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イチゴと夢と農業と。

ギルドハウスを出ることにしたボクはお昼頃から出発することにしました。

部屋にいるオーナーに「お世話になりました。きっとまた戻ってきますので、その時はよろしくお願いします!」と伝えると

扉は閉まったまま「お~、もう行くのかい。うん、わかった。いつでも帰ってきなね~」と声だけの返事が返ってきました。

お、部屋から出てこないんだ。と思いつつも、お客扱いされてないことが逆にいいかもなと思いました。

次の街は新天地と言うより、戻る形で長野へまた行くことになりました。

安曇野の友人の家に居候して、アルバイトを紹介してもらい住むつもりだったのですが、調整がうまくいかず、同じ地域でシェアハウスに住む別の友人を訪ねることとなりました。

この頃になってくるとイレギュラーなことが起こることも何処か慣れっこになっており、ダメでも次を考えればいいと。そんな風に考えられるようになってきていました。

一般道を信濃川に沿って車を走らせて行くと長野の県境から川は千曲川(ちくまがわ)とその名を変えます。有名な野沢温泉などの横を通り、数時間。

やはり夏が近づく前のドライブは窓を全開にしても暑すぎず、風が心地よい。

途中、長野市近くの友人に教えてもらった古民家カフェでコーヒーを飲み、小休憩をしたりして夕方には安曇野へ到着することが出来ました。(全部を下道で行くとなかなかの時間と距離)

これまた別の友人がご縁で古民家を借り、片付けて住めるようになったので、そのお祝い会に参加して、翌日は前にお世話になった農家さん宅に畑を手伝いつつ、一泊させてもらいました。

その後、連絡をとっていた友人が住むシェアハウスに転がり込むことに。おまけにそこの住人さんを通して、農家さんのアルバイトも紹介してもらいました。本当ありがたいことです。

そのまた翌日からは滞在しながら、ビニールハウスでイチゴを栽培する農家さんにお世話になりました。ここでは主に収穫の作業をやらせて頂くことに。

脱サラして、家族でこの地に移住されたそうで、農業研修を受け、今年が新規就農の一年目。元々はワインをつくりたくて、会社を辞めたそうなのですが、葡萄農家から始めるのは色々と資金や準備などプロセスに時間が掛かるらしいのです。入り口として、イチゴ農家から始めるのが良いとアドバイスをもらい、スタートしたのだそう。

ボクは「なるほど~、始めるのにハードルが高いこともありますもんね。ん?そうすると結局ワインはやるんですか?」そう質問すると。

「うん。やるよ」

聞いた瞬間に間を開けず、即答で返事がきました。その迷いのない回答に驚きと素敵な大人の生き方だなと思いました。

そんなこんなで数日間、安曇野に滞在する日々が続きました。

収穫をする中、自分がこれからやりたいことやサラリーマン時代に大変だったことなどを話せたり、逆に旦那さんが東京での仕事の苦労や農家になるまでの道程の話を聞かせてくれ、とても良い時間を過ごすことが出来ました。

当初、働く日数を決まっていたのですが、もうしばらくやらせて欲しいと伝えると快く了承してもらえました。

その翌日「和也!ちょっとこれ手伝ってくれないか」

それまで「羽柴くん」と呼ばれていたのです。奥さんが「いつから羽柴くんから和也になったの?」と笑いながら言うと。

旦那さんが「いや、何て呼ぼうか、迷ってたんだけどさ。数日だけと思ってたけど、まだココにいるなら和也にすることにした。よろしくな!和也!」

その言葉に仲間として迎え入れてくれた気がして、とても嬉しい気持ちになりました。

ですが、その翌々日辺りに今後のスケジュールと様々な事情が重なって、街を急に出なくてはならなくてはなりました。

朝、その話を切り出し「すいません。せっかくお世話になっていて、さらに働いても良いと言って下さったのに急に次に行かなくてはならなくなってしまって、、、」

それを聞くと旦那さんは作業をしながら「行くとこがないんだったら、前に作った小屋があるから、そこなら居てもいいぞ。ずっとじゃないぞ。とりあえずだ。」

一見、ぶっきらぼうに言っているように見えましたが、そこにとても優しさが感じられ、感謝の気持ちでいっぱいになりました。だけど、次に向かうことは決めていたので行くことにしました。

いつか、またきっと会いに来よう。また一人、再会したいと思える人が増えました。

そして、荷物をまとめると、また次の街を目指して車を走らせることになりました。

つづく。

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