、若々しく、厳しく、温かい人だった。家族を愛し、家族から愛され
た人だった。

先日おっちゃんは病気のため亡くなってしまった。もうおっちゃんと2人で亀甲鮨に
行くことは出来ない。

ただ今は天国があるなら、おっちゃんが尊敬し愛していた父親と2人向かい合い、大
好きな囲碁を指したり、お酒を酌み交わしていることを願っている。また私も天国へ行けたなら、おっちゃんと一緒にお寿司を食べながらいっぱい話をしたいと思っている。


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