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【雑誌】ポジティブ安全に向けて|セイフティダイジェスト

セイフティダイジェスト(公益社団法人日本保安用品協会発行)の2023年11月号、「ポジティブ安全にむけて」より。
著者は向殿政男氏(明治大学 顧問 名誉教授)。

安全の厳密な定義として、ISO/IECガイド51(安全の国際規格を作るためのガイドライン)のJIS版であるJIS Z 8051には、安全は「許容不可能なリスクがないこと」と定義されている。

セイフティダイジェスト2023年11月号

これがまずもって重要と考えるところで、労働安全衛生の現場担当者の方の中には「安全=リスクがないこと」でなければならないと考えて、眼の前にあるリスクをあえて見ないようにする方がいたりする。

つまり、

安全とは、許容可能なリスク(受け入れられるリスク)しか残っていない状態のことであり、現実には、リスクゼロは実現不可能な要望であって、この安全の定義では、決して、リスクゼロを要求していないことに注意すべきである。

セイフティダイジェスト2023年11月号

リクスはゼロにならないのは明らかだが、受け容れられる(許容可能な)小さなリスクまで低減されたのならば、その存在を受け容れて、(自分で注意しながら)自由に明るく前向きに、安心して活動すること、それが安全の本意である、というものである。

セイフティダイジェスト2023年11月号

であり、労働安全衛生の担当者が取り組みを進めるにあたっては、まずはこの考え方を押さえることが重要です。

私自身、この考え方は何度となく聞かされているのですが、今回、著者はこれに加えて、リスク低減というネガティブ領域でのマイナスからゼロに無糧の活動だけでなく、ウェルビーイングや安心感の向上を求めるといったゼロからプラスへ向かってのポジティブな領域での活動にも目を向けるべきと説かれています。

ポジティブ安全とは
危険源を探してそのリスクを低減するという活動だけでなく、前向きに、明るく、やりがいを以て働くというポジティブな側面にも目を向けた安全活動をいう。

セイフティダイジェスト2023年11月号

確かに、私がこれまでに関与したことのある企業では、人手不足、低賃金などを背景として閉塞感のある職場よりも、職場全体に活気のあるところのほうが、安全活動が活発であると感じるので、今後は、マイナスからゼロだけではなく、ゼロからプラスを目指すというマインドがより大事になってくるのかもしれません。

もっとも、事業者サイドに安全意識があるのかないのかによって、企業の安全対策は大きく左右されるのが実情と感じています。
例えば、私が経験した例では、被災労働者に障害が残るような重篤な労働災害を発生させてしまい、涙を流しながら後悔の弁、再発防止対策を徹底する事業者がいる一方で、明らかに業務中の死亡労働災害が発生してもまるで他人事の対応をする事業者がいるのも事実です。

このため、まずはマイナスからゼロを大前提とし、ゼロで終わらせるのではなく、プラスを目指すことで安全対策だけではなくウェルビーイングが実現できる職場環境へ、そしてそれが優秀な人材の確保、生産性向上につながるのではないかと考えました。

まとめ
まずはマイナスをゼロにすることが重要。
その上で、ゼロからプラスを目指すポジティブ安全の考え方に進もう。


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