『着たい』が叶う。
スタイルへの理想や憧れは誰しもが描き求めるものだと思うが、自分自身が本意で満足できるまでには様々な壁がある。少なからず何かを妥協して"似たような事"を体現するのは容易なのだが、結局満足できる時間は一瞬のひと時で、時間が経てば気持ちは振り出しに戻ってしまう。そしてその度に、『それ』と出会える事の難しさと"自身の本意"を改めて実感する。
自分にとっては、その一つがデニムジャケットという存在だ。
ゴリゴリのアメリカンスタイルで着たい願望は全く無いが、トラウザー、革靴等の綺麗な装いを外す切り口としては他の羽織りには無い魅力がある。
しかし、同様に外す意味合いであれば別にジャケットである必要は無いように思えるが、ニット、シャツと合わせられる事を考えれば夏場以外の年中で様々な楽しみ方が生まれるジャケットが良い。
そしてコートの中にも着れるバランスであればベスト。
故に裏がブランケット地の物は特に求めてなく、理想はインアウト両者でバランスの良い形であること、裏地なし、綺麗過ぎずデニムらしさを潜めているモノ。
我儘極まりないのは自分が一番理解しているが、でも本当に求めている時は大体そんなもんだろう。何故なら着るのは自分だから。
だからその分、古着を含めそれなりに見てきたつもりだが、やはり自分自身が満足出来るモノは無く、それこそ何かの要素を妥協し続けてきた。
むしろ、徐々にハードルは高くなる一方でいよいよ諦めかけていたが、そんな妥協も漸く終わりを迎える。
『それ』は半年前に訪れたCIOTAの展示会にあった。
あのモデルをあの生地で製作していたのだ。
CIOTAのデザイナー荒澤氏が古着に対して深い知見と尊重の念を持っている事は、デニムを始めとして各プロダクトのクオリティーを見れば容易に納得が出来る。
このモデルもそう。
フラップ付きのシングルポケット、針無しのバックシンチ、フロントプリーツといったディテールは、1950年代のヴィンテージで見られる"あれ”を忠実に再現している。
そして、深い知見を持っているという事はある意味でのデメリットも知っているということ。
オリジナルの個体は、年代故に着る用途が作業着に向けられていた為、着丈が短く身幅は狭い、そして腕周りもやや細いというかなり体型を選ぶバランスで、当然ながらファッション的ではないのだが、そんな側面をしっかりと考慮した上でこのモデルは製作されている。
随所で感じる嫌なコンパクトさを上手く解消しつつも、90年代的な大ぶりシルエットでは無く程よく緩さを与えたボクシーなシルエット感に変更させ、当時の「らしさ」を感じさせつつも現代的な着やすいバランスへと見事に昇華させているのだ。
そしてこのモデル自体はこれまでにも製作はされていたのだが、今回はその高い完成度を超えて新たに生まれ変わった。
縦糸にはロープ染色による中白糸を用い、着用と洗いを繰り返す事で特有の経年変化が現れる仕様とし、インディゴは合成ではなく本藍という徹底ぶり。
そして緯糸(肌にあたる面)には、贅沢にも最高級の超長綿スビンコットンを使用。
更に旧式シャトル織機で時間を注ぎ込みながら織り上げる事で、素晴らしい風合いを帯びたセルビッチデニムとしている。
そして今作より、デニムパンツ同様にジャケットも『生機』の仕様。
生機とは、防縮、斜行止め、毛焼きの全てを行わない、一言で言えば「織り上げたままの状態」を示す。
不安定な縮率と加減知らずな捩れと戦いながら試行錯誤の上で辿り着いたこの生地は、デニム本来の質感、経年による表情の変化を思う存分に楽しめるといったリアルなユーズド感と、着るたびに体に馴染んでいくスビン本来の素晴らしい着心地が大きな魅力を放つ。
個人的には、もう非の打ち所がない程完璧だと感じている。
自身の痕跡を残すように味わい深く育てられる"Navy"か。
既に味わい深い表情が醸し出され、様々なスタイルの味付けを任せられる"Medium Dark Navy"か。
是非とも妄想を膨らませながら選んで頂きたい。
こちらの品は店頭より既に販売を開始しており、オンラインストアの掲載はご用意が叶う場合に限り8月22日(木)17:00を予定としております。
店頭にて完売の場合は掲載は控えさせて頂きますので予めご了承ください。
また、掲載前に通販をご希望の場合はお店または私までご連絡をいただけますと優先順にご対応をさせて頂きます。
筆者
nariwai store manager
橋場 祐人
(通称がまお)
〒980-0014
宮城県仙台市青葉区本町2-6-23
ビブレスタオフィスビル2F
022-796-2240
nariwai-online.com
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