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人は変わることができるのか?

私の大好きな小説「コインロッカー・ベイビーズ」。主人公はコインロッカーで捨て子として発見されたキクとハシ。2人は同じ児童養護施設で育った。

私は無口で不器用で暴力的なキクが大好きだった。反対におとなしく弱いが成長し歌手として成功するハシは好きではなかった。

キクの印象的なエピソードはたくさんある。今もそのシーンは鮮やかに私の目の前に浮かんでくる。キクは最初っから最後まで真っ直ぐな美しい男だった。

反対に歌手として成功しながらもコンプレックスを抱え、他人の目を気にしながら生きたハシ。そんなハシの唯一大好きなエピソードがある。ネタバレは避けるが、歌手として成功したハシがコンプレックスと偽りの自分に押し潰されるが、そこから立ち上がるシーンだ。

歌手として成功したハシは子どもの頃の弱い自分は消え去ったと思っていた。自分
は生まれ変わったと信じていた。しかし結局何も自分は変わっていなかったことをハシが思い知るシーン。そしてそこからの感動的な展開。

高校生だった私にとって、人の奥底にある本当の自分はどんなに頑張っても変わることができないという事実は衝撃だった。

56歳になった今、社会性のあるまともな自分の奥底にある未熟な弱い自分の存在を絶対に忘れない。

コインロッカー・ベイービーズは不朽の名作だ。


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