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冬に寄せて

冬の寒さが何かに似ているなと、小さい頃から考えていた。
考えた結果、冬の寒さは厚い瓶底に似ている、が答えだと気づいた。
冬の寒さは、巨大な瓶の端っこに身を寄せているような冷たさと、この寒さからは逃れられないという絶望感を感じる。だから大きな瓶の底みたいだなと感じた。
瓶の底に、みんながいるから、寒いのになぜか人との距離がどの季節よりも近く感じる。一人になりたくても、どこへも行けやしない。
イベントも多く、どうしても人と関わる必要が出てくる。
なんとなく冬が憂鬱な理由だ。

憂鬱だからと言って、嫌いなわけではない。
冬は美しく、停滞を許してくれる。変化をじっくりと待ってくれる忍耐強さもあり、馴れ合いを許してくれるような優しさもあるからだ。
人と距離が近くなっても、冬の寒さのせいにできる。
寒さを口実に、思いびとの手を取るのも一興だ。
蛹から蝶が羽化するのを待つように、ココアが牛乳に溶けていくのをゆっくりとかき混ぜるように、待ってくれる。冬は私を急かさない。
そんな冬が好きだ。

体が芯まで冷え切ってしまっても、その寒さはロシア文学に親しみを覚えさせてくれるスパイスだ。冷え切った体で読むロシア文学の愉悦は、冬にしか味わえない。

女の子の髪がマフラーに挟まれ、丸みを帯びたシルエットになるのも冬だけだ。
口元がマフラーで隠れている女の子はどうしようもなく、愛らしい。


寒さを和らげようと両手で温かい飲み物を持つ。
じんじんと冷たい手が、ぬくもりで緩んでいく幸せも冬限定だ。
冬は楽しい。あと2ヶ月程度だがしっかり楽しんでいきたい。



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