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ショートケーキの思い出

私が小学生の頃実家は商店を営んでいた。食品、雑貨、本など様々な商品を売っており、クリスマスケーキも売っていた。クリスマスイブには店のホールケーキにろうそくを立て家族で食べた。クリスマスケーキは見た目は豪華だが食べると不味かった。その当時のケーキは生クリームではなくバタークリームだった。一口かじるとあとは兄に食べて貰っていたような気がする。
ある日姉が徳島市に「トルテ」という美味しいケーキ屋さんができたから食べに行こうと連れて行ってくれた。バスで1時間かけて町に出て「トルテ」に着いた。階段を上がり店に入る。磨かれたショーウインドウに飾られた美しいショートケーキ達が眩しい。緊張しつつ姉とケーキを選んだ。豪華な椅子に座り水を飲む。こんな美味しい水は初めて飲んだ気がした。それでも私はまだ疑っていた。見た目は美しいが食べてみると不味いかもしれないと・・・
美しいショートケーキは夢のように美味しかった。
今シャッターが閉まった「トルテ」の前を歩く時、姉と食べたショートケーキを思い出す。
いつも幸せな思い出はろうそくの火のように心を暖めてくれる。


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