もうひとりの

ちょうど彫刻と、自分の関係のように、彫刻家はしもとみおは、私の隣にいつもいます。
自分で立ち上げた作家業、彫刻家はしもとみお、というダメなほんとうの私とは違う別の仕事人間が、いつも私を励ましてくれます。
私自身は面倒臭がりで適当で、とてもダメダメな人間ですが、
彫刻家はしもとみお は、そこだけでもちゃんとしようと、
人見知りで外に出るのが億劫で大の苦手な自分ですが、仕事としての自分は、なんでもできるようになりました。人と関わることも、交渉することも、お金のやりくりも、ほんとうはどれも逃げ出したいくらい苦手ですが、仕事が自分を育て、鍛え上げてくれました。

ずっとずっと昔、美術をはじめたころから、このもうひとりの美術作家としての自分、はしもとみおが、私の斜め上にいつもいて、自分を厳しく鍛え、一番の理解者であり、指導者でした。
こんな絵ではいけない、その決断は間違っている、この彫刻は良くない、
判断を下すのは私ではなく、いつももうひとりの自分、彫刻家はしもとみおです。
私自身だけだと、もうやめちゃえ、とぐうたらの適当になってしまっていたと思います。

だけど、はしもとみおだけでは、ダメになっていたように思います。
時にぐうたらの自分が、ちょっと休もう、ちょっと遊ぼう、ちょっと逃げよう、と、
適度にはしもとみおを、休ましてきたおかげで、リラックスしてリフレッシュができたようにも思います。

今は自分の仕事、彫刻家はしもとみお は、自分とは全く別の人間で、
自分の作った会社やお店と同じで、大切な仕事であり、友人であり、大切な人生のほとんど全てです。
明日も明後日も、はしもとみおは仕事を頑張ることでしょうが、
オフの私は、コーヒー飲んでドライブして、リサイクルショップを巡ったり、大好きなお料理や犬の散歩、ゲームしたり漫画を読んだりアニメを見たり、それはそれはほんとうに、まったくの別の人間なのだと思います。
仕事でつらかったり苦しい時は、「がんばれ、はしもとみお」と、古い友人を励ますような気持ちで、もう一人の自分を心から応援しています。
おかしな話ですが、そんな感じで、もうひとりの自分は今日も仕事をし、私自身は今日もぼーっと暮らしているのです。

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